WIPO調停規則

(2016年1月1日より施行)

目次  
用語定義 第1条
規則の適用範囲 第2条
調停の開始 第3条-第6条
調停人の選任 第7条-第8条
当事者代理および協議参加 第9条
調停の実施 第10条-第13条
調停人の役割 第14条
秘密保持 第15条-第18条
調停の終了 第19条-第21条
実施手数料 第22条
調停人手数料 第23条
予納金 第24条
費用 第25条
免責 第26条
名誉毀損訴権の放棄 第27条
出訴制限法の下における期間の中断 第28条

用語定義

第1条

本規則において、

「調停合意」とは、当事者間で既に発生し、または将来発生するかもしれない紛争について、そのすべてまたは一部を調停に付託する旨の当事者間の合意のことをいう。調停合意は、調停条項を契約の中に盛り込む方式によっても、別個の契約という方式によっても可能である。

「調停人」とは、単独の調停人、あるいは2名以上の調停人が選任されている場合にはそのすべての調停人を含むものとする。

「WIPO」とは、世界知的所有権機関のことをいう。

「センター」とは、WIPO仲裁調停センターのことをいう。

文脈によっては、単数形で用いられている用語が複数形の意味を含み、また複数形で用いられている用語が単数形の意味も含むものとする。

規則の適用範囲

第2条

調停合意において、WIPO調停規則に基づく調停が規定されている場合には、本規則はその調停合意の一部を構成するものとみなされる。当事者が別段の合意をしていない限り、調停の開始日において効力を有する本規則が適用されるものとする。

調停の開始

第3条

(a) 調停合意の当事者であって、調停の開始を望む当事者側は、センターに対して書面にて調停申立書を提出しなければならない。当該当事者は、同時に相手方当事者に対して調停申立書の写しを送付しなければならない。

(b) 調停申立書には次のすべての事項を記載するか、またはこれを記載した文書を添付しなければならない。

(i) 紛争の当事者および調停申立書を提出する側の代理人の氏名および住所、ならびに電話、電子メールその他の連絡方法

(ii) 調停合意の写し

(iii) 紛争内容についての簡単な記述

第4条

(a) 調停合意が存在しない場合、紛争を調停に付託することを望む当事者側は、センターに対して書面にて調停申立書を提出しなければならない。当該当事者は、同時に相手方当事者に対して調停申立書の写しを送付しなければならない。当該調停申立書には、第3条(b)(i)および(iii)項に定められた事項と同じ事項が含まれなければならない。センターは、当事者による調停申立書の検討を補助することができる。

(b) 当事者の申立てにより、センターは、当事者による調停申立書の検討を補助するための外部中立者を選任することができる。当該外部中立者は、当事者すべての合意により、紛争の調停人となることができる。この場合においては、第15条から第18条までの規定が準用されることとする。

第5条

調停の開始日は、調停申立書がセンターによって受理された日とする。

第6条

センターは当事者に対して直ちに、調停申立書の受理および調停開始日を書面にて通知するものとする。

調停人の選任

第7条

(a) 調停人となる者または調停人を選任する別段の手続について当事者の別途の合意がない限り、調停人は以下の手続に従って選任されるものとする。

(i) センターは、各当事者に同一の候補者リストを送付する。リストには、通常少なくとも3名の候補者の氏名がアルファベット順に記載されるものとする。リストには、各候補者の資格に関する記述が記載または添付されるものとする。当事者間で仲裁人の特別な資格について合意のあるときは、リストにはかかる資格を満たす候補者の氏名が含まれるものとする。

(ii) 各当事者は、選任に異議ある候補者の氏名を削除する権利を有し、残りの候補者に優先順位の番号を記載しなければならない。

(iii) 各当事者は、リストを受領した日から7日以内に、マークを付したリストをセンターに返送しなければならない。その期間内にマークを付したリストを返送しなかった当事者は、リストに現れているすべての候補者に対して同意したとみなされる。

(iv) 当事者からのリストの受領後、またはこれがなされないときは前号に定めた期間の経過後、センターは、可及的速やかに、当事者によって表明された優先順位および異議を考慮して、リストから調停人となる者を選任する。

(v) 返送されたリストの中に、双方の当事者にとって調停人として受け入れられる者がいないときは、センターが調停人を選任する権限を有するものとする。同様に、センターによる調停人としての招待をその者が受諾することができないかもしくは受諾することを希望しない場合、またはその者が調停人となることを妨げるその他の理由が存在するように見える場合であって、かつ、リストに双方の当事者にとって調停人として受け入れられる者が残っていない場合にも、センターは調停人を選任する権限を有するものとする。

