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知的財産を活用したイノベーションのための資金調達の機会*

2021年6月

Alfred Radauer氏、IMC University of Applied Sciences、オーストリア、クレムス

*この記事は、2020年グローバル・イノベーション・インデックス第16章 (知的財産を使ったイノベーションのための資金調達の機会) に依拠しています。 pdf

過去30年間の「知的財産重視の時代」は、世界中の主要特許庁における特許および知的財産 (IP) の出願の着実な増加と、事業における知的財産活用の拡大によって特徴づけられました。知識集約型経済への移行に伴い、企業の価値は、次第にノウハウ、ブランドあるいは技術力などの無形資産によって決定されるようになっています。

(画像: WIPO / Hassink)

知的財産専門の投資銀行であるオーシャントモ (Ocean Tomo) の調査によると、2015年のS&P500指数組入れ企業の価値の84%は無形資産に起因し、物理的資産のような有形資産に起因するのは16%に過ぎません。これは、1973年にそれぞれの割合が17%と83%であった40年前の状況から逆転しています。

当然ながら、国の政策当局者は、無形資産を競争相手による不正使用および/または違法コピーから保護することの重要性に関する企業の意識を高めようと働きかけています。そして彼らは、そうするための重要な手段として、知的財産権の利用を推奨しています。その結果、多くの企業が、知的財産権は「持っているべき」保険の形態であることを理解し始めています。多くの企業にとってはそれで十分かもしれませんが、そのような狭い視点によって、積極的に知的財産権を活用してさらなるイノベーションの資金を調達し、新たな収益源を生み出す機会が見えにくくなっています。

知的財産を使って資金調達を獲得する方法

企業金融は、企業の (株式) 価値の最大化を目的として、特に事業の決断事項に資金を供給することを重視しています。そのためそれは、例えば投資家が企業の株式を購入する新株発行、あるいはローンのような借入など、通常は様々な資金源を重視します。研究開発 (R&D) に対する助成金もまた資金調達機能を持つと言ってよいでしょう。知的財産権は、融資の活用と、各事例におけるイノベーション活動への資金割当に重要な役割を果たすことができます。

知的財産とエクイティ

新株発行の場合、投資を呼び込み投資家の興味を高めるために、知的財産は特に重要になり得ます。ベンチャーキャピタルを呼込もうとするスタートアップ企業にとって、知的財産権、特に特許は重要です。

多くの調査によれば、ベンチャーキャピタリストは、知的財産を重視する企業に資金を提供する傾向が強いことが分かります。彼らは様々な方法で投資家に訴えます。まず、通常大きな売上記録を持たないスタートアップ企業は、特許審査において特許性の判断基準を満たしさえすれば、彼らのアイデアに価値があることを証明できます。2つ目として、特許は、スタートアップ企業を裏から支える発明が、他の企業によって容易には模倣されないという保証を提供します。3つ目として、スタートアップ企業が倒産した場合でも特許は残るため、他社に売却またはライセンス供与することができます。したがって投資家の損失の可能性は限定されます。そして4つ目として、特許によってスタートアップ企業が市場で際立つことができ、投資家の注目を集めることに成功する可能性があります。

様々な知的財産権の資金調達支援に対する適性は、該当する産業によって決まります。

様々な知的財産権の資金調達支援に対する適性は、該当する産業によって決まります。例えば生命科学または他のハイテク産業においては、特許は事業の形成、成長および維持のための通貨です。その他の産業では、ブランドを保護する商標のような知的財産権が重要となることもあります。場合によっては、ビジネスモデル全体が知的財産権の上に構築される可能性があります。知的財産の商業化の形態の1つとしてのフランチャイズがその例です。

借入による資金調達における知的財産権

知的財産権は、融資の担保として借入による資金調達に利用される場合もあります。知的財産権を利用した融資の引き受けは、その論理的根拠が株式投資と似ているかもしれませんが、知的財産権を利用した借入による資金調達は、知的財産を裏付けとするエクティー・シナリオほど一般的ではありません。とはいうものの、予想に反して活発に融資が行われているようです。ある試算によれば、ベンチャー企業向け融資を行うシリコンバレーバンクやその他の専門ノンバンクは、スタートアップ企業に年間約50億米ドルの資金を提供しています。しかし、特許権を担保として借入による資金調達を利用することについては、担保価値の裏付けに疑問の余地があるとする否定的な見方もあります。この見方は2通りに解釈できます。1つ目として、知的財産を利用した借入による資金調達の機会は実際にあるかもしれません。2つ目として、そこには課題もあり、そのためにこの資金調達の市場が小さいのです。とはいうものの、企業の借入による資金調達のための知的財産を裏付けとする担保の利用に関しては、さらなる研究とデータが必要であることは明らかです。

