特許法等の一部を改正する法律
平成26年5月
経 済 産 業 省
「日本再興戦略」及び「知的財産政策に関する基本方針」(いずれも平成25
年6月閣議決定)を踏まえ、我が国は、今後10年間で、世界最高の「知的財
産立国」を目指す。この実現に向け、知的財産の更なる創造・保護・活用に資
する制度的・人的基盤を早急に整備するための措置を講ずる。
(1)特許法の改正
①救済措置の拡充
国際的な法制度に倣い、制度ユーザーにやむを得ない事由(災害等)が
生じた場合に特許料の納付等の手続期間の延長を可能とする規定を網羅
的に整備する等、救済規定を拡充する。(実用新案法、意匠法、商標法及
び国際出願法(※)についても同様の措置を講ずる。)
※「特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律」の略称
②特許異議の申立て制度の創設
特許無効審判制度(請求について期間の制限がない)に加え、申立期間
を権利化から6か月以内に制限すること等により強く安定した権利の早
期確保を可能とし、かつ制度ユーザーの負担が少ない特許異議の申立て
制度を創設する。これに併せ、特許無効審判は利害関係人に限り請求で
きることとする。
(2)意匠法の改正
他国において意匠権を低コストで取得できるよう、「ジュネーブ改正協
定」(現在、加入を検討中の「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネ
ーブ改正協定」)に基づき、複数国に対して意匠を一括出願するための規
定の整備を行う。
1.法律改正の趣旨
2.法律改正の概要
(3)商標法の改正
①保護対象の拡充
既に他国で広く保護対象となっている色彩や音といった商標について、
我が国商標法の保護対象に追加するとともに、出願手続等について所要
の規定の整備を行う。
②地域団体商標の登録主体の拡充
地域ブランドの普及の担い手である商工会、商工会議所及び特定非営
利活動法人(NPO)を地域団体商標制度(※)の登録主体に追加する。
※地域団体商標制度とは、商標の登録要件を緩和し、「地域名+商品名」等からなる商標の登録をより
容易なものとする制度。(現行法上、登録主体は事業協同組合等に限定。)
(4)弁理士法の改正
①弁理士の使命の明確化
「知的財産に関する専門家」としての弁理士が我が国の経済及び産業
の発展に資するべきことについて、弁理士の使命として明確に位置づけ
る。
②弁理士の業務の拡充
発明について出願以前のアイデア段階での相談業務ができる旨の明確
化や「ジュネーブ改正協定」及び意匠法に基づく他国への出願手続の代理
業務の追加等の規定の整備を行う。
(5)その他
「特許協力条約」に基づく国際出願の手数料のうち他国の特許庁等に対
する手数料について、特許庁に対する手数料と一括で納付するための規
定の整備を行う。【国際出願法の改正】
以下の事項を除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において
政令で定める日
・地域団体商標の登録主体の拡充:公布の日から起算して三月を超えない
範囲内において政令で定める日
・「ジュネーブ改正協定」の実施のための規定の整備:「ジュネーブ改正協定」
が日本国について効力を生ずる日
3.施行期日
2.改正法の概要
3.措置事項の概要
1.背 景
今後10年で世界最高の「知的財産立国」を目指すこととしている「日本再興戦略」及び「知的財産政策に関する基本方針」(いずれも平成 25年6月閣議決定)の着実な実行のためには、知的財産の更なる創造・保護・活用に資する制度的・人的基盤の早急な整備が必要。
国際的な制度調和の観点も踏まえ、特許法(救済措置の拡充及び特許異議の申立て制度の創設)、意匠法(複数国に意匠を一括出願す るための規定の整備)、商標法(保護対象の拡充及び地域団体商標の登録主体の拡充)等の改正による制度的基盤の整備を行うととも に、弁理士法(弁理士の使命の明確化・業務の拡充)の改正による人的基盤の整備を行う。
A.特許法の改正
B.意匠法の改正
(1)救済措置の拡充 国際的な法制度に倣い、出願人に災害等のやむを得ない事由が生じた場合に手
続期間の延長を可能とする等の措置を講ずる【第108条第4項等】(実用新案法、
意匠法、商標法及び国際出願法にも同様の措置を講ずる)。
○複数国に意匠を一括出願するための規定の整備 「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」(加入を検討中)
に基づき、複数国に対して意匠を一括出願するための規定を整備し、出願人のコ
スト低減を図る【第6章の2】。
(1)保護対象の拡充 他国では既に広く保護対象となっている色彩や音といった商標を我が国におけ る保護対象に追加する【第2条第1項】。
(2)地域団体商標の登録主体の拡充 商工会、商工会議所及びNPO法人を商標法の地域団体商標制度の登録主体 に追加し、地域ブランドの更なる普及・展開を図る【第7条の2第1項】。
C.商標法の改正
・色彩の商標 トンボ:MONO消しゴム (欧州での登録)
・音の商標 久光製薬
(欧州での登録)
・香川県小豆島の小豆島オリーブオイル (NPO法人小豆島オリーブ協会 )
【海外での我が国企業の商標の登録例】 【普及が進む地域ブランドの例】
○弁理士の使命の明確化・業務の拡充 「知的財産に関する専門家」としての弁理士の使命を弁理士法上に明確に位置 づける【第1条】とともに、出願以前のアイデア段階での相談業務ができる旨の明 確化【第4条第3項第3号】等を行う。
(2)特許異議の申立て制度の創設 特許権の早期安定化を可能とすべく、特許異議の申立て制度を創設する【第5章】。
○手数料の納付手続の簡素化【国際出願法の改正】 国際的な法制度に基づき特許の国際出願をする場合の他国の特許庁等に対す
る手数料について、我が国の特許庁に対する手数料と一括で納付するための規
定の整備を行う【第18条】。
A国
B国
C国
A国
B国
C国出願人出願人 特許庁
【法改正前】 【法改正後】
D.弁理士法の改正
その他
【法改正前】
【法改正後】
・誰でも請求可能 ・口頭又は書面での審理
<特許から6か月間>
<いつでも請求可能>
<いつでも請求可能>
・誰でも申立て可能 ・書面審理のみ特許異議の
申立て制度
特許無効 審判制度
・利害関係人のみ請求可能 ・口頭又は書面での審理
「特許法等の一部を改正する法律」の概要