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WIPO Arbitration and Mediation Center

紛争処理パネル裁定

Villa Valentina S.r.l. 対 Whois Privacy Protection Service by Value-Domain / Naoki Sonehara

事件番号 D2013-0063

1. 紛争当事者

[紛争処理手続において用いられた申立人と被申立人の氏名]

申立人Villa Valentina S.r.l. of Cerbara (PG), Italy, represented by Studio Turini, Italy.

被申立人Whois Privacy Protection Service by Value-Domain of Osaka, Japan / Naoki Sonehara of Tokyo, Japan.

2. ドメイン名および登録機関

紛争の対象であるドメイン名:<villavalentina.net> 本件ドメイン名の登録機関:GMO

3. 手続の経過

本件申立書は、2013年1月11日にWIPO仲裁調停センター(以下「センター」)へ提出された。センターは、2013年1月11日に電子メールにより本件ドメイン名の登録確認を登録機関GMOに要請した。2013年1月16日にGMOは電子メールにより、申立書に記載された被申立人および連絡先と異なる当該ドメイン名登録者名と連絡先情報を開示した。センターは申立人に対して、2013年1月17日に登録機関により開示されたドメイン名登録者および連絡先情報を電子メールにて通知し、申立人に対して、申立書を訂正することができると案内した。申立人は申立書の補正書を2013年1月21日に提出した。

2013年1月17日に、センターは、英語による申立て書が提出されたが、センターが登録機関から通知された情報によれば、登録契約書は、日本語で記載されていることを、両当事者に対して通知した。これに応じて、申立人は、手続言語を英語とすべきとする要求書を、2013年1月21日に提出した。登録者は、2013年1月20日および23日に、意見書を提出した。センターは、本件状況に鑑みて、申立書は、日本語に翻訳されるべきであったものであり、統一ドメイン名紛争処理方針の規則11項に従い、パネルが指名された段階で手続言語がパネルによって決定されることを、両当事者に通知した。申立人は、2013年2月1日に日本語に翻訳された申立書を提出した。2013年2月6日に、被申立人がセンターに対して電子メールを送信したことを受けて、センターは、同日、両当事者に和解交渉を促した。2013年2月8日に、申立人は、被申立人との間の和解を模索するために、手続の一時停止を申し立てた。そこで、2013年2月11日、センターは、手続を一時停止した。その後、2013年4月12日に申立人は、手続の再開を申し立てた。

センターは、センターは、申立書が補正された申立書と申立書の翻訳と一体として、統一ドメイン名紛争処理方針(以下「処理方針」)、統一ドメイン名紛争処理方針手続規則(以下、「手続規則」)およびWIPO統一ドメイン名紛争処理方針補則 (以下,「補則」)における方式要件を充足していることを確認した。

手続規則第2条(a)項および第4条(a)項に従い、センターは本件申立を被申立人に通知し、2013年4月13日に紛争処理手続が開始された。手続規則第5条(a)項に従い、答弁書の提出期限は2013年5月7日とされた。被申立人は答弁書を提出しなかった。両当事者は、2013年4月18日と19日に、電子メールを交換した。2013年5月10日に、センターは、パネリスト指名手続に進んだことを両当事者に通知した。

センターは、佐藤恵太を単独のパネリストとして本件について、2013年5月23日に指名した。紛争処理パネルは、同パネルが正当に構成されたことを確認した。手続規則第7条の要請に従い、紛争処理パネルはセンターへ承諾書および公平と独立に関する宣言を提出した。

本件パネルは、本件ドメイン名の登録が日本語により記載された合意条件に基づいて締結されていることを理由として、本件手続言語を日本語と決定した。センターからの通知に対して、2013年1月20日に被申立人は、英語を拒否し、手続言語は日本語が望ましいという電子メールをセンターに対して送信した。申立人は、2013年1月13日に手続言語を英語とする要求書を提出しているが、このような状況下で、パネルは、手続言語につき特別の取り扱いを必要とする理由を見いだせなかった。

4. 背景となる事実

申立人Villa Valentina S.r.l.(ヴィラ・ヴァレンティナ有限責任会社)は、Studio Turini を本件代理人として指名している、イタリアの会社であって、ペルージャ県セルバラを本店所在地とする。同社は、2004年2月14日から、「Villa Valentina」社と名乗っている。

申立人は、商標「Villa Valentina country & health」を、商標分類29類、30類、33類、43類および44類について2008年6月18日に、イタリア特許商標庁(UIBM)において商標登録している(登録番号0001119544)。他方、商標「Villa Valentina」は、43類および44類について、2010年2月11日に、Savignani G.によってイタリア特許商標庁において商標登録された(登録番号0001245072)。このように、商標「Villa Valentina」は、第三者に商標登録されているが、申立人は、商標「Villa Valentina」及びこれに関連するドメイン名について、全世界を対象とした排他的使用許諾を得ている(申立書付属書類7号として、当該商標権者によって発行された2013年1月10日付の証明書が添付されている)。