資金調達を利用する上での課題が、一部の政府が知的財産を裏付けとする借入による資金調達の市場を育成するきっかけとなりました。例えば中国は、金利の補助、特定の銀行資金および貸出しリスク削減のための評価ガイドラインおよびツールなどにより、知的財産権の担保としての利用を促進する政府のプログラムを展開しています。報告によると2018年と2019年9月の間に、広東省だけで特許を担保とする約300億人民元 (40億米ドル超) 相当の融資が実行され、「何千社」もの企業がこのスキームの恩恵を受けたということです。

R&D助成金との関連における知的財産

見過ごされることが多いのですが、知的財産権は政府資金によるR&D助成金を呼込むことに役立つ場合があります。ここで、知的財産権が扱われる方法について2つの主な要素を見てみます。

最初の要素として、政府によるR&D助成金プログラムの多くでは、特許およびその他の形態の知的財産が、 (成功した) R&Dプロジェクトの結果として出願または登録される必要があります。政府は、結果として製品およびサービスの商業化につながる研究を育成したいと考えており、そのためには知的財産権を得ることが条件になります。しかし、政策当局者および企業は、これらの助成金スキームの策定方法を慎重に検討し、出願された知的財産権は市場性のあるR&Dの結果とは別物であることを認識する必要があります。実際に、ある発明に関する特許が出願されたとしても、試作段階に到達してその先に進むためには、さらにかなりの継続的なR&Dが必要となることが多いのです。

「知的財産権を保険の手段と単純に考えるのではなく、資金を得るためのツールとしてより広く捉えれば、企業がイノベーションのための資金調達に知的財産を活用する機会は多く存在します」とAlfred Radauer氏は説明します。(写真: MicroStockHub / E+ / Getty Images)

2つ目の要素として、研究コンソーシアム、特に国際的な研究コンソーシアムに対する助成金は、人気が高まっています。コンソーシアムを基盤とするR&Dの資金調達における知的財産は、コンソーシアムを規定する契約書 (または合意書) に書かれています。ここでは、参加者はバックグラウンドIP (各参加者が提供するIP) の使用または共有の条件、つまり各参加パートナーがバックグラウンドIPを使って何ができて何をしてはならないかを知らなければなりません。同様に、例えば特許に結び付くような、共同で開発した研究成果 (いわゆるフォアグラウンドIP) をパートナー間でどのように共有するかについて合意しておく必要があります。そのような知的財産管理には、コンソーシアムの契約を締結するための戦略的思考と交渉術に加えて、知的財産の登録と出願が必要です。ネットワークの形成、追加資金調達とコンソーシアムのパートナーのノウハウへのアクセス、および学びなどの潜在的な恩恵は、これらの契約の公式の法的条件をはるかに上回ります。

知的財産のための取引所および市場 – イノベーションのための資金源となる可能性

知的財産が新株発行と借入による資金調達の双方に利用できるのであれば、企業が株式および/または債券の取引所を資本調達に利用するのと同じ方法で、取引所および市場を通じて資金調達の機会を活用するために知的財産を使えるでしょうか。

「資産 (assets)」および「財産 (property)」という言葉は、知的財産が金融証券と多くの特性を共有していることと、知的財産の供給が増え続けており、さらにはそれが流動性を生んでいる (すなわち、買い手と売り手とを見つけて、知的財産資産を明確な市場価格で現金化することが容易である) ことを示唆しています。知的財産の所有権が移転しない場合でも、ライセンス供与が、多くの企業にとって資金調達のための重要な活動として増加していることの明確な証拠 (主に二者間の) があります。

その価値が状況に依存しているという点において、知的財産は物理的な財産とは異なります。

この質問に対する答えは、実際に機会があるかもしれませんが、この問題は複雑で微妙な判断が必要だということです。

知的財産市場の発展に関する1つの大きな困難は、すべての特許/知的財産のライセンス供与が同じではないということです。決定的な差異が生まれるのは、「鞭 (stick) による」ライセンス供与と「飴 (carrot) による」ライセンス供与の2つの市場セグメントがあることによります。

