イノベーション活動がパンデミックの混乱を克服 - WIPOにおける国際IP出願件数が過去最高レベルに到達

ジュネーブ, 2022/02/10
PR/2022/886

2021年、世界中のイノベーティブな企業・個人は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミックがもたらした混乱を乗り越え、特許、商標および意匠に関してWIPOが世界的に提供する知財 (IP) サービスの利用件数を過去最高レベルにまで押し上げました。

イノベーション活動 (innovative activity、イノベーティブな活動) 指標として広く利用されるWIPO特許協力条約 (PCT) 経由の国際特許出願件数は、2021年に0.9%増加して、過去最高レベルの277,500件に達しました。アジアからの国際特許出願が最も多く、2021年は全出願の54.1%を占め、2011の38.5%からシェアを拡大しました。

例えば携帯電話等の製品の外観や操作感またブランドの保護と促進のために利用されるWIPOの国際商標出願制度 (標章の国際登録に関するマドリッド制度) および国際意匠出願制度 (意匠の国際登録に関するハーグ制度) の利用件数は、いずれも2桁成長を記録し、WIPOの反サイバースクワッティング活動および仲裁・調停活動とともに、新記録をマークしました。

「パンデミックによる混乱にもかかわらず、人間の創意工夫力と起業家精神は相変わらず旺盛であることが、これらの統計によって確かめられました」とダレン・タン (Daren Tang) WIPO事務局長は述べます。

WIPOのグローバルなIPサービスは、海外事業進出をより経済的かつ簡単にすることで、企業のグローバル展開を助けるものです。新型コロナ (COVID-19) にまつわる様々な規制は、人々や家族の交流を妨げていますが、斬新なアイディアやイノベーティブな製品、新しいサービスを創り出す世界的な活動を止めることはできません。

ダレン・タン WIPO事務局長

世界規模のパンデミック下においても、また、2020年の世界的な経済停滞の最中も、IP出願活動は成長を続けてきました。イノベーション活動やグローバルな事業展開は、多くの企業にとってますます重要になってきており、長期的に取り組むべきコミットメントでもあります。新たな事業の創設やブランドの創出を反映するマドリッド制度の商標出願件数は、パンデミック最中であった2020年には減少しましたが、2021年には回復し、特に、フランス、ドイツ、英国および米国からの出願が大きく伸びました。2021年における国際商標の利用件数の増加は、パンデミック下にあって、消費者の需要が変化するとともに経済のデジタル化が加速したことに伴い、各企業が新たな商品・役務を導入するチャンスをしっかりと掴んだことを意味します。

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チャート (インタラクティブ)

最新の主要な国際知財データによるチャート

2021年版知財チャート (インタラクティブ)

国際特許制度 (特許協力条約 – PCT)

PCT上位出願人・出願国

2021年におけるPCTの最大ユーザは、昨年に引き続き中国であり (69,540件、前年比+0.9%)、 次いで、米国 (59,570件、+1.9%) 日本 (50,260件、–0.6%) 韓国 (20,678件、+3.2%) ドイツ (17,322件、–6.4%) の順位となりました (附属書1 PDF, Annex 1) 。

トップ10以下では、シンガポール (1,617件、+23%) 、フィンランド (1,907件、+13.8%) およびトルコ (1,829件、+13.2%) のそれぞれのPCT出願件数が2021年に急増しました。2021年、アジアが全PCT出願件数の過半数を占めましたが、これは、過去20年間にわたる「イノベーション活動の原動力」としてのアジアの台頭を表す大きなトレンドの一環をなすものです。

中国の電気通信大手ファーウェイ (中国語表記: 華為技術、英語表記: Huawei Technologies) のPCT出願公開件数は6,952 件で、2021年の出願人トップとなりました。次いで、米国のクアルコム (Qualcomm Inc.) (3,931件) 、韓国のサムスン電子 (Samsung Electronics) (3,041件) 、韓国のLGエレクトロニクス (LG Electronics Inc.) (2,885件) 、日本の三菱電機 (2,673件) の順となりました (附属書2 PDF, Annex 2) 。

2021年における出願公開件数で見ると、出願人トップ10中、クアルコム社の伸び率が最も大きく (+80.9%)、その結果、同社のランキングは2020年の5位から2021年には2位まで上昇しました。クアルコム社のデジタル通信関連の出願は、2020年の1,486件から2021年の2,951件にほぼ倍増し、この増加が、同社全体の力強い成長を後押しする一助となりました。

