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WIPO Arbitration and Mediation Center

紛争処理パネル裁定

Compagnie Générale des Etablissements Michelin 対 Xserver Xserver Inc. / Kurumi Ishizu

事件番号 D2021-4196

1. 紛争当事者

申立人は、Compagnie Générale des Etablissements Michelinであり、その住所地はフランスである。申立人の代理人は、Tmark Conseilsであり、その住所地はフランスである。

被申立人は、Xserver Xserver Inc. / Kurumi Ishizuであり、その住所地は日本国である。

2. ドメイン名および登録機関

紛争の対象であるドメイン名:<kurumichelin.com> 本件ドメイン名の登録機関:Netowl, Inc.

3. 手続の経過

本件申立書(英語)は、2021年12月14日にWIPO仲裁調停センター(以下「センター」)へ提出された。センターは2021年12月14日にメールにより本件ドメイン名の登録確認を登録機関Netowl, Inc.に要請した。2021年12月16日にNetowl, Inc.はメールによりセンターへ登録確認の返答をし、申立書に記載された被申立人および連絡先細目と異なる情報を当該ドメイン名の登録者として公開した。センターは申立人へ2021年12月17日に登録機関により公開されたドメイン名登録者および連絡先細目を通知した。それに伴い、申立人は申立書を訂正することができると案内された。申立人は申立書の補正書(英語)を2021年12月18日にセンターへ提出した。

2021年12月17日に、センターは議事録の言語について両当事者に英語と日本語で連絡を送り、2021年12月18日に、申立人は、英語を議事録の言語にするというその要求を確認した。被申立人は手続言語に関して意見を提出しなかった。

センターは申立書および補正書が統一ドメイン名紛争処理方針(以下「処理方針」)、統一ドメイン名紛争処理方針手続規則(以下、「手続規則」)およびWIPO統一ドメイン名紛争処理方針補則 (以下,「補則」)における方式要件を充足していることを確認した。

手続規則第2条および第4条に従い、センターは本件申立を英語と日本語で被申立人に通知し、2021年12月23日に紛争処理手続が開始された。手続規則第5条に従い、答弁書の提出期限は2022年1月12日であった。被申立人は、期日までに正式な答弁書を提出しなかった。被申立人は、2021年12月28日に日本語の電子メールを送信し、英語の申立書で申し立てられた内容を明確に理解していないことを示されていた。センターは、2022年1月16日に紛争処理パネルの指名の開始を両当事者に通知した。

センターは、Douglas Clarkを単独のパネリストとして本件について2022年1月25日に指名した。紛争処理パネルは、同パネルが正当に構成されたことを確認した。手続規則第7条の要請に従い、紛争処理パネルはセンターへ承諾書および公平と独立に関する宣言を提出した。

パネリストは登録契約書は日本語で記載されていること、又は、被申立人の2021年12月28日に電子メールの内容を検討して、2022年2月10日に申立人は申立書の日本語翻訳と申立人は被申立人の電子メールの内容についての意見を提出することと、被申立人はその書類に対して答えを提出することを命じた。申立人は2022年2月19日に日本語翻訳と申立人は被申立人の電子メールの内容についての意見を提出した。被申立人はこの書類に対して答えを提出しなかった。

4. 背景となる事実

本件紛争処理手続における申立人は有限会社、コンパニー ゼネラール デ ゼタブリスマン ミシュランである。

1889年に設立された申立人は、自動車、トラック、オートバイ、飛行機のタイヤ製造の分野で高い評価を得ている。実際に、申立人は、複数の乗物業界(自動車、トラック、航空)向けにタイヤを設計、製造、販売している有名企業である。また、旅行出版物(地図、案内書、地図帳、電子化された製品)や車両競技(フォーミュラ1とロードレース世界選手権、スーパーバイク世界選手権)やラリーにも深く関わっている。

申立人は毎年のMichelinガイドも出版している。ミシュランは不慣れなドライバーに地方の観光名所へ車で旅行することを促すために、1900年にヨーロッパで美食ガイドの発行を開始した。とりわけ、ガイドには、提供される料理の質と味および料理技術と料理の個性の熟練度に焦点を当てたヨーロッパ料理レストランへの匿名のレビューが掲載されていた。 MICHELINの星は、1926年以来、レストランの質を格付けするために申立人によって使用されている評価システムである。

Michelinガイドは比類のないベストセラーになった:ガイドは現在、世界中の30を超える地域で30,000以上の施設を評価し、それ以来、3,000万を超えるMICHELINガイドが世界中で販売されている。