(b) (a)項の規定にかかわらず、センターは、(a)項の手続が当該事件に適当でないとその裁量で判断するときは、調停人を選任する権限を有するものとする。

(c) 調停人として選任された者は、選任を受諾することにより、調停が迅速に実施され得るように十分な時間を割くことにつき同意したものとみなされる。

第8条

調停人は、中立、不偏かつ独立でなければならない。

当事者代理および協議参加

第9条

(a) 当事者は、調停人との協議において、代理人を立て、または補助者を伴うことができる。

(b) 調停人の選任の後直ちに、当事者を代理する権限を与えられた者の氏名および住所、ならびに当事者を補助するために調停人と当事者との協議に参加する者の氏名および地位が、当該当事者により、相手方当事者、調停人およびセンターに対して通知されなければならない。

調停の実施

第10条

調停は当事者が合意した方法で実施される。これについて当事者が合意しない場合、かつその限りにおいて、調停人は、本規則に従い調停が実施されるべき方法を決定するものとする。

第11条

各当事者は、調停が可能な限り迅速に進められるように、誠意をもって調停人に協力するものとする。

第12条

調停人は、自由に各当事者と別個に会合を持ち、あるいは通信することができるものとする。その際、当該会合および通信において提供された情報は、当該情報を提供した当事者の明示の許諾なくしては相手方当事者に開示されないとの、明確な了解があるものとする。

第13条

(a) 調停人は、選任された後可及的速やかに、当事者との協議を経て、調停人および相手方当事者に対する陳述書提出のための日程表を作成するものとする。この陳述書には、紛争の背景や、紛争に係る当事者の利害および主張、ならびに現在の紛争状況に関する要約が記載されるものとする。この陳述書に添えて、調停目的のために当事者が必要であると考えるその他の情報や資料、とりわけ争点を明らかにするために必要であると考える情報や資料もまた提出されるものとする。

(b) 調停人は、調停実施中のいつの時点でも、調停人が有用と考える情報または資料を追加的に提出するように、当事者に示唆することができる。

(c) いずれの当事者も、いつの時点においても、自らが秘密にしておきたいと考える書面による情報や資料を、調停人のみによる考慮を求めて、調停人に提出することができる。調停人は、当該当事者の書面による許諾なくしては、相手方当事者に対して当該情報ないし資料を開示してはならない。

調停人の役割

第14条

(a) 調停人は、自らが適当であると信じるあらゆる方法をもって、当事者間の争点の解決を図るものとする。但し、当事者に対して解決策を強制する権限は何ら有しない。

(b) 調停人は、当事者間の紛争のいずれかの争点が調停による解決になじまないと信じる場合には、紛争状況や当事者間の取引関係にかんがみ、その争点を最も有効かつ安価で実りある解決に導く可能性が高いと考える争点解決手続ないし手段を提案し、当事者の考慮を求めることができる。調停人は、とりわけ次のいずれかの提案をすることができる。

(i) 一つまたは複数の特定の事柄についての、専門家による決定

(ii) 仲裁

(iii) 各当事者による和解最終提案の提出、および調停を通じての和解が成立しない場合、当該最終提案に基づく仲裁の実施。但し、その仲裁手続においては、仲裁廷の任務はいずれの最終提案を採用するかの決定に限定される。

秘密保持

第15条

当事者と調停人との間のいかなる協議についても、一切記録を残さないものとする。

第16条

調停に関与する者(とりわけ調停人、当事者、その代理人および助言人、独立の専門家、その他当事者と調停人との協議に出席したすべての者を含む)は調停の秘密を尊重するものとし、当事者および調停人による別段の合意がない限り、調停に関しまたは調停の過程で取得されたいかなる情報をも使用しまたは外部の第三者に開示してはならない。これらの者はそれぞれ、調停に参加するに先だって、適当な秘密保持を確約する旨の文書に署名しなければならない。

第17条

当事者間に別段の合意がない限り、調停に参加した者は、調停の終了に際して、当事者により提供されたすべての摘要書、書類およびその他の資料を、写しを保持することなく元の提供者に返還しなければならない。当事者と調停人との協議につき作成された記録類がある場合には、調停の終了時に破棄されるものとする。

第18条

当事者間に別段の合意がない限り、調停人および当事者は、裁判手続または仲裁手続において、以下のものを、証拠としてであれその他のいかなるものとしてであれ、提出してはならない。

