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オリンピック・パラリンピックを支援するスポーツ関連技術やスポーツ用支援機器の技術動向

2021/09/02

8月下旬、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で1年間延期されていた2020年オリンピック大会の開催に続き、東京2020パラリンピックも開会しました。

開会式の最終点火者は車いすテニスの上地結衣選手、ボッチャの内田峻介選手、パワーリフティングの森崎可林選手のパラアスリート3人が務めた。(写真: imagecomms 2021©)

桜の花びらからインスピレーションを受け、世界がひとつになるよう平和の願いが込められてデザインされたトーチを手にした数々のランナーにより運ばれた聖火は、最後、車いすテニスの上地結衣選手、ボッチャの内田峻介選手、パワーリフティングの森崎可林選手の3人のパラアスリートに託され、聖火台へと灯されました。 聖火リレートーチデザイナーのインタビューはこちら

東京2020のパラリンピックでは夏季競技として22競技が行われますが、その多くの競技で障害者をサポートする様々な支援機器が利用されています。

支援機器の世界の技術動向、堅調な日本

WIPOは2019年から世界の技術動向を分析した「Technology Trends」という出版物を公表しています。その第2号としてテーマを「Assistive Technology(支援機器)」に定め2021年3月に公表いたしました(報告書の要旨は日本語でもご覧いただけます)。

障害者や高齢者を含むさまざまな人が、移動、聴覚、視覚、セルフケア、コミュニケーション、認知、建造環境へのアクセスや移動に関連する制限を経験しています。 支援製品は、このような制限の中で、生活のあらゆる場面で最大限の可能性を発揮し、自立、自給自足、尊厳、自己実現に貢献することを目的としています。国連の障害者の権利に関する条約(CRPD)は、支援技術へのアクセスを人権として認めており、世界保健機関をはじめとするさまざまな国連機関は、支援製品へのアクセス向上に向けて取り組んでいます。WIPOの報告書は、様々なステークホルダーが技術的ソリューション、トレンド、主要なプレイヤー、新興プレイヤー、競合他社、潜在的な協力パートナー、そして既存の市場と潜在的な市場を特定できるような知識のデータベース(ナレッジベース)を作成することで、これらの取り組みに貢献することを目的としています。

支援技術は、古代エジプトの時代から存在しており、車椅子や眼鏡などの定評ある製品から、外骨格、脳とコンピュータのインターフェースを利用した機器の制御、健康や感情をモニターするウェアラブル機器などの最先端のソリューションまで、幅広くカバーしています。「Technology Trend」では、人々の機能制限を7つの領域に分け、さらに、従来からの支援技術新しい支援技術 の両方の側面から調査しています。また、新たな支援技術がどの程度市場に近いかも調査し、その技術的な準備レベルを評価しています。また、新しい支援機器を生み出し、さまざまな分野で使用されている、いわゆる実現技術(enabling technologies)を9つ特定しています。

  • AI(人工知能)
  • ブレイン・コンピュータ・インターフェース/ヒューマン・マシン・インターフェース
  • IoT(モノのインターネット)
  • 3Dプリント(Additive Manufacturing)
  • 新素材
  • 高度なロボット工学
  • 高度なセンサー
  • VR、AR
  • 自動運転車(Autonomous vehicles)

従来からある建造環境用の支援機器については、スポーツ・レジャー用支援機器のカテゴリー(図1)と、その下に、スポーツ用支援機器のサブカテゴリー(図1の上から2つ目)を設けて分類しました。後者のサブカテゴリーの内訳としては、水泳やゴルフに関連する発明が多く、次いでウィンタースポーツとなっています(図2)。パラリンピックとスポーツ用車椅子のサブ・サブカテゴリーには、そこまで多くの出願がありません(パラリンピック:44特許ファミリー、スポーツ用車椅子:117特許ファミリー)。しかし、パラリンピックのカテゴリーについては、東京2020パラリンピック競技大会にちなみ、日本を中心に特に2017年以降の特許出願件数が多くなっています(2017年:9特許ファミリー(うち日本は6)、2018年:6特許ファミリー(うち日本は2))。

図1:文化・娯楽・レジャー用の支援製品に関して、特許文書で言及されている活動の種類別内訳

図2:スポーツ用支援機器が言及された特許ファミリー数をスポーツやカテゴリー別に計数

また、パラリンピックのスポンサーでもあるトヨタ自動車、パナソニック、Otto Bockがモビリティ分野の特許出願人トップ5に名を連ねていることには注目です(図3、4)。スポーツやパラリンピックで使用される多くの補助器具が、モビリティ分野における義肢・装具やその他の車椅子という分類に含まれます。

図3:従来からの支援技術のモビリティ分野における出願人トップ5

図4:新たな支援技術のモビリティ分野における出願人トップ5

また、日本は、本レポートの多くの領域において、特許出願の申請が多い知財庁ランキングで3位か4位に位置しています。しかし、とりわけスポーツ用支援技術の分野においては、ほぼすべてのスポーツの種類とカテゴリーにおいて、日本が1位又は2位となっています(図5)。

図5:スポーツ関連の支援技術の各国知財庁における特許出願受理数(スポーツの種類別)

