注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

国際予備審査を請求するか否かの決定を行う際に考慮すべき要素

Q: 国際調査報告及び国際調査機関の書面による見解を受け取ったところです。PCT 第 2 章 の国際予備審査の請求書を提出するかどうかを決定する際、何を考慮すべきですか。

A: PCT において、国際予備審査の請求を提出は任意のプロセスで、それぞれの国際出願において検査して、請求の有無を決定する必要があります。出願人が置かれている様々な状況の例は以下の通りです。

1) 出願人が、全ての請求項に対し、新規性、進歩性、産業上の利用可能性について肯定的である国際調査機関の見解を受理している場合。さらに、審査官による国際出願の不備等の指摘を受けていない場合。

2) 出願人が、全ての請求項に対し、新規性、進歩性、産業上の利用可能性について肯定的である国際調査機関の見解を受理している場合。しかしながら、審査官による一以上の国際出願の不備等の指摘を受けている場合。

3) 出願人が、一以上の請求項に対し、新規性、進歩性、産業上の利用可能性について否定的である国際調査機関の見解を受理している場合。

4) 出願人が、一以上の請求項に対し、新規性、進歩性、産業上の利用可能性について否定的である国際調査機関の見解を受理しているが、その情報が遅れて届いた場合。

5) 出願人が、国際調査報告、国際調査機関の見解書を受理していないが、PCT 第 17 条(2)(a)の規定による国際調査報告を作成しない旨の宣言を受理している場合。

これらすべての状況を十分に考慮するために、当該実務アドバイスは二回に分けて PCT newsletter に取り上げていきます。今月号のニュースレターでは、より肯定的な国際調査報告及び国際調査機関の見解を受理している場合について(すなわち、(1)、(2)のケース)、来月号ではより否定的な状況(つまり、(3)と(5)の状況)について取り上げます。

国際予備審査の背景

国際予備審査請求を行うか否かに関わらず、出願人は、PCT 第 33 条に規定された、請求項に係る発明について新規性、進歩性及び産業上の利用可能性に関する予備的かつ法的拘束力のない見解が示された国際調査機関の見解書(PCT 規則 43 の 2 参照)を受理します。さらに、国際調査機関の見解では、国際調査の過程で発見された国際出願の不備等についても指摘されます(そのような指摘事項の範囲は審査官及びそれぞれの国際機関の裁量で決められています)。出願人が国際予備審査の請求を行わない場合、国際事務局は国際調査機関の見解に表紙をつけて、特許性に関する国際予備報告(第1章)として発行し、指定官庁に送付します。

国際調査報告及び国際調査機関の見解で引用された先行技術を確認した結果、出願人がこれらに反論することを決めた場合、国際予備審査の請求書を補正書及び/又は抗弁とともに国際予備審査機関に提出し、手数料を支払わなければなりません(PCT 規則 57、58)。代わりに国際事務局に対し、国際調査機関の見解に対する非公式コメントを提出することは可能ですが、国際予備審査を請求していても、これらは公表されず、国際調査機関や国際予備審査機関にも送付されません。(出願人は、先に提出した非公式コメントを国際予備審査機関が考慮することを希望する場合、国際予備審査機関に直接再提出しなければなりません。)この非公式コメントは単に国際出願のファイルに保存され、国際予備審査が請求されない場合、指定官庁に転送されます。

国際予備審査の請求書の提出期限は、出願人への国際調査報告(又は、PCT 第 17 条(2)(a)の規定による国際調査報告を作成しない旨の宣言)及び国際調査機関の見解書の送付から 3ヶ月、あるいは、優先日から 22 ヶ月のうちいずれか遅く満了する期間までです。国際予備審査の請求書の提出することにより、否定的な見解に対する公式の応答に加えて、PCT 規則34(2)(b)に規定された詳細な説明、請求の範囲及び/又は図面に関する補正書を提出することができます。

この手続の最終成果物として、国際予備審査機関の審査官により(特許性に関する国際予備報告(第 2 章)というタイトルの)国際予備審査報告が発行され、その後、国際事務局から選択官庁に送付されます。

先に言及したように、国際予備審査の請求を行うか否かの決定は各国際出願に対して行われるものであり、その前に、出願人が国際予備審査で受け取ることができると期待しているものが時間と費用をかけるだけの価値があるか否か、検討することをお勧めします。

国際予備審査の請求の費用は、国際予備審査機関によって異なります。国際予備審査機関は出願人の受理官庁によって決定されます。さらに、国際調査機関によって決定される場合もあります。また、出願人は一以上の国際予備審査機関を選択できる場合もあります。国際予備審査の請求には、次の二種の手数料が必要です。すなわち、国際予備審査手続中にかかる費用のための予備審査手数料、及び、国際予備審査報告の翻訳及び送付にかかる国際事務局の費用のための取扱手数料があります。国際予備審査手続にかかる全費用は、前記手数料に加え、出願人又は代理人が国際調査機関の見解に対応する抗弁及び/又は補正書を作成し提出するために要した時間に対する費用を含みます。予備審査手続を活用するか否かの判断の際には、国際予備審査報告を受け取ることによる利益と、この全費用とを比較考慮する必要があります。