(i) 紛争についてのあり得る解決策として当事者により表明された見解または提示された示唆

(ii) 調停の過程において当事者によりなされた承認

(iii) 調停人によりなされた提案ないし表明された見解

(iv) 当事者が、調停人または相手方当事者によりなされた和解提案を受諾する意思を示したか否かという事実

調停の終了

第19条

調停は以下のいずれかの場合に終了する。

(i) 当事者間の争点の一部またはすべてに関して、当事者が和解合意文書に署名した場合

(ii) 調停における一層の努力によっても紛争が解決される見込みがないと調停人が判断し、調停人がそのように決定する場合

(iii) 当事者と調停人との最初の協議の上で、いずれか一方の当事者が、書面によりその旨を表明する場合

第20条

(a) 調停の終了に際して、調停人は速やかにセンターに対して調停が終了した旨を書面で通知し、調停が終了した日付、調停によって紛争解決がもたらされたか否かの事実、解決がもたらされた場合にはその解決が全面的なものか部分的なものかについて示さなければならない。調停人は、センターへの通知の写しを当事者にも送付するものとする。

(b) センターは、調停人による上記通知を秘密裡に保持し、当事者の書面による許諾なくしては、いかなる者に対しても調停の存在について、またその内容について、開示してはならない。

(c) しかしながら、センターは、その活動について公表する集計的な統計データの中に、当該調停に関する情報を含めることができる。但し、そのような情報は、当事者を明らかにし、または特定の紛争状況を明らかにするものであってはならない。

第21条

裁判所による求めがある場合、または当事者の書面による許諾がある場合を除き、調停人は、当該紛争対象に関する現在または将来のいかなる手続においても、それが裁判であるか仲裁であるかその他の手続であるかに拘わらず、調停人として以外のいかなる資格においても活動してはならない。

実施手数料

第22条

(a) 調停の申立にあたっては、センターに対して実施手数料が支払われなければならない。実施手数料の額は、調停申立日に適用される手数料表に従って決定されるものとする。

(b) 実施手数料は返還されないものとする。

(c) 実施手数料が支払われるまでは、センターは調停申立に対していかなる措置をもとらない。

(d) 調停の申立を行った当事者が、センターからの書面による督促から15日以内に実施手数料を支払わなかった場合には、当事者はその調停の申立を取り下げたものとみなされる。

調停人手数料

第23条

(a) 調停人手数料の額および通貨ならびにその支払の方法および時期については、調停人および当事者との協議の上、センターが定める。

(b) 手数料の額は、当事者および調停人の間で別段の合意がある場合を除き、調停申立ての日に適用される手数料表に定められている1時間当たり、もしくは適当であれば1日当たりの指標レートに基づき、係争額、紛争内容の複雑さ、およびその他の関連する一切の事情を考慮して計算されるものとする。

予納金

第24条

(a) センターは、調停人の選任に際して、調停の費用(とりわけ、予想される調停人手数料やその他の調停費用を含む)に見合う額を、前払金として予納するように各当事者に求めることができる。予納額はセンターによって決定される。

(b) センターは、各当事者に追加的な予納金を求めることができる。

(c) 当事者が、センターからの文書による督促から15日以内に求められた予納金を支払わなかったときは、調停は終了したものとみなされる。センターは、書面によりその旨を当事者および調停人に通知し、終了の日を示すものとする。

(d) 調停終了の後、センターは、受領した予納金についての精算報告書を当事者に提出するとともに、未使用額については当事者に返還し、また不足額については当事者に支払いを求めるものとする。

費用

第25条

当事者間に別段の合意がある場合を除き、実施手数料、調停人手数料、およびとりわけ調停人に支払うべき旅費や専門家の助言を得るために必要とした費用を含むその他の調停費用は、当事者が均等に負担するものとする。

免責

第26条

故意の不法行為による場合を除き、調停人、WIPOおよびセンターは、いかなる当事者に対しても、本規則の下で実施された調停に関するいかなる行為または不作為についても責任を負わない。

名誉毀損訴権の放棄

第27条

当事者および選任を受諾した調停人は、調停の準備ないし実施の過程において自らまたはその代理人によって使用された書面または口頭によりなされたいかなる陳述あるいは発言をも、名誉毀損、文書による名誉毀損、口頭による名誉毀損、その他これに類する申立を内容とする訴訟の基礎としたり、あるいはこれを維持したりする際に持ち出すことができないものとすることに同意する。本条は、そのような訴えに対する抗弁として援用することができる。

出訴制限法の下における期間の中断

第28条

当事者は、準拠法により認められる限りにおいて、出訴制限法またはこれに相当する規則の下における期間の経過が、調停開始日より調停終了日までの間、調停の対象たる紛争に関して中断することに合意する。