その結果として、申立人は、世界中のレストランやホテルを選ぶ有名な「ガイドミシュラン」を通じて、その高い評判を著しく確立している。 「ミシュランの星」の数は、レストランを評価する際の参考かつ基準となっている。 ミシュランの星は現在、世界の一流シェフの多くから高級レストランの証と見なされている。 星を取得するのは簡単ではなく、ガイドの各特定の都市で最高のレストランに授与される。 星の獲得者は、名誉とともに大きな名声と注目を得る、そして、多くのレストランのオーナーもミシュランの星を獲得した後、事業の拡大を経験する。

申立人は、タイヤの製造販売だけではなく、レストランや美食の分野でのさまざまなロードマップ及び案内書に関連して、世界中の多くの国、特に日本で、MICHELINに関する強い登録商標権を所有している。

申立人は、とりわけ、以下の商標を所有している:

2013年10月4日に登録された日本商標登録第5620241号MICHELIN;2014年12月10日に登録された国際商標登録第1245891号MICHELIN;1986年7月1日に登録されたアメリカ合衆国商標登録第1399361号MICHELIN及び2015年4月17日に登録された欧州連合商標登録第013558366号MICHELIN。

これらの商標は、美食に関連する製品とサービス、特に「旅行、観光、美食の分野のデータベースからオンラインで入手できる電子形式のマルチメディア出版物、または案内書の編集及び出版」をカバーしている。

本件ドメイン名<kurumichelin.com>は2019年6月17日に登録された。被申立人は日本にいる個人である。被申立人は、ウェブサイト<kurumichelin.com>において日本にあるレストランのレビューを載せている。被申立人の下の名前は“kurumi”である。

5. 当事者の主張

A. 申立人

同一または混同を引き起こすほどに類似しており

申立人の主張は、以下のとおりである。

争われるドメイン名は、申立人のMICHELIN商標を全く同一に複製しており、ジェネリックトップレベルドメイン(gTLD)「.com」を追加しても、申立人の登録済みMICHELIN商標と争われるドメイン名は同一または混同を生じる類似性が排除されるものではなく、識別性もない。

したがって、本件の場合、争われるドメイン名には「MICHELIN」という商標が組み込まれており、疑う余地なくそれが争われるドメイン名のうち目を引く、重要な特徴である。 実際、「kuru」という言葉があっても、MICHELINという商標が被申立人のドメイン名に完全に組み込まれていることにより、申立人と直接関係があると公衆の心に喚起させることを損なうものではない。

「kuru」という言葉は、単に申立人の価値ある有名商標MICHELINを際立たせ、インターネットユーザーがMICHELINの製品やサービスに「来る」またはアクセスできると誤って思い込ませるのにつながる。

したがって、インターネットユーザーは、とりわけ、争われるドメイン名を、特にMichelinガイドに関連する申立人の活動について登録された申立人のドメイン名として誤って特定する可能性がある。

権利または正当な利益を有していない

被申立人は、本件ドメイン名によって知られておらず、且つ現在までに本件ドメイン名を使用していないことから、如何なる権利又は正当な利益を有さない。

ドメイン名が悪意で、登録かつ使用されていること

申立人は、インターネット上の簡易検索により、被申立人には、「Michelin」は申立人が既に使用している登録商標であることを容易に知ることができ、また当該商標は世界的に著名であるので知らなかったとは考えられず、申立人と全く関係のない被申立人が偶然に申立人の登録商標と類似するドメイン名を登録することは、不正の目的で登録した以外には考えられない。

被申立人は、MICHELIN商標の評判を不当に利用して、食と美食のインフルエンサーのプロフィールを作り、視聴者を増やし、そこから金銭的利益を得るために、意図的にMICHELINという商標をウェブサイトに付けることを選択した。これに関連して、ウェブサイト<kurumichelin.com>には、レストラン予約プラットフォームにリンクして、広告バナーが含まれていることを指摘しておく。

B. 被申立人

被申立人の主張は、以下のとおりである。

<kurumichelin.com>が自分の個人ブログのドメインである。2年ほど前にxserverで購入してから、愛用しているドメインである。誰にも売る気がない。

