2025年6月27日、WIPO日本事務所は、国際シンポジウム「知的財産が拓く食の未来」を開催しました。
本シンポジウムでは、持続可能な食の未来の実現に焦点を当て、食料安全保障やサステナビリティ、農業・食品分野のイノベーションへの関心が世界的に高まる中、知的財産が果たす役割について議論しました。総勢810名(うち外国の方は104ヶ国から489名)の方に参加登録いただきました。
なお、本シンポジウム開催にあたっては、FIT/日本産業財産グローバルファンド(Funds-In-Trust Japan Industrial Property Global)による支援を受けています。
上段左側より:落合由佳氏(アナウンサー)、津村康博氏(国連世界食糧計画(WFP)日本事務所代表)、Pasakorn Niratbhand氏(Plant Origin社 CEO)
下段左側より:Simone Tsuneda氏(ブラジル農牧研究公社(Embrapa)Deputy Partnership Manager)、Peter Oksen (WIPO/Green Technology and Research Manager)、高見 博氏(世界銀行東京事務所 駐日特別代表)
本シンポジウムは4つのセグメントで構成され、第一部「世界が抱える食の課題」では、2020年にノーベル平和賞を受賞した国連世界食糧計画(WFP)の日本事務所代表の津村 康博氏が登壇し、食と農業をめぐる世界的な懸念の高まりについて講演しました。津村氏は、近年の気候変動や経済の不安定化、紛争、地域間格差といった要因が、飢餓や食品ロス、そして持続可能な解決策の必要性といった問題を一層深刻化させていることを強調し、現在の食料システムの現状とイノベーションやテクノロジーの役割や今後の展望について、非常に示唆に富む知見を共有されました。
第二部「食品テック革命:持続可能な未来へのイノベーション」ではタイのフードテック企業Plant Origin社 CEOのPasakorn Niratbhand氏とブラジル農牧研究公社(Embrapa)Deputy Partnership ManagerのSimone Tsuneda氏が、それぞれの革新的な取り組みを紹介しました。両氏は、フードテックが社会を支える重要な要素であることを強調し、ソリューションの拡大やパートナーシップの構築、さらには地域ごとの持続可能な食料システムへの貢献において、知的財産が果たす役割について語りました。
第三部「食のビジネス戦略:グローバル市場と知財の役割」ではWIPO Green Technology and Research ManagerであるPeter Oksenによる講演で、WIPO GREENプラットフォームの概要とともに、各地の農家が抱える課題と、それに対する革新的な技術のマッチメイキングを促進するプロジェクトの重要性について紹介がありました。
続いて、途上国の貧困削減や社会開発を支援する世界銀行東京事務所 駐日特別代表の高見博氏より、農業・食料分野における世界銀行の開発支援(品種改良、食育、インフラ整備等)に関する取り組みが紹介されるとともに、地理的表示(GI)の保護が地域の特色を活かした農産物のブランド化に果たす役割と、その意義についても論じられました。
イベントの締めくくりには、一般社団法人日本食品・バイオ知的財産権センター(JAFBIC)理事長の竹本一志氏とWIPO日本事務所、澤井智毅所長 による特別対談が行われました。竹本氏は、フードテックを通じて実現される持続可能な未来の可能性や、和食の価値、伝統的な食文化に秘められた可能性について語り、またオープンイノベーションの促進や効果的なブランディング戦略の構築における知的財産の重要な役割についても見解を共有しました。
左側より:竹本 一志氏(一般社団法人日本食品・バイオ知的財産権センター(JAFBIC)理事長)、澤井 智毅(WIPO日本事務所長)
本シンポジウムでは、実際の取り組みや戦略的な示唆が共有され、持続可能な食料システムの発展において知的財産が果たす重要な役割が改めて強調されました。WIPO日本事務所は、社会の未来にとって極めて重要なこの分野において、今後も対話と連携の促進に一層努めてまいります。
各講演のアーカイブ動画は今後こちらに掲載予定です。