PCTニュースレター 04/2007: 実務アドバイス
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実務アドバイス(優先権を主張する先の出願の出願日から 12 ヶ月を過ぎた国際出願の優先権の回復)
Q: 先の国内出願に基づいて優先権を主張する国際出願を出願する予定ですが、先の出願を12 ヶ月と 2 週間前に出願していたので、12 ヶ月の優先期間を徒過してしまいました。優先権の回復を行うことは可能でしょうか。もし可能であれば、どのように行うのでしょうか。
A: 2007 年 4 月 1 日発効の改正 PCT 規則によって、出願人は先の出願の優先権を回復できるようになりました。つまり、もし、国際出願が優先期間を超えて出願された場合であっても(先の出願の出願日から 12 ヶ月の期間を徒過した場合(規則 2.4))、優先期間の満了の日から 2 ヶ月の期間内に国際出願が提出されると優先権が回復します。例えば、先の出願が 2006年 3 月 1 日に出願されている場合は、優先期間は 2007 年 3 月 1 日に満了しますが、2007年 5 月 1 日以内に国際出願が提出されたならば、優先権の回復を請求できます。
優先権主張を行っているにも拘わらず、優先権の回復の請求を行っていない場合には、受理官庁は、改訂願書 PCT/RO/110 を用いて優先権の回復の請求を受理官庁に提出できることを通知します(優先権主張の補充の求め、及び/又は、優先権の回復の請求の可能性の通知)。ただし、当該受理官庁が国際事務局に規則 26 の 2.3 と国内法が適合していないことを通知してない場合に限ります。(通知した官庁の一覧は、www.wipo.int/pct/en/texts/reservations/res_incomp.pdf で参照可能。)
そのような優先権の回復の請求は、所定の条件のもとで、国際段階の受理官庁(規則 26 の2.3)又は、国内段階の指定官庁(規則 49 の 3.2)に対して行います。それぞれの機関に適用される条件と手続は以下のようになっています。
(A) 国際段階における優先権の回復の請求規則 26 の 2.3 「受理官庁による優先権の回復」
国際段階で受理官庁に対して優先権の回復を請求することは出願人にとって利点があります。受理官庁の決定は多くの指定官庁で有効になるからです。しかしながら、どのような状況においても、受理官庁にて優先権が回復される分けではありません。また、全ての受理官庁が回復する分けでもありません。満たすべき条件および手続を次に説明します。
(1) 国際出願は 2007 年 4 月 1 日(改正規則が発効する日)以後に出願される必要があります。
(2) 国際出願を提出する受理官庁が規則 26 の 2.3(a)から(i) と国内法の不適合を規則 26 の2.3(j)に基づいて通知していないこと。優先権の回復の請求はそのような不適合1を国際事務局に通知した受理官庁においては認められません。もし、通常出願している受理官庁が不適合を通知している官庁である場合には、国際事務局を受理官庁として(RO/IB)国際出願を提出することができます。国際事務局は優先権の回復を認めています。不適合を通知している官庁に国際出願を出願した場合には、規則 19.4(a)(iii) の手続が適用されると、受理官庁はRO/IB に出願を送付します。
更に、受理官庁が国際事務局に規則 26 の 2.3 と国内法の不適合を通知していたとしても、規則 26 の 2.2(c)(iii) は全ての受理官庁に適用されます。当該規則は、国際出願日が優先期間の満了の日から 2 ヶ月の期間内であった場合には、優先権主張は無効とはみなさないことが規定されています。そして、先の出願の出願日が国際段階における期間を計算する基礎となります。
(3) 受理官庁2に適用される基準に依存します。次の回復のための基準の一つを満たす必要があります。
(a) 状況による必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらず、優先期間の徒過が生じた場合
(b) 故意ではなく、優先期間の徒過が生じた場合
いくつかの受理官庁は、出願人が要求するならば、両方の基準を適用します。つまり、最初に「相当な注意」を適用し、その後、より寛大な「故意ではない」が適用されます。条件(1)及び(2)を満たし、(3)における優先権の回復のための適用される基準を満たしているのであれば、次の手続を取ることができます。
(4) 優先権の回復の請求(以後「回復の請求」という。)は、優先期間の満了から 2 ヶ月の期間内に提出されなければならない。国際出願時に回復の請求を行うのであれば、2007 年 4月 1 日付けの願書様式の VI 欄 「優先権主張」をこの目的に使用できます。もし、別に提出するのであれば、後でも提出可能です(特定の様式はありません。)。
(5) 回復の請求は優先期間内に国際出願が提出されなかったことの理由の陳述によって補完する必要があります。その陳述には、先の出願それぞれに対して、出願日、出願番号、国名又は 2 文字コード、WTO の加盟国、広域官庁又は受理官庁、を示します。そして、それぞれの先の出願に対して、優先期間内に国際出願が提出されなかったことの理由を記載します(規則 26 の 2.3(a) 及び 26 の 2.3(b)(ii))。
(6) 優先期間の満了の日から 2 ヶ月の期間内に回復請求手数料を支払うことを、受理官庁2によっては請求しています(規則 26 の 2.3(e))。
(7) 受理官庁によっては、相当の期間内に、理由の陳述を裏付ける申立てその他の証拠を提出することを要求します(規則 26 の 2.3(f))。これは、回復の請求とできるだけ同時に受理官庁に提出します。