6. 審理および事実認定

6.1 手続言語

本件ドメイン名の登録契約の言語は日本語である。本件の手続言語についての当事者間の別段の合意は存在しない。申立人から英語を手続言語にすることを求める要請書が提出されたが、被申立人が日本語の電子メールをセンターに送信し、英語の申立書で申し立てられた内容を明確に理解していないことも示されていた。本件ドメイン名を使用するウェブサイトの内容は主に日本語である。被申立人は日本にいる個人である。すべての手続において、パネルは、両当事者が平等に扱われ、各当事者が自身の主張を述べるための公平な機会を与えられるように、努めるものとする。

以上の事情から、手続規則第11条(a)項の原則どおり、本件の手続言語を日本語とするのが妥当である。したがって、パネルは2022年2月10日に申立人は申立書の日本語翻訳を提出することを命じた。申立人は2022年2月19日に申立書の日本語翻訳を提出した。

6.2 実体的要件

A. 同一または混同を引き起こすほどに類似している

紛争処理パネルは、本件ドメイン名は、申立人の登録商標「MICHELIN」を包含するものであり、「kuru」が加えられても依然として消費者を混同する類似性を有すると認める。

従って、処理方針第4条(a)(i)項で求められる要件は満たされる。

B. 権利または正当な利益を有していない

申立人は、被申立人が本件ドメイン名について権利または正当な利益がないことを立証する義務がある。しかし、通常そのような情報は被申立人が持ちうる知識であることから、申立人が一定の立証責任を果たした場合、被申立に立証責任が移転されると理解されている(WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP Questions, Third Edition (“WIPO Overview 3.0”))、第2.1項参照)。

処理方針の第4条(c)項に、被申立人により提出されうる権利および正当な利益を証明するような状況証拠の事例が非限定的に提示されている。

(i) 善意による商品もしくは役務(サービス)の提供を行うために、当該ドメイン名もしくはこれに対応する名称を使用していた、または、使用のための明白な準備をしていた。

(ii) 被申立人(個人、企業およびその他の組織)は、商標権およびサービスマークを有していなくても、ドメイン名の名称で一般に知られていた。

(iii) 被申立人は、当該ドメイン名を、正当にして非商業的にまたは公正に使用しており、その際に、消費者の誤認を惹き起こすことにより商業的利益を得る、または、当該商標もしくは役務商標(サービスマーク)の価値を毀損する意図を有していない。

申立人は、被申立人に対して申立人のMICHELIN商標を使用することを許諾していないと主張し、被申立人が本件ドメイン名により一般的に知られていることを示す証拠はないと主張した。これにより、本件において、紛争処理パネルは、申立人は、被申立人が本件ドメイン名について権利または正当な利益を有していないとする主張を一応立証したものと認める。

本件ドメイン名は被申立人の下の名前、“kurumi”を含めているが、被申立人が本件ドメイン名に何故“michelin”か“chelin”が含めているか、説明していない。被申立人が本件ドメイン名で一般的に知られていたことを示す証拠は一切提出していない。

被申立人は、本件ドメイン名を使用するウェブサイトにおいて、日本にあるレストランのレビューと、レストラン予約プラットフォームと、広告バナーを載せている。善意による商品またはサービスの提供を行うために使用することも、正当な非商業的使用または公正な使用もしていない。

従って、紛争処理パネルは、申立人が被申立人が本ドメイン名のMICHELIN部分にについて何らの権利も正当な利益も有していないことを証明したと判断する。

従って、処理方針第4条(a)(ii)項で求められる要件は満たされる。

C. ドメイン名が悪意で、登録かつ使用されていること

MICHELIN商標は有名であり、特徴的である。申立人の出版するMichelinガイドは現在、日本を含む世界中の30を超える地域で30,000以上の施設を評価し、それ以来、3,000万を超えるMICHELINガイドが世界中で販売されている。被申立人は、本件ドメイン名を使用するウェブサイトにおいて、日本にあるレストランのレビューを載せている。したがって、被申立人が、本ドメイン名を登録した際には、MICHELIN商標を知っていたはずである。被申立人が、本ドメイン名の登録当時に申立人の商標権を認識していたことは、被申立人の悪意による登録を推認させる。

さらに、被申立人は、自分のブログにレストラン予約プラットフォームにリンクを提供することによって、MICHELIN商標を利用して、その情報源や所属について誤解をしたインターネットの利用者から故意に利益を得ようとしていたとも考えられる。

従って、処理方針第4条(a)(iii)項で求められる要件は満たされる。

7. 裁定

以上の理由により、処理方針第4条(i)項および手続規則第15条に従い、紛争処理パネルは当該ドメイン名<kurumichelin.com>を申立人へ移転することを命じる。

Douglas Clark
パネリスト
日付:2022年4月4日