PCTニュースレター 06/2024: 実務アドバイス

注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

発明者の氏名の表示

Q: 当方は欧州特許代理人です。当方のクライアントは欧州特許出願を行った際、発明者として記載される権利を放棄しました。これからPCT出願を行う予定ですが、その際も発明者として記載されることを希望していません。PCT出願においても同様に、発明者の氏名を表示したとしても、氏名を秘密にすることはできるのでしょうか。

一般事項として、工業所有権の保護に関するパリ条約第4条の3は、発明者は特許証に発明者として記載される権利を有することを保証しており、国内や広域特許制度の多くは、出願時に発明者の氏名を表示することを要求しています。時には発明者が自身の氏名を秘密にしておきたい場合があるでしょう。しかしながら、例えば、クライアントは発明者として氏名を記載する権利を放棄することができる欧州特許制度 (欧州特許条約の実施規則20.1) のように、クライアントが出願に自身の氏名を記載した場合でも、追加の条件を満たすことなく氏名を秘密にするよう容易に請求できる制度とは異なり、PCT制度では、発明者が自身の氏名を公開しないよう請求するための同様の仕組みはありません。

PCT制度の下で、発明者の氏名を開示しないようにする唯一の方法は、国際出願から氏名を省略することです。そうすることにより出願人は、国内段階の各指定官庁に対し発明者の氏名を提供する義務が生じます。指定国としての締約国は、一般的に出願時に発明者の氏名を提供することは要求しませんが、ほとんどの指定官庁は、少なくとも国内段階移行時に発明者の氏名を提供することを要求しています (詳細はPCT規則4.1(a)(iv)、4.1(c) と4.6をご参照下さい)。

従って、国内段階での問題や遅滞を避けるため、氏名に関する情報は国際段階において提供することが強く推奨されます。ほとんどの締約国において発明者の氏名は、関係する国内段階において指定官庁に対し適用され得る国内データ保護法に従い、いずれにしても国内段階において要求され公開されます。

PCT規則92の2に基づき発明者に関する表示が期間内 (国際公開のための技術的準備が完了する前) に含まれたか追加された場合には、PCT規則48.2(b)(i)、PCT実施細則第406号(c) と附属書Dの第4項に従い、その情報は国際公開されます。またPCT規則92の2に基づき発明者に関する情報が後から (国際公開の後であるが優先日から30か月を経過する前に) 追加された場合には、PATENTSCOPE上の書誌情報タブはそれに従って更新され、その情報は、国際事務局で保有される一件書類の一部としてPCT規則94に基づき公に利用可能となります。なお、PCT出願に関して、発明者の氏名を開示しないことを求めるための請求が提出された場合でも、その請求はいかなる効果も有しません。

現行の手続の下での個人情報への配慮は、発明者の郵送先住所や電子メールアドレスについて、PATENTSCOPEの「PCT書誌情報」タブに表示されるテキスト形式のデータから除外されているなど (公開される出願がイメージ形式でのみ利用可能となるのに対して)、ある程度考慮されています。従って、これらの住所やアドレスは、インターネット上の検索エンジンでは検索されません。また、PCTは願書に記載する発明者の住所を、その発明者の「自宅」住所とすることは要求していない点にもご留意下さい (PCT規則4.4(c))。自宅住所に代わり、雇用者の住所を発明者の住所として記載することができます。

前述の通り、ほとんどのPCT締約国は、特許出願のプロセスにおいて発明者の表示を義務付けています。従って、発明者の氏名は国際段階の期間中に提供することを強くお勧めします。

発明者の氏名と住所の提出に関する各指定官庁の要件に関する詳細は、PCT出願人の手引 附属書B (www.wipo.int/pct/en/guide/index.html (英語) 訳者注: https://www.wipo.int/pct/ja/guide/ (日本語)) をご参照下さい。