PCTニュースレター 02/2024: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
出願人がPCT出願を行える出願先と代理人資格者
Q: 米国特許代理人として、PCT出願を希望するドイツ国籍を有した米国のクライアントをサポートしています。クライアントのPCT出願を欧州特許庁 (EPO) に提出することができますか?また、当方は代理人として出願人を代理することができますか?
A: どの出願先に、又はどこの受理官庁 (RO) に出願人がPCT出願を行うことができるのか、また誰が出願人を代理できるのかについては、主に出願人の国籍と居住国によって決まります。
PCT規則19に従い、出願人は以下の官庁に国際出願を行うことができます。
(i) 出願人がその居住者である締約国の国内官庁 (又はその締約国のために行動する国内官庁)。
(ii) 出願人がその国民である締約国の国内官庁 (又はその締約国のために行動する国内官庁)。
(iii) 国際事務局 (出願人の国籍又は居所のいかんを問わない)。
PCT第2条(xii) に基づき、「国内官庁」には、二以上の国から広域特許を与える任務を委任されている政府間当局も含めるものとします。出願人が複数存在する場合には、少なくとも出願人の一人にこれらの条件が適合している必要があります。
この実務アドバイスのケースでの米国のクライアントが米国の居住者であると想定すると、クライアントは、米国特許商標庁 (USPTO) (RO/US)、そしてクライアントの国籍に関連してドイツ特許商標庁 (RO/DE) か欧州特許庁 (RO/EP)、又は国際事務局 (RO/IB) にPCT出願を行うことができます。ただし、米国でなされた発明については、国家安全保障措置が適用される場合があります。この場合には、他の三つの受理官庁のいずれかに国際出願する前に、USPTOから外国出願許可を取得するか、同じ発明について最初にUSPTOに特許出願をし、その先の出願について国家安全保障に関する命令が出されることなく6か月が経過していることが必要となります (https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s140.html 参照)。
国際段階において代理人として出願人を代理する資格を有する者の決定は、出願がなされた受理官庁により決定されます (PCT規則90.1)。各受理官庁は、代理に関する独自の基準を定めており、これはPCT出願人の手引の附属書C (https://www.wipo.int/pct/en/guide/index.html (訳者注: ページ右上の言語切替ドロップダウンリストから日本語が選択可能)) に記載されています。IBが受理官庁を務める場合には、PCT規則83.1の2に基づき、出願人が居所又は国籍を有する国内又は広域官庁に対して業として手続をとる権能を有する者のみを代理人として選任することが可能です。
この実務アドバイスのケースの代理人が、EPOやドイツ特許庁に対して業として手続をとる権能を有する者として登載されていない場合には、USPTOやIBに対する出願に限り、出願人を代理する資格を有することになります。とはいえ、(EPOやドイツ特許庁に対して業として手続をとる権能を有する者として登載されていないものと想定すると) RO/EPとRO/DEに対する代理人として出願手続を行うことは制限されますが、その代理人が、出願人に代わってこれらの官庁にPCT出願を行うことを妨げるものではありません。代理人として記載できない場合には、PCT規則4.4(d) に基づき「通知のためのあて名」として記載できるオプションがあります。これにより、「通知のためのあて名」として記載される代理人は、通常出願人やその代理人へ送付される通信を受け取ることができ、出願人に代わって支払をすることも可能です。ただし、「通知のためのあて名」として記載される代理人が、代理人として出願人に代わって願書 (又は中間書類) に署名することはできません。出願人の署名を取得できない場合、出願における欠落した署名や無効な署名は、PCT第14条に基づき欠陥とみなされます(PCT出願人の手引 https://www.wipo.int/pct/en/guide/ip06.html#_correction_defects 参照)。この欠陥により出願人が国際出願日を取得できなくなることはありませんが、その後、有効な署名を付した差替え用紙の提出が必要となります。さらに、一人以上の出願人が存在し、出願人を代理する代理人がいない場合には、規則90.2(b) に基づき、特定の選択受理官庁に国際出願をする資格を有する出願人のうち最初に記載されている出願人が共通の代表者とみなされるため、願書における出願人の氏名の記載順が重要になります (PCTニュースレター2014年7-8月号掲載の実務アドバイス 「共通の代理人が選任されていない場合の、願書様式における出願人の記載順の重要性」でも強調されています。ただし、出願人自身がそのうちの一人を共通の代表者として選任している場合はこの限りではありません)。
国際出願の提出に便利な方法は、ePCTを利用することです。新規PCT出願を作成するユーザは自動的にeOwnerに設定され、ePCTを用いてPCT出願プロセスを管理することができます。「外部署名」機能では、権限を与えられた署名者 (この実務アドバイスのケースでは出願人) はePCTにアクセスすることなく、ePCTに保管されているドラフト文書に署名をすることができます。また、出願人に直接アクセス権を割り当てるオプションもあり、出願人は出願前であっても出願にアクセスしたり、必要であれば署名をすることができます。このようにして、この実務アドバイスのケースでの代理人は、出願人に代わって必要な書簡 (例えば、PCT規則92の2に基づく変更を求める書簡、第19条に基づく補正を求める書簡や出願の取下げなど) を作成し、出願人は、その書簡に外部署名をするか、ePCT内で直接署名をすることができます。
RO/IBに対する国際出願の提出に関する情報は、以下のリンクをご参照下さい。
https://www.wipo.int/pct/en/filing/filing.html
ePCTを利用した出願に関する詳細情報については、以下のリンクをご参照下さい。
https://pct.eservices.wipo.int/p_sn_li.aspx?ClickType=2&NodeID=567
このトピックに関する詳しい情報は、PCTニュースレターの以下の号の「実務アドバイス」に掲載されています。
2015年 4月号: 受理官庁に対して出願人を代理する資格がない場合の通知のためのあて名の表示
2019年3月号: 出願の戦略: 国際出願を国内 (もしくは該当する場合には広域) 官庁または受理官庁としての国際事務局に出願するかどうかを決定する際に検討すべき要素 - カナダ国⺠である⽶国居住者の事例
2020年6月号: 受理官庁としての国際事務局に対し業として手続をとる資格 (国際出願が他国の出願⼈に譲渡される場合)