マイクロ波化学の知財戦略:PCT を活用してグローバルなパートナーシップとイノベーションを推進

2025年12月16日

Microwave Chemical Co., Ltd. facilities
画像: マイクロ波化学株式会社
Mr. Yasunori Tsukahara, Representative Director and Chief Strategy Officer (CSO) of Microwave Chemical Co., Ltd.

マイクロ波化学株式会社の代表取締役CSOの塚原保徳さんに、PCTの活用状況を伺いました。(インタビューは2025年2月大阪大学フォトニクスセンターの本社(大阪府吹田市)にて実施)

ポイント

  1. 顧客からの発注により、マイクロ波を利用した化学プロセスの研究開発・化学プラント用の反応器のエンジニアリングを行っているテクノロジープロバイダーである。
  2. 顧客との共同開発においては、装置やプロセスの知財は自社に帰属し、製品の知財は顧客に帰属するようにして、自社のビジネスが妨げられないようにしているだけではなく、共同開発にて技術プラットフォームを強化している。
  3. 事業戦略を明確にして、限られた数の特許で自社技術を守っている。
  4. 生産国、市場国、ライバル企業のある国といった観点から、PCTの移行国を選定し、米・欧・中始め多くの国に移行して特許を取得している。

-御社の事業について教えてください。

マイクロ波は、エネルギーの伝達手段であり、特定の物質に選択的にエネルギーを伝達できることが最大の特徴です。1960年代に電子レンジで活用され始め、1980年代に化学業界にラボスケールで用いられ論文は多数出版されてきましたが、スケールアップが成功しておらず、化学プラントへの適用はなされていませんでした。

当社は、マイクロ波で化学産業を変えることを目標として2007年に設立しました。2014年に世界で初めて大型のマイクロ波化学工場を立ち上げ、新聞向けカラーインクの原料を5年間にわたり製造・出荷して、マイクロ波が化学プラントに適用できるという実績を作りました。現在は大阪事業所に3つの実証棟で18のベンチ・パイロット設備の実証開発ができる部屋を有し、ラボ〜実証を経て顧客に技術プラットフォームを提供するというモデルで事業を行っています。

-どのようなビジネスモデルでしょうか

事業は大きく分けて4つのフェーズから構成されており、

  1. 研究開発(1-2年)、
  2. 実証開発(1―3年)、
  3. 実装(実機開発)(2-3年)、
  4. 製造支援(1年以上)となります。

すべてのフェーズを合計すると少なくとも7年は必要になりますが、当社の技術プラットフォームの対価として開発費を頂くビジネスモデルになります。

顧客は、化学、電子材料、医薬品に加えて、資源開発・鉱山プロセスといった幅広い業界にわたります。顧客としては、日本の大手・中堅の化学メーカーが中心であるが、医薬品の製造企業や、海外の化学メーカーともビジネスを行っています。

-知財の方針を教えてください

当社の技術プラットフォームを支える要素技術群ですが、4つのカテゴリ(基礎物性評価、制御、シミュレーション、基盤機構)のうち、外部から認識不可能な技術は秘匿化し、外部から認識可能な技術については、特許化あるいは公知化を行っています。どうしてそのようなデザインにしたかをブラックボックス化することによって自社の技術を守っています。

顧客との権利の帰属については、①装置・プロセスについては自社の単独帰属とし、②製品については、顧客に単独帰属することを基本方針としています。.

さまざまな顧客と異なるプロジェクトを実施していますが、将来の自社の実施を妨げられない契約とすることを第1に考えています。

-PCTをどのように活用していますか

特許出願については、海外のほうが市場が大きいこともあり、基本的にはPCT出願を行っており、2024年末までに160件を超える出願があります。.

PCTの国内移行先は、生産国であるか、消費国であるか、また出願する分野にその国の企業がどれだけあるかを指標としています。移行先は技術分野においてさまざまですが、米、欧、中国には移行するようにしています。移行国が多いこともあり、1件の特許を複数の国で取得するには約1,000万円かかるので、厳選して出願する必要があると考えています。

日本に出願して、その後優先権を主張してPCT出願を行っています。日本で早期審査を請求して、特許性がないようであれば取り下げ、特許性がありそうならPCT出願を行うという戦略を取っています。

技術系スタートアップにとって、知財戦略は非常に重要であり、ビジネスを明確にして出願することが重要であると考えています。