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国際段階での明白な誤記の訂正

Q: 数か月前に提出したPCT出願の明細書に、「water」という単語が誤って「wafer」と表記されたタイプミスに気づきました。国際公開前にこの誤りを訂正できるのでしょうか? 訂正が可能であれば、訂正のための請求はどの機関に提出すればよいのでしょうか?

A: PCT規則91に基づく誤記の訂正を請求することができます。当該規則は、「国際出願又は出願人が提出した他の書類中の明白な誤記は、当該出願人が請求する場合は、第91規則に従って訂正することができる 」と規定しています。ただし、訂正のための請求は優先日から26か月以内に提出しなければならないこと (PCT規則91.2)、また、一定の基準を満たす必要のあることにご注意下さい。

出願のどの部分に誤記があるかによって、明白な誤記の訂正の請求を提出すべき機関は異なります。

願書における誤記について (PCT様式RO/101) 受理官庁 受理官庁
明細書、請求の範囲若しくは図面における誤記について (ただし、権限のある機関が国際予備審査機関である場合を除く) 国際調査機関
明細書、請求の範囲若しくは図面における誤記、又は第19条若しくは第34条に基づく補正における誤記で、国際予備審査の請 求がなされ、取下げはされておらず、且つ国際予備審査の開始日 が経過した場合 国際予備審査機関
上記以外の書類における誤記について 書類が提出された機関

この事例では明細書に誤記があるため、訂正のための請求は国際調査機関に提出する必要があります。

権限のある機関は、PCT規則91.1(f) に基づく規定の適用上の日 (国際出願日、若しくは提出された国際出願以外の書類における誤記の場合には、当該書類が提出された日) において、当該権限のある機関にとって以下の基準が満たされることが明らかであった場合のみ、誤記の訂正を許可します。

  • 関連する書類に現れるもの以外の何かが意図されていること、及び
  • 提出された訂正以外何も意図されていなかったこと (PCT規則91.1)

言語的誤り、文法的誤り若しくはスペルミスのような誤りは、開示の意味を変えない限り、訂正を請求することができます。例えば、化学式や数式の誤記については、正しい式が一般常識である場合や、出願の他の箇所で使用されている場合でない限り、通常訂正はできません。

大抵の場合、最初の基準は2番目の基準よりも満たすことが容易です。例えば、「1+2=3」であるべきところを、明細書では「1+2=5」という式が記載されていた場合です。たとえ出願人が、それは誤記であり「1+2=5」以外のものが意図されていたことを権限のある機関に説得できたとしても、それではまだ十分ではなく「1+2=3」以外のものが意図されていなかったことを示す必要があります。つまり、「3+2 =5」、「1+4=5」若しくは他の可能性が意図されていなかったことが明らかである必要があります。

図面が不鮮明で判読できないような例もあるかもしれません。たとえ出願人が、図面がミスのため不鮮明であったことを示すことができたとしても、新しく提出された鮮明な図面以外のものが意図されていなかったことを権限のある機関に説得させることは非常に困難でしょう。

なお、明細書、請求の範囲若しくは図面の誤記について、訂正に関する権限のある機関の決定は、当該明細書、請求の範囲と図面に基づいてのみ行われるため (PCT規則91.1(d))、優先権書類の情報は考慮されません。ただし、願書における誤記の場合には、権限のある機関は受理官庁であり、当該機関は利用可能な国際出願に関する優先権書類を考慮するものとします (PCT規則91.1(e))。

したがって、この事例では、国際調査機関にとって、明細書にある「wafer」が誤記であり、「water」以外を意図したものではないことが、最初に提出された明細書、請求の範囲と図面から明らかでなければなりません。

ちなみに、PCT規則91 (PCT 規則91.1(g)) に基づき訂正できない誤記は、以下の通りです。

  • 第3条(2) に規定する国際出願の用紙若しくは要素の欠落がある場合 (願書、明細書、請求の範囲、図面) (PCT規則20.3から20.8をご参照下さい)
  • 要約における誤記の場合 (PCT 規則38.3をご参照下さい)
  • 第19条に基づく補正書における誤記の場合、ただし、国際予備審査機関が権限のある機関である場合を除く、又は
  • 優先権の主張における誤記であって、訂正により優先日に変更が生じる場合

訂正のための請求は、優先日から26か月以内に確実に権限のある機関に届くようにして下さい。書簡には、訂正される誤記と、差替え用紙と共に提案された訂正を特定し、出願人の選択により、簡単な説明を記載することができます (提案された訂正の表示方法についてはPCT規則26.4が適用されます)。

権限のある機関によっては、ePCTから受取人を選択し、「ドキュメントアップロード」機能を使って訂正の請求を提出可能な場合があります (ePCTには明白な誤記の訂正を行う専用の機能はありません。詳細は/en/web/epct/learnmore?N=1006 をご参照下さい)。

訂正の請求が認められた場合、権限のある機関はIBにその旨を通知し、国際公開用に訂正された用紙をIBに提供します。公開のための技術的な準備が完了した後にIBがその用紙を受領した場合には、IBは認められた差替え用紙と共に訂正を反映した説明書、訂正を請求した書簡と改訂された表紙を公開します(PCT 規則48.2(i))。

指定官庁は、規則91.3(a) に基づき権限のある機関により訂正の許可を通知された日以前に国際出願の処理又は審査をすでに開始している場合には、明白な誤記の訂正を考慮する義務はありません。

また、指定官庁は、当該指定官庁が権限のある機関であった場合に、規則91.1の規定に基づく訂正を許可しなかったと認めた場合には、許可された訂正を無視することができますが、当該指定官庁は、意見を述べる機会を出願人に与えなければなりません (PCT規則91.3(f))。

なお、国際段階において、明細書、請求の範囲若しくは図面における誤記を訂正する機会を逃してしまった場合であっても、出願人は各指定官庁に対し誤記を補正する機会がある点にご留意下さい。したがって、その補正が国内法令に基づく要件を満たしていることを条件として、国内段階でも明細書、請求の範囲若しくは図面における誤記の訂正を請求する機会があります (PCT第28条)。

明白な誤記の訂正の請求に関する詳細は、PCT出願人の手引 国際段階の項目11.033から 11.044までをご参照下さい。

/pct/guide/en/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf (英語)
(訳者追記:
/pct/guide/ja/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf (日本語))