  • 「鞭によるライセンス供与」は、企業が既にある技術を使用しており、その技術の元になっている知的財産権の所有者 (異なる企業) が、技術を使用している企業にライセンス取得を求めるケースです。そのようなライセンス供与は別名を権利行使 (enforcement) または係争 (assertion) ライセンス供与ともいいますが、それは、知的財産権の侵害嫌疑者に対する訴訟または訴訟するという警告に大きく依存します。特許/知的財産の収益化市場または知的財産/特許仲介市場に関する議論においては、この種類のライセンス供与や市場セグメントが問題になります。
  • 「飴によるライセンス供与」は、関係者が、興味のある知識や技術のためのライセンスを積極的に求めている状況を表します。多くの場合、これには特許およびノウハウのライセンス供与または技術のライセンス供与が含まれます。そのようなライセンス供与によって、技術の移転が発生します。

2つの市場の境界はある程度流動的ではあるものの、双方のライセンス供与の特性と公的支援のニーズは異なるため、この差異は重要です。

知的財産の支援による資金調達のすべての形態に関する共通の課題

鞭によるライセンス供与と飴によるライセンス供与のどちらの市場も、流動性は概して高くありません。飴によるライセンス供与契約が成功することは、鞭による強制的ライセンス供与と比べると少なくなります。借入による資金調達か新株発行による資金調達かは関係なく、知的財産によるすべての種類の資金調達活動を妨げる障害は、評価です。

その価値が状況に依存しているという点において、知的財産は物理的な財産とは異なります。例えば、特許は本質的に独自の発明を保護するため、鉄鉱石のように一様な商品にはなり得ません。さらに、同じ知的財産でも、異なる企業にとってはその価値も変化します。1つの知的財産ポートフォリオは、一定の技術または市場地位を持つ企業にとっては価値があるかもしれませんが、その他の企業にとっては同じ知的財産ポートフォリオが無価値である場合もあります。知的財産の特定の一部分がそれだけでは無価値であっても、権利のポートフォリオの要素としては非常に重要となる場合もあります。普遍的に通用する、知的財産の標準的な評価方法はありません。

知的財産資産の保有は個別の市場で活動している特定の企業に限定されるため、提示されるすべてのアプローチおよび戦略は、そのような状況固有の問題に対応することが必要不可欠です。

知的財産権の評価、流動性および権利行使可能性に関連する課題もまた、借入による資金調達における担保として知的財産を利用する際の大きなハードルです。銀行規制のように、知的財産に基づく借入による資金調達に特有の障害もあります。バーゼルIIIのような基準は、特定の種類の担保に関連するリスクに合わせて、銀行が引当てる必要のある資本の額に関する要件の厳格なフレームワークを規定しています。知的財産はこの基準を満たさない可能性があります。ベンチャー向けの資金提供者は企業とその将来性全体を見ますが、貸出による資金提供者は、担保つまり知的財産のみを評価します。これは、初期段階に留まっている知的財産を裏付けとする借入による資金調達よりも、新株発行に基づく知的財産による資金調達が、現在のところ成功している理由を説明する重要な要因かもしれません。

提言

知的財産権を保険の手段と単純に考えるのではなく、資金を得るためのツールとしてより広く捉えれば、企業がイノベーションのための資金調達に知的財産を活用する機会は多く存在します。知的財産システムの機能と、企業が保有する様々な種類の知的資産および知的財産権の潜在的価値の正しい理解、ならびに優れた知的財産管理のスキルが成功へのカギです。知的財産による資金調達の一部の利用には、実行に際して大きな課題があることは明らかですが、コンソーシアム契約における知的財産のような他の利用は、未開拓の可能性をもたらします。

このような状況の下、政策当局者や企業に一連の方策を提言することができるかもしれません。企業による知的財産監査の利用を推進して、彼らの知的財産権の価値に対する全体的な認識を高めることもその1つです。また、協力的な環境で知的財産権を活用するための、特に (金融) 仲介者のノウハウを改善する方策の実行も含まれます。知的財産による資金調達市場の改善方法は、失敗を避けるために注意して策定する必要があります。単純な電子市場は、特定の資産クラスとしての知的財産権の複雑さに対処することはできないと思われます。結局のところ、知的財産資産の保有は個別の市場で活動している特定の企業に限定されるため、提示されるすべてのアプローチおよび戦略は、そのような状況固有の問題に対応することが必要不可欠です。

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