PCTニュースレター 05/2007: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
実務アドバイス(国際出願の欠落要素及び欠落部分の後の提出)
Q: 最近、国際出願を出願したのですが、うっかり明細書の何頁かを付け忘れてしまいました。当該出願は 2006 年 4 月 25 日に出願した先の国際出願に基づいて優先権を主張しています。最初に記録された(2007 年 4 月 4 日)国際出願日に影響することなく、欠落頁を提出することは可能でしょうか。もし、可能であれば、どのようにすればよいのでしょうか。
A:国際出願の欠落要素及び欠落部分の引用による補充に関する PCT 規則の改正(2007 年 4月 1 日発効)によって、所定の用件(詳細は以下を参照)を満たせば、国際出願日に影響することなく明細書の欠落頁を提出可能となりました。PCT 第 11 条(1)(ⅲ)(d) 又は (e) に関する国際出願の要素(つまり、明細書全体又は請求の範囲全体)又は、国際出願の部分(つまり、明細書の部分、請求の範囲の部分、図面頁の部分又は全体)が先の出願に完全に含まれている場合に、改正された PCT 規則 20 によって、誤って付け忘れてしまった当該要素及び部分を国際出願日に影響することなく含ませることが可能です。これらの改正は 2007 年 4月 1 日に発効しました。そして、その日以後に出願された国際出願に適用されます。(なお、PCT 第 11 条(1)(ⅲ)に関する一つ以上の要素が受理官庁によって 2007 年 4 月 1 日より前に最初に受領された国際出願には適用されません。)
この新たな引用による補充の手続を用いるためには、次の要件を満たす必要があります。
(1) 国際出願中に先の出願の優先権が主張されていること。
(2) 先の出願中に欠落要素又は欠落部分が完全に含まれていること(PCT 規則 20.6(b))。
(3) 願書に PCT 規則 4.18 に基づく引用による補充の陳述が記載されていること。これは、2007 年 4 月 1 日版の願書様式1に最初から印刷されています。その願書様式が使われていない場合には、別個の引用による補充の陳述を国際出願と共に提出することが必要です。
(4) 受理官庁に書面の通知によって補充の確認を行うこと。その中で、要素又は部分が国際出願に引用によって補充されることを説明する必要があります。この期限は、受理官庁によって PCT 第 11 条(1)(ⅲ)に関する一つ以上の要素が最初に受理された日から 2 ヶ月、又は、受理官庁が出願の訂正の求めを発出している場合には、その求めの日から 2 ヶ月、となります(PCT 規則 20.7 参照)2。確認の通知は次の書類と共に提出する必要があります。
(a) 先の出願に記載されている要素の全体又は当該部分を含む一又は二以上の用紙
(b) 出願人が規則 17.1(a)、(b)又は(b の 2) に基づき優先権書類を提出していない場合には、提出された先の出願の(単なる)写し
(c) 必要な場合には、先の出願の翻訳文(PCT 規則 20.6(a)(ⅲ)参照)
(d) 欠落部分の場合には、先の出願のどこに当該部分が記載されているかに関する表示(該当する場合には、翻訳文のどこに記載されているか)
出願人が国際出願の要素又は部分が欠落していると気付いていない場合であって、出願が第11 条(1) の要件を満たしているか、及び/又は、PCT の様式上の要件に適合しているかについて受理官庁が確認する際に、当該欠落を発見した場合には、受理官庁は次のいずれかを出願人に求めます。
(1) 欠落要素の場合
(a) PCT 第 11 条(2)に基づく補充として欠落要素を提出する。この場合、国際出願日は受理官庁によって欠落要素が受理された日となります(他の第 11 条(1) の要件を全て満たしたとして)(規則 20.3(b)(i)参照)。又は、
