PCTニュースレター 04/2026: 実務アドバイス

注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

PCTを利用して発明に対する特許以外の保護を求めること

Q: 私は自国で特許を取得しました。他の海外市場にも保護を拡大したいと考えていますが、得られる資金はごく限られていると見込んでおり、また、それほど関心を持っていない市場もいくつかあります。PCTを利用して一部の国で特許以外の保護を取得することは可能でしょうか?

発明に対して代替的な保護の種類を規定する国内又は広域法令が存在する地域では、PCTを通じて特許以外の保護の種類を求めることができます。特許に代わる一般的な選択肢の一つは実用新案であり、その他にも追加証、追加特許や発明者証など、実用新案に類似した保護形態が存在します。

実用新案の取得や維持に適用される国内又は広域手続は、通常、より簡素で費用も安く迅速であり、実体審査はほとんど、或いは全く行われません。進歩性などの特定の要件は、さほど厳しくないか、存在しない場合もあります。但し、実用新案の保護期間は特許よりも短くなります。実体審査がほとんど、或いは全く行われないため、実用新案は、通常、特許ほど「強力」ではなく、有効性に関する法的確実性も低くなります。

発明に対する代替的な保護形態の詳細は、国内制度によって異なります。一部の国では、実用新案は製品発明に限り且つ限定された技術分野でのみ取得可能であり、さらに、技術的、化学的、生物学的プロセスは、実用新案の保護の対象とならない場合があります。

重要な点として、PCT制度は、発明に対する代替的な保護形態を求めることを可能にする一方で、商標や意匠などの知的財産権は対象としていません。WIPOは、こうした知的財産権のために、例えば商標に関するマドリッド制度や意匠に関するハーグ制度など、他の国際的な保護制度を提供しています。

PCTを通じて国際出願する場合、PCT願書を提出することで、国際出願日時点でPCTの下で利用可能な全ての指定国について、当該各国で利用可能な全ての種類の保護が、自動的且つ包括的に適用されることになります (PCT第2条(ii)、 第43条、第44条、規則4.9(a))。また、該当する場合には、広域と国内特許の両方についても、指定国において得られる全ての種類の保護が適用されます (PCT第45条、規則4.9(a)(ii))。

PCT手続の国際段階では、保護の種類に関して表示する必要はなく、願書様式やePCT出願においても保護の種類を表示する欄は設けられていません。そのため、出願人は、国内段階に移行するまで選択肢を保留しておくことが可能です。具体的な保護の種類を選択するのは、各指定官庁への出願時となります。国際段階での手数料は、最終的にどの種類の保護を求めるかに関わらず同一料金です。

但し、出願人が、PCT出願が追加特許、追加証、追加発明者証、若しくは追加実用証 (PCT規則4.11(a)(i))、或いは先の出願の継続出願若しくは一部継続出願 (PCT規則4.11(a)(ii)) として取り扱われることを希望する場合には、願書に特定の表示が必要となることがあります。

各官庁で取得可能な保護の種類に関する情報は、Types of Protection Available via the PCT in PCT Contracting Statesの表とPCT出願人の手引の国内章に掲載されています。また、各国における代替的な保護形態に関する法令の詳細は、WIPO Lexデータベースに掲載されています。実用新案に関する基本情報やよくある質問 (FAQs) は、WIPOの実用新案に関するウェブページからご利用下さい。

一部の国では、出願人が二種類以上の保護を選択できることを認めており、そのような場合には、出願人は、指定官庁に対して、主として求める保護の種類を表示するよう求められることがあります (PCT規則49の2.1(b))。一部の法域では、実用新案と特許による保護は、代替関係にあるというよりは補完的な関係にある場合があり、出願人は、特許の付与を待つ間に実用新案を取得できる可能性があります。さらに、一部の国では、一の種類の保護を他の種類の保護に変更することができる旨を規定しています (PCT規則49の2.2(b))。

広域特許機関の加盟国の中には、特許以外の保護を提供しているものの、「国内ルートを閉鎖」している国があります。これは、当該国については広域特許のみ指定可能であり、PCT経由では当該国については他の種類の保護を取得できないことを意味します。例えば、フランスは国内ルートを閉鎖しているため、certificat d’invention (発明証) はフランス国内で直接出願する場合に限り請求が可能です。なお、上述した表とPCT出願人の手引には、PCT経由では取得できない保護の種類については記載されていません。

このトピックに関する追加情報は、過去のPCT ニュースレター以下の号の実務アドバイスに掲載されています。

  • 2022年 4月号: 国際出願を特定の国において特許以外の保護を求める出願として取り扱われるよう請求すること
  • 2018年 5月号: どの指定官庁が実用新案による保護を提供するかを知る方法と、国際出願に関してそのような保護を請求する方法
  • 2018年 4月号: 特許による保護の代わりに実用新案による保護を求めること
  • 2004年 11月号: 国際出願における指定国の確認方法; 広域特許のためにのみ指定される締約国