カリフォルニア大学の出願公開件数は551件で、2021年も、大学・教育機関別PCT上位出願人ランキングの首位を飾りました。浙江大学 (306件) が2位、次いで、マサチューセッツ工科大学 (227件) 、清華大学 (201件) 、スタンフォード大学 (194件) の順となりました (附属書3 PDF, Annex 3) 。上位10大学には、中国および米国からそれぞれ4大学、日本およびシンガポールからそれぞれ1大学がランクインしました。シンガポール国立大学が初めてトップ10入りを果たしました。

上位の技術分野

技術分野別では、公開されたPCT出願のうち、コンピュータ技術 (全体の9.9%) が最大のシェアを占め、次いで、デジタル通信 (9%) 、医療技術 (7.1%) 、電気機械 (6.9%) 、測定 (4.6%) の順となりました (附属書4 PDF, Annex 4)。

2021年には、トップ10の技術分野のうち6つの分野で伸びが記録されており、医薬分野 (+12.8%) が最も伸び率が高く、次いでバイオテクノロジー (+9.5%) 、コンピュータ技術 (7.2%) 、デジタル通信 (+6.9%) の各分野が続きました。これらの分野での成長は、パンデミックの広がりに伴って保健医療技術が活性化したことや、デジタル技術の進歩の機会が継続的に得られたことを示すものです。

国際商標制度 (マドリッド制度)

WIPOの国際商標制度を商標保護のために利用した件数は、2021年に14.4%伸び、出願件数は73,100件に達しました。これは、2005年以来、最も高い前年比成長率です。

国別では、2021年にWIPOマドリッド制度を利用して国際商標出願を最も多く行ったのは米国の出願人 (13,276件) で、次いで、ドイツ (8,799件) 、中国 (5,272件) 、フランス (4,888件) 、英国 (4,215件) の順となりました (附属書5 PDF, Annex 5)。

2021年、上位10の出願国のうち7ヶ国で2桁成長が見られ、米国 (+32.5%) 、フランス (+30.7%) およびドイツ (+18%) で最も高い成長率となりました。トップ10以外では、カナダ (+49.4%) 、ノルウェー (+49.8%) 、フィンランド (+43.2%) およびスウェーデン (+42.5%) で2021年に大幅な出願の伸びが見られました。

マドリッド制度の上位出願人

フランスのロレアル (L’Oréal) が171件のマドリッド商標出願を記録し、スイスのノバルティス (Novartis AG) を抜いて2021年の国際商標出願のトップ出願人となりました。ドイツのADP Gauselmann (120件) が2位につけ、次いで、英国のグラクソ・グループ (Glaxo Group) (110件) 、中国のファーウェイ (中国語表記: 華為技術、英語表記: Huawei Technologies) (98件) 、ノバルティス (94件) の順となりました。ロレアルからWIPOへの出願件数は、2021年には2020年に比べて55件増え、前年の5位から首位に押し上げました (附属書6 PDF, Annex 6) 。

上位の分類

WIPOが受理した国際出願のうち最も多く指定された分類は、コンピュータハードウェア・ソフトウェアおよびその他の電気電子機器であり、2021年の合計の10.7%を占めました。次いで、事業向けサービス (8.4%) 、技術的サービス (7.7%) の各分類となりました。トップ10分類のうち、技術的サービス (+30.9%) および事業向けサービス (+25.1%) が最も大きく伸びました。

国際意匠制度 (ハーグ制度)

意匠の国際登録に関するハーグ制度を通じた工業意匠の保護の需要は、急落した前年から改善しました。国際出願に含まれる意匠の数は、2021年に20.8%増加し、22,480意匠に達しました。これは、2010年以来、最も高い成長率です。

ドイツが引き続き国際登録制度の最大ユーザとなり、2021年の意匠数は4,469件、次いで、米国 (2,610件) 、イタリア (2,051件) 、スイス (1,826件) 、フランス (1,584件) の順となりました (附属書7 PDF, Annex 7)。上位5ヶ国のうち、2021年に最も高い成長率を記録したのはフランス (+69.4%) およびイタリア (+66.6%) で、その結果、イタリアは2020年のランキング5位から2021年には3位まで上昇し、フランスは同期間に8位から5位に順位を上げました。

ハーグ制度の上位出願人

公表された出願に含まれる意匠数では、韓国のサムソン電子 (Samsung Electronics) が862件と5年連続で上位出願人ランキングのトップとなり、次いで、オランダのフィリップス エレクトロニクス (Philips Electronics) (678件) 、米国のプロクター・アンド・ギャンブル (Procter & Gamble) (665件) 、韓国のLGエレクトロニクス (LG Electronics) (655件) 、ドイツのフォルクスワーゲン (Volkswagen) (403件) の順となりました。2021年、出願人トップ10のうち、2020年に比べて出願に含まれる意匠数が大幅に増加したのは、フィリップス エレクトロニクス (意匠数にして+215件) 、LGエレクトロニクス (+177件) およびフランスのPSAオートモビル (PSA Automobiles) (+116件) でした。216意匠で9位にランクインしたドイツのLuqom GMBHは、ハーグ制度を新たに利用し始めたユーザです (附属書8 PDF, Annex 8)。