スポーツ支援技術分野のイノベーターを見てみると、この分野は独立した発明者の割合が最も高い(61%)分野であり、大手企業は多く存在せず、より細分化された市場となっています。日本企業の活動も活発です。

本レポートの詳細な内容については、本誌 、又は、2つのインタラクティブダッシュボード(従来からの支援技術新たな支援技術)も御覧ください。

日本国特許庁の技術動向調査から見た、スポーツ関連技術の技術・知財動向、今後の展望

日本国特許庁では、東京オリンピック・パラリンピック2020を控えた2020年2月、スポーツ関連技術に関する特許文献や研究開発論文等の解析を行い、有識者からなる委員会での助言等を踏まえ、報告書を公表しました。

本報告書では、スポーツICT市場規模が急速に拡大している点などを踏まえ、スポーツや運動に関わる行動や状況に関するデータをセンサによって取得する「センシング」の技術、センシングデータや、スポーツ・運動をする人・みる人の行動履歴などのデータを分析・解析・処理する「解析」の技術、スポーツをより楽しく見るための映像・音響の編集・生成などの「提示」の技術、を中心に調査を行っています。各国・地域の2006年(優先日)以降の特許出願動向や研究開発動向等について、文献の読み込み調査を行い解析を行うことで、精緻な分析結果を提供しています。

本報告書の分析結果によれば、世界全体の本スポーツ関連技術分野の特許出願件数は増加傾向であり、特に、トレーニング管理や予防医療目的での特許出願が特に増加傾向であることが分かりました。

 また、本報告書によれば、近年、VR・AR観戦、VR・ARトレーニング、VR・ARスポーツなど、VR・AR技術が高い成長が見られており、これらの分野について、各国・地域ごとの特性の分析を行うとともに、「映像編集」や「音響生成」といった、スポーツを「みる」技術に関する詳細な解析も行っています。さらに、障害者スポーツに関連した解析では、球技や陸上競技といった分野と比較し、障害者スポーツに特化した技術に関する特許出願件数は少なく、研究論文数で見ると、欧州が他の地域よりも積極的であることが分かりました。

 本報告書では、スポーツ関連技術の今後の展望に関し、スポーツICT市場のさらなる拡大への期待、スポーツや運動以外への技術の転用、特に、人の運動の状態をセンシングする技術を、要介護者や運動機能障害を伴う疾病罹患者の運動機能の科学的測定に活用したり、疾病の早期発見、介護予防、認知症の方の見守りに活用したりすることへの期待が述べられています。

筋肉の機能を持つ、進化した義足を開発するスタートアップ

BionicM株式会社 代表取締役 CEO・情報理工学博士である孫小軍氏は、筋肉の機能を持ち、パワーが強化された最新の義足を開発しています。孫氏はWIPO日本事務所が開催する世界知的所有権の日記念オンラインイベント において登壇し、その開発中の義足の紹介や、知的財産の活用について語ってくださいました(動画を見る:25:39~)。

WIPO日本事務所主催世界知的所有権の日記念オンラインイベントのパネルディスカッション第一部に登壇する孫氏(写真:WIPO日本事務所)

孫氏は自身の経験をこう語ります。「9歳で病気によって右足を切断しましたが、当時住んでいた中国では義足が高価であったため義足を利用できず、15年間松葉づえで生活してきました。両親から「勉強するしかない」という風に言われ、ひたすらに勉強し大学に入学するとともに、10年前に交換留学生として日本に来ることができ、日本の福祉制度によって義足を利用しはじめました。」

孫氏は、義足を利用するうちにさらに良い義足の開発を目指すようになり、2018年に博士号を取得するとともに現在の会社を起業しました。BionicMではロボティクス技術の活用によって、これまでにない「筋肉」の機能をもつ「パワード義足」を実現しました。これは、動力を持たず、階段昇降に苦労したり、転倒しやすいなどの課題がある既存の受動式義足を進化させたものです。孫氏は現在、2021年末の製品化に向けて開発を加速しています。

ハードウェアとソフトウェアの両面の開発を行なうBionicMの知的財産の活用についても語ってくれています。東京大学での研究開発時から現在に至るまで、模倣されやすいハードウェアの構造部分に関しては積極的に特許出願しているとのこと。一方、ソフトウェアの部分に関してはあえて特許出願せず、ブラックボックス化されています。たとえハードウェアがコピーできても、BionicMのアルゴリズムがなければ動かすことができないからです。

最後に、孫氏の自身の経験から、困難があっても、マインドチェンジして自ら立ち向かい、それを乗り越えていくことで、必ずより大きいチャンスがやってくる、という強いメッセージも伝えくださいました。

この「パワード義足」によって、障害者の方々の生活の幅を広げるとともに、スポーツへの応用も期待されます。

全ての人がスポーツを楽しむための新たなイノベーションへの期待

スポーツ関連技術、及び、障害者のスポーツを支援する技術は確実に発展してきています。WIPOで行った調査では、日本でも、スポーツ関連の支援技術で多くの特許出願が見られました。今後はAI, IoT、高度なセンサー、ロボット工学、VR/AR等の最新技術を活用した新たなイノベーションも期待されます。