(b) 規則 20.6 の引用による補充に従う確認を行う。この確認によって、欠落要素は第 11条(1)(ⅲ)に関する一つ以上の要素が最初に受理された日に含まれていたと考えられます。そして、国際出願日は第 11 条(1) の要件を全て満たした日となります(規則20.3(b)(ii)参照)
(2) 欠落部分の場合
(a) 欠落部分を提出することによって国際出願を補充する
(i) 国際出願日がまだ与えられていない場合には、欠落部分は国際出願に補充され、国際出願日は第 11 条(1) の要件が満たされた日となります(規則 20.5(b) 参照)。
(ii) 国際出願日が既に与えられている場合には、欠落部分は国際出願に補充され、国際出願日は受理官庁によって欠落部分が受理された日に訂正されます(規則20.5(c)参照)。この場合、出願人は欠落部分を無視することを請求することによって、元の出願日を維持することが選択できます(規則 20.5(e))。
(b) 規則 20.6 の引用による補充に従う確認を行う。この確認によって、欠落部分は第 11条(1)(ⅲ)に関する一つ以上の要素が最初に受理された日に含まれていたと考えられます。そして、国際出願日は第 11 条(1) の要件を全て満たした日となります(規則20.5(d)参照)。
指定官庁(選択官庁)は限られた範囲内で受理官庁による引用による補充を認める決定を検査することができます(規則 82 の 3.1(b) から (d))。
多くの受理官庁3及び指定官庁4が欠落要素及び欠落部分の引用による補充に関する PCT 規則と国内法令が不適合であることを国際事務局に通報しています。結果として、国際事務局に通報したこれらの受理官庁では引用による補充の規定は適用されません。代わりとして、欠落要素又は欠落部分が後に提出された場合には、次のように取扱われます。
(a) 後の国際出願日が与えられる。又は、
(b) 欠落部分の場合には、欠落部分を受理した日が国際出願日となるように訂正されるが、出願人が欠落部分を無視することを請求することによって元の出願日を維持することが可能(PCT 規則 20.5(e))。
同様に、欠落要素及び欠落部分を後に提出した場合には、国際事務局に通報した指定官庁は国際出願を次のように取扱います。
(c) 規則 20.3(b)(i) 又は 20.5(b)に基づいて国際出願に後の国際出願日が与えらたとして扱う。
(d) 欠落部分の場合には、国際出願日は規則 20.5(c) に基づいて補充されたように扱う。その場合には、指定(又は選択)官庁は出願人に欠落部分を無視することを請求することによって元の出願日を維持する機会を与えなければならない(PCT 規則 82の 3.1(d))。
実務アドバイスの脚注
1.電子形式で国際出願を提出する場合には、出願時に使用しているソフトウェアが陳述を含む更新がされているか受理官庁に確認することが必要です。
2.要素の引用による補充の確認の通知が受理官庁によって PCT 規則 20.7(a) に基づく期間の満了後に受理された場合であって、当該出願が国際出願としては取り扱われないとする PCT 規則 20.4(i) に基づく出願人への当該官庁からの通知が行われる前であったならば、当該出願人の通知は期間内に受理されたものとみなす(PCT 規則 20.7(b))。
3.以下の受理官庁は PCT 規則 20.3(a)(ii)及び(b)(ii)、20.5(a)(ii)及び(d)及び 20.6 と国内法令とが不適合であることを、PCT 規則 20.8(a)に基づき国際事務局に通報しました。ベルギー、キューバ、チェコ共和国、ドイツ、ハンガリー、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、フィリピン、大韓民国、スペイン、欧州特許庁
4.以下の指定官庁は PCT 規則 20.3(a)(ii)及び(b)(ii)、20.5(a)(ii)及び(d)及び 20.6 と国内法令とが不適合であることを、PCT 規則 20.8(b)に基づき国際事務局に通報しました。中国、キューバ、チェコ共和国、ドイツ、ハンガリー、インドネシア、日本、リトアニア、メキシコ、フィリピン、大韓民国、スペイン、トルコ、欧州特許庁