被申立人である曽根原ナオキ(証拠から漢字不詳のため、名は発音のカタカナ表記とする)は、東京に拠点を有する個人である。非申立人は、ドメイン名「villavalentina.net」の登録者である。同登録は、2012年3月5日になされた。

5. 当事者の主張

A.申立人

申立人は、名称「Villa Valentina」が、同社の社名であって、観光リゾート地の名称であることから、イタリアだけでなく、外国においても著名であると主張している。また、申立人は、「Villa Valentina」が商品販売ならびにスポンサーとして使用されていると主張し、その証拠として、「villavalentina.net」ロゴが襟に付されたシャツの写真を提出した(申立書付属書類8号)。これらの事実をもとに、申立人は、本件ドメイン名と申立人の商標が同一であると主張している。

第二に、申立人は、本件ドメイン名について被申立人が権利または正当な利益を有しないと主張し、その理由として、「被申立人が申立人ないし名称「villavalentina」の保有者から、使用権原や使用許諾およびその他のいかなる許諾をも与えられておらず、また、いかなる状況下にあっても当該商標を含むドメイン名の登録出願を認めていない」と主張する。この主張は、申立人が排他的使用許諾を得ていることが本件ドメイン名について被申立人が権利も正当な利益も有していないことの一応確からしい証拠(prima facie)となるという、Media west 対Moniker Privacy Service/Forum LLC/Registrant(187640)info@gashionid.com事件WIPO裁定(WIPO裁定D2006-0478号)に示された見解に基礎を有している。そして、申立人は、申立人自らが商標「Villa Valentina」の権利者であり、排他的使用許諾を得ているライセンシーであるから、被申立人は、権利と正当な利益を有さないと主張する。

第三に、申立人は、被申立人が、当該ドメイン名を登録する以前から当該商標の登録と使用を「現に知り、または知るべきであった」と主張している。その主張の理由は、権利者を害する可能性のある悪意ある行動を繰り返し、自己のアイデンティティを隠して、権利者を害する意図がない正当な使用を妨げている、という点である。申立人が提出したwhois検索の結果によれば、申立人は、277件のドメイン名登録をしている(申立書付属書類第2号)。また、申立人は、被申立人のドメイン名に結び付けられたウエッブサイトのスクリーンコピーを証拠として提出し、それが全く何もコンテンツを有しないことを明らかにしている(ただ、「to be prepared, sorry」と記載するのみである。申立書付属書類第10号参照)。

加えて、申立人は、申立人こそがもともと「villavalentina.net」の登録者であったが、その登録手続を仲介したサービスプロバイダであるGestinweb社が、当該ドメイン名の買戻し期間中に支払いを怠ったと主張している。しかしながら、申立人は、この主張に沿う証拠を全く提出していない。

以上の理由によって、申立人は、本件ドメイン名を申立人に移転することを求めた。

B. 被申立人

被申立人は、答弁書を提出しなかったが、センターに対して2通の電子メールを送信した。2013年2月6日付の第一の通信には、「訴状の内容を拝読致しました。悪意を持って、本ドメインを取得したわけではありませんので、ご指摘が当たらない点も多々ございますが、お困りのようですので、今回は譲渡させて頂きたいと思います。何卒よろしくお願い申し上げます。」と記載されていた。この電子メールを送信した時には、すでに被申立人は、申立書の日本語翻訳版を読んでいた。第二に、被申立人は、手続が再開された後の2013年4月18日付でセンター宛てに送信された第二の電子メールでは、「お世話になっています。曽根原です。本件に関しては、ドメインの無償譲渡ということで、和解しているかと思います。よろしくご確認ください。」と述べている。

6. 審理および事実認定

本パネルは、被申立人が、申立書において明示的に求められた本件ドメイン名を申立人に移転するという救済について、すでに承諾していると認定する。被申立人の承諾は、上記5.B.において言及された2013年2月6日および4月18日に送信された電子メールに、明確に述べられており、その承諾はドメインを無償譲渡するという内容である。そのために被申立人は、主張と根拠づける称呼を全く提出しなかったと思われる。そのような事情であるから、本パネルは、当該ドメイン名について本方針4条(a)項に規定された要素に適合するかどうかを本件状況について詳論する必要性がないという見解を採用する。本パネルは、The cartoon network LP,LLP 対 Mike Morgan事件WIPO裁定(WIPO裁定D2005-1132号)のパネルが採用した次の見解とその理由付けを、全面的に採用する。すなわち、「本パネルは、被申立人が移転を偽りなく片務的に合意したことによって、4条(a)項の要件を判断せずに移転裁定をすぐに命じる根拠が認められる。申立人がドメイン名の移転を求め、被申立人が移転を承諾すれば、規則10項に基づき、パネルは、移転命令をすることにすぐさま進むことができる。このようにすることが、最も迅速な方法であることは明らかである。」