上位の分野

輸送手段に関連する意匠 (9.7%) が2021年の意匠の合計のうち最大シェアを占め、次いで、記録・通信機器 (9.6%) 、パッケージおよび容器 (8.2%) 、家具 (6.9%) 、照明器具 (6.5%) の順となりました。上位10の分類のうち、2021年に大幅な伸びを見せたのは衣料品 (+76%) でした。

WIPO仲裁調停センター

2021年、商標権者がWIPO仲裁調停センターに対してドメイン名紛争統一処理方針 (UDRP) に従って行った申立件数は過去最高の5,128件に上り、2020年から22%増となりました。この急増により、WIPOが処理したサイバースクワッティング事件はおよそ56,000件となり、取り扱ったドメイン名の数は合計で100,000件を超えました (附属書9 PDF, Annex 9)。

また、著作権、特許、商標および技術関連のその他の紛争に関するWIPOでの調停・仲裁事件についても、記録的な年となりました。163件の調停、仲裁および簡易仲裁事件と100件のあっせん依頼を含むこの期間中の事件件数は44.5%の増加となり、裁判外の知財紛争解決に対する高いニーズを浮き彫りにしました (附属書10 PDF, Annex 10)。

ドメイン名

WIPOセンターに対して申立てられるサイバースクワッティング事件の急増は、特にコロナ禍にあってより多くの人がより多くの時間をオンラインで過ごしていることを背景に、真正なコンテンツと信頼できる販路を提供することを目的として、オンラインでの存在感を高めたい商標権者によるところが大きいです。WIPOにおける分野別トップレベルドメイン (gTLD) 事件のうち、.COMドメインが70%を占め、引き続き首位となりました。

2021年、WIPOでのUDRP事件には132ヶ国からの当事者が関与しました。ビジネス分野のトップ3は、銀行業・金融 (13%) 、インターネット・IT (13%) およびバイオテクノロジー・医薬 (11%) でした (附属書11 PDF, Annex 11)。 申立人国別の上位5ヶ国は、米国 (1,760件) 、フランス (938件) 、英国 (450件) 、スイス (326件) 、ドイツ (251件) でした (附属書12 PDF, Annex 12)。

WIPOセンターは、.CN (中国) や.EU (欧州連合) 等の国別コードトップレベルドメイン (ccTLD) にも深く関与し続けています。2021年には、.BHおよび البحرين. (バーレーン) ならびに.SA および السعودية. (サウジアラビア) が加わり、また、2022年1月1日からは.SN (セネガル) も加入したことで、WIPOセンターでは、80を超えるccTLDについて紛争解決サービスを提供しています。

知財の調停・仲裁

2021年、WIPOでの知財調停・仲裁事件には、多国籍企業 (46%) 、スタートアップ、クリエイターやイノベーターを含む中小企業 (41%) 、集中管理団体 (CMO) (12%) などが関与し、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカおよび北米からの当事者が顕著でした。

紛争は幅広いIP関連分野にわたり、最も多かったのは、著作権 (41%) 、特許 (37%) および商標 (16%) でした。主なビジネス分野は、デジタル著作権、ICT、生命科学および機械系特許でした。特に増えたのが、FRAND紛争、著作権紛争 (特に、メキシコ国家著作権局 (INDAUTOR) との共同管理・協力を通じた紛争) や、中国の裁判所から付託された国際IP紛争に関する調停の申立てでした。

WIPOでの事件のうち約70%において、異なる管轄区域からの当事者が関与し、中国語、英語、フランス語、韓国語およびスペイン語を含む多言語で処理されています。2021年、WIPO調停の解決率は75%に達しました。多くの当事者が、渡航制限やソーシャル・ディスタンシングに鑑みて不可欠となったWIPO Online Case Administration Tools (オンライン事件管理ツール) を利用しました。

WIPOについて

世界知的所有権機関(WIPO)189加盟国を抱える国連の専門機関として、バランスのとれた利用しやすい国際的なIP制度の発展を担当しています。
国際的な知的財産に関する条約や基準について話し合う場を与え、民間部門に営利ベースのIPサービスを提供し、政府が開発戦略の一環としてIPを活用する能力開発を助けるとともに、無料でIP情報へのアクセスを提供しています。

詳しくはWIPO Media Relations Sectionにお問い合わせください。
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