人の理解を深めるAIの活用:I’mbesideyou が どのようにPCT を利用して世界のヘルスケアを革新するか

2025年12月30日

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画像: 株式会社I’mbesideyou
Kotaro Ando, Co-Founder and Chief Strategy Officer (CSO) of I'mbesideyou Inc.

株式会社I’mbesideyouの共同創業者でCSOの安藤高太朗さんに、PCTの活用状況を伺いました。(2024年11月、港区虎ノ門の本社にて)

ポイント

  1. 人間の動作について、手や目や表情の動きや音声など多種類の情報を取得してAIで解析し、その結果をメンタルヘルスケアなどさまざまなサービスに適用して提供している。
  2. グローバルで競争優位性を確保するため、特にビッグテックが持っていない情報を集めて、それを活用するAIを開発し、それを特許で守ることを戦略のベースとしている。どのような特許を取るかが重要であるため、特許とAIの両方に詳しい専門家に参画してもらっている。
  3. 事業戦略の決定には国際調査報告の結果も活用しており、他国の技術や参画している企業やその事業の分析も踏まえたうえで、プログラム開発を行っている。PCTは国内移行までの時間を稼げること、また国際調査報告を活用することで、早い段階で競合がわかることは大きなメリットである。

-御社の事業について教えてください

2020年に、NTT DATAにいた3名で創業しました。コアとして提供する技術は、マルチモーダルAI(異なる種類の情報を複合的に扱うAI)であり、当社のマルチモーダルAIは、人間の動作を多観点でAIを利用して解析するものです。具体的には、人が映っている動画から、手の動き、目の動きや姿勢、音声、表情の動き等の物理量をとるAIと、これらの情報を何らかの業務に適用するAIを提供しています。

例えば、授業を受けている生徒の動きを解析すれば、その生徒は集中できているのか、内容がわかっているかといった判