1) 出願人が、全ての請求項に対し、新規性、進歩性、産業上の利用可能性について肯定的である国際調査機関の見解を受理している場合。さらに、審査官による国際出願の不備等の指摘を受けていない場合。

この状況において、調査を行った審査官は、請求項に係る発明に関する新規性、進歩性、産業上の利用可能性について否定的な見解を与える先行技術を発見しておらず、国際出願の不備も発見されていません。国際調査機関の見解はすべての面で肯定的であり、最終的に特許性に関する国際予備報告(第 1 章)において、請求項に係る発明がこれら3つの基準(PCT規則 33)を満たしていることが示されるでしょう。

出願人に出願の一以上の部分の補正が求められる事例特有の状況でない限り、国際予備審査を請求することによって得られる価値はほとんどなく、まだ国際予備審査の請求により国内移行期限の延長できるわずかに残った国についても、国際予備審査の請求の有無に関わらず、少なくとも 30 ヶ月の移行期限が広域システムでカバーされています。実際、抗弁及び/又は補正書を提出せずに国際予備審査を請求した場合、典型的には、国際調査機関の見解が単に国際予備審査報告の形式で再度発行されるだけでしょう。特許性に関する国際予備報告(第1 章)により全ての指定/選択官庁に肯定的な結果が伝えられ、国内の審査官は国内審査においてこの結果を考慮することになるでしょう。そして、出願人は、肯定的な特許性に関する国際予備報告(第 1 章)を踏まえた各国内官庁によって与えられる恩恵を受けることができます。欧州特許庁、日本国特許庁、米国特許商標庁によって作成された肯定的な国際調査機関又は国際予備審査機関の見解或いは国際予備審査報告を受理した PCT 出願について、2010 年 1 月に試行プログラムが開始された三極 PCT-PPH(PCT-特許審査ハイウェイ)の下それぞれの国内段階での審査手続が早期に取り扱われます(早期審査)。

2) 出願人が、全ての請求項に対し、新規性、進歩性、産業上の利用可能性について肯定的である国際調査機関の見解を受理している場合。しかしながら、審査官による一以上の国際出願の不備等の指摘を受けている場合。

PCT では、全ての国内(広域)官庁は PCT に基づいて定められた方式要件を受け入れなければなりません。国内(広域)官庁は、国内基準が出願人により有利になる場合に限り、PCTに規定された要件と異なる基準を適用することができます。受理官庁は、国際公開が適度に均一なものであるために必要な程度にまで満たされているかいなかのみ、様式上の欠陥の指摘を行います。同様に、いつくかの指定官庁では PCT 規則 11 の要件について考慮されず、関連する要件が国内法で定められていないあるいは行使されていません。

この状況において、請求項に係る発明が PCT 第 33 条に規定された基準を満たしているが、方式上の欠陥があり修正が必要である旨、審査官により結論が出されており、出願人は指摘された方式上の欠陥を確認し、以下の事項について決定しなければなりません。

a) 方式上の欠陥の修正が、国内段階への移行を検討している国内官庁によって要求されているか否か

b) 方式上の欠陥の修正を、第 2 章(国際予備審査)の下で一度修正すること、あるいは、国内段階移行後にそれぞれの官庁に対して修正を行うこととのいずれが、より費用効果があり、戦略的に価値があるか

この問いに対する回答は、指摘された方式上の欠陥の性質、及び、国内段階に移行する国によります。多くの場合、方式上の欠陥の修正は国内段階に移行する際の最初の補正で行うことがより良く、第 2 章での修正にほとんど価値はありません。このことは、特に、国際出願の当初の言語よりむしろ多くの国において翻訳に関する応答を行う場合に該当するでしょう。ケースは個別に検討されるべきであり、国内手続で要求される修正を行うためのより費用効果の高いルートを活用するか、あるいは、最も戦略的に適したルートを選択すべきです。例えば、特定の国の場合、これらの欠陥を国内段階で扱うことがより煩雑である場合や「血管のない」報告を伴って国内段階に移行することに特別の利益がある場合があり、国際段階において早めに欠陥を修正しておいた方が、国内段階で指定官庁に対して修正を行うより出願人にとってより利益があります。そのような場合、限られた官庁に対してのみの欠陥である場合や全体として手続費用が増える場合であっても、国際予備審査の請求を行うことに価値があります。

この「実務アドバイス」の続きは、来月の PCT Newsletter において、上記3)から5)の状況に関連したアドバイスを行う予定です。