WIPO(世界知的所有権機関)『UDRPに関するいくつかの問題に関するWIPOパネルの見解第2版』4.13項1によると、WIPOパネルのなかには、これと異なる見解を採用するものがあるという。しかし、本件の状況のもとでは、以下に示す2つの理由から、さらに詳細な要件判断を経なければならない特別の理由を見出すことができない。すなわち、第一に、移転裁定をすぐにすることが、両当事者の意図に合致しているからである。また、第二に、本件両当事者の間に、第三者を害する「明確に濫用的な」意図が存在しないと思われるからである。

第1点について述べると、本件の経緯が示す通り、本件の背景にかなり特異な事情が存することを指摘することができる。というのは、申立人はイタリアの会社であり、代理人もイタリアに本拠を有する弁護士事務所であって、イタリア語と英語を用いている。他方、被申立人は、日本語のみを認識するようである。すなわち、相互に意思疎通するためには、言語の障壁が存在するように思われる。そして、被申立人が何かの理由のために、ドメイン・プライバシーサービスを用いているという事実が認められ、これらの事情からすると、申立人が被申立人に到達し、和解交渉を行うことは難しいであろう。驚くべきことに、手続が再開された後、被申立人がセンターに送信した電子メールには、我々は無償で本件ドメイン名を移転することに既に合意しているはずだ、と述べているのである。本件のように、申立人と被申立人に大きなコミュニケーションギャップないし言語障壁が存するために、申立人と被申立人の意思疎通が難しいと思われる場合には、パネルは、本方針4条(a)項の条件を満たしているかどうかを判断することなく、ドメイン名移転裁定を出す権限を有していると考えられる。手続が再開した後、両当事者の意図がどのようであったかを、当パネルは知っている。本件の如きこのような事情において、もしパネルが申立人の救済申し立てを棄却するとすれば、両当事者は再び言語障壁に直面する局面に戻らなければならなくなる。このことは、パネルの裁定が、申立人と被申立人の紛争を解決することに全くならないことが明らかであり、それは両当事者にとって、時間と労力の無駄使いに他ならない。

さらに、第二点について本件パネルは、以下の見解を採用する。すなわち、既に説明したとおり、パネルのなかには、いかなる場合であっても本方針4条(a)項の3要件を審理すべきであるという見解をとるものもある。そのような見解を採用する理由は、おそらく、3要件を審理することなしに移転裁定をパネルが決定すると、第三者の権利が害されるおそれが強いというところにあると考えられる。しかし、そのような危険性は、少なくとも本件に関する限り全く存在しない。なぜなら、本件において移転裁定が必要なのは、単にコミュニケーションギャップを埋めるために必要だからというだけであって、申立人が移転裁定を求めるのも、違法に第三者の権利を害することを目的とした行為とは考えられないからである。申立人と被申立人の間に、「明確に濫用的な」第三者を害する意図を発見することができない場合には、3要件を判断することなしに、ドメイン名登録の移転又は取り消し裁定をすることができると考えるべきである。本件においては、申立人は、イタリアで登録された商標「Villa Valentina」の排他的使用許諾を得ており、そのことから、ドメイン名「villavalentina.net」を登録することに一定の理由が認められる。このような状況において、「先願主義(first to register)」の考え方は、基本的に第1の登録者にも第2の登録者にも等しく適用されるべきであり、それは、先願主義が、自由経済原則に則っているからである。本件紛争のような状況において、もし濫用的意図が本件ドメイン名の移転について認めることができない、もしくは、特に申立人と被申立人が共同して同一の濫用的意図(当事者以外の第三者を害する意図)を有していないことが明らかであると認められる場合には、パネルは、移転裁定をすぐにすることができると考えられる。このように考えることは、ドメイン名の仕組みが「先願主義」の考え方に沿った解決策となる。もちろん、申立人の登録は、本件被申立人以外の第三者との関係で新たな紛争を生じる可能性は存するが、それは本件と異なる問題である。

以上の通り、6項第1段落において述べた通り、パネルは、3要件をさらに詳論することなく、本紛争の対象となるドメイン名の移転を命じる裁定を、決定する。

7. 裁定

以上の理由により、処理方針第4条(i)項および手続規則第15条に従い、紛争処理パネルは当該ドメイン名<villavalentina.net>を申立人へ移転することを命じる。

佐藤恵太
パネリスト
日付: 2013年6月6日


1 https://www.wipo.int/amc/en/domains/search/overview2.0/index.html