回復の請求、及び、回復請求手数料の提出期限が、優先期間の満了から 2 ヶ月の期間よりも短くなる場合があります。つまり、出願人が PCT 第 21 条(2)(b) に基づく早期の国際公開を請求している場合には、回復の請求、及び、回復の請求手数料は国際公開の技術的な準備が完了する前に提出する必要があります(規則 26 の 2.3(e))。回復の請求が有効になるためには、受理官庁が適用している基準を満たしていると認める必要があります。受理官庁が回復の請求に対して決定をしたならば、受理官庁は出願人及び国際事務局に、決定及び決定に用いられた基準を通知します(規則 26 の 2.3(h)(iii))。しかし、受理官庁が優先権主張を回復したとしても、国内段階での優先権主張の有効性は保証されません。
規則 49 の 3.1 指定官庁における「受理官庁による優先権の回復の効果」(1) 受理官庁によって優先権が回復された場合:
基本的には、受理官庁による優先権の回復は指定官庁を拘束しますが、後の限定的な検査は可能です。指定官庁が受理官庁の決定を受け入れるか否かについては次のような状況に依存します。
(a) 指定官庁が規則 49 の 3.1 と国内法の不適合を国際事務局に通知しているか否か。つまり、当該不適合3を通知している場合には、決定は受け入れられません。
(c) 各指定官庁の決定の受け入れは、受理官庁が用いた回復の基準に依存する。
- 規則 49 の 3.1(c)及び(d)を条件として、「相当な注意を払ったにもかかわらず」の基準を用いて回復された優先権は、全ての指定官庁で有効です。
- 規則 49 の 3.1(c)及び(d)を条件として、「故意ではない」の基準を用いて回復された優先権は、当該基準を採用している又は出願人からみて当該基準より有利な基準を採用している指定国において有効です。
(2) 優先権の回復の請求が受理官庁によって拒否された場合
指定官庁は受理官庁の決定に拘束されません。受理官庁に対して提出された回復の要求は、規則 49 の 3.2(a) に基づいて指定官庁に対して提出されたとみなすことができます。受理官庁によって優先権の回復が拒否されたとしても、優先権主張は国際段階では無効とはみなされません(規則 26 の 2.2(c)(iii))。
(B) 国内段階における優先権の回復の請求規則 49 の 3.2「指定官庁による優先権の回復」
規則 49 の 3.2 に従って、国際出願が先の出願の優先権を主張しており、その国際出願日が優先期間の満了後、かつ、満了から 2 ヶ月の期間内であった場合には、出願人の請求によって、指定官庁は優先権の回復を行います。回復されるためには、当該指定官庁に適用される回復の基準が満たされる必要があります。次の状況においては、国際段階よりも国内段階で優先権の回復を請求することが望まれる場合もあります。
- 受理官庁が規則 26 の 2.3 と国内法とが不適合であると宣言している場合であって、規則19.4 に従って受理官庁としての国際事務局に国際出願が送付されなかった場合。
- 受理官庁が優先権の回復を拒否した場合
- 国際段階で単に優先権の回復を請求しなかった場合
指定官庁に対して優先権の回復を請求する場合には、満たすべき要件及び取るべき手続があります。
(1) 国際出願が 2007 年 4 月 1 日以後に出願される必要があります。又は、国際出願が 2007年 4 月 1 日より前に出願されている場合であって、PCT 第 22 条(1) の移行が 2007 年 4 月 1日以後に行われる必要があります。
(2) 回復の請求は PCT 第 22 条に基づく適用される期限から 1 ヶ月の期間内に提出する必要があります。受理官庁が優先権の回復を拒否した場合であっても、優先権主張は出願に保留されます。回復されなかったとしても優先権主張の出願日から、期限が計算されます。その期限には、PCT 第 22 条の期限も含まれます。
(3) その請求では、優先期間内に国際出願を提出されなかったことの理由を陳述すると共に、必要であれば、指定官庁2に申立て又はその他の証拠、及び、回復請求手数料を提出します。
(4) 当該指定官庁2に対して適用される回復の基準を満たしていれば、指定官庁が優先権を回復します。
(5) 指定官庁が規則 49 の 3.2 と国内法の不適合を国際事務所に通知している場合には、当該指定官庁において優先権の回復はできません。
受理官庁及び指定官庁として採用する基準、回復請求手数料の要否、回復の請求を裏付けるその他の証拠の要否についての一覧を準備中です。パテントスコープの PCT Resources において間もなく参照可能になります。官庁毎の適用される基準や要件については PCT 出願人の手引きの附属書C及びPCTニューズレター及びオフィシャル ノーティス(PCT ガゼット)でお知らせします。
脚注
1.以下の官庁は規則 26 の 2.3 と国内法の不適合を国際事務局に通知しました。アルジェリア、ベルギー、ブラジル、コロンビア、キューバ、チェコ共和国、欧州特許庁、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、インド、インドネシア、イタリア、日本、ノルウェー、フィリピン、ポルトガル、大韓民国、シンガポール、スペイン(2007 年 4 月 1 日付け)
2.最終パラグラフ参照
3.以下の官庁は規則 49 の 3.1 と 2 国内法の不適合を国際事務局に通知しました。アルジェリア、ブラジル、カナダ、中国、コロンビア、キューバ、チェコ共和国、欧州特許庁、ドイツ、ハンガリー、インド、インドネシア、日本、リトアニア、メキシコ、ノルウェー、フィリピン、ポルトガル、大韓民国、シンガポール、スペイン、スェーデン、トルコ、米国(2007 年 4 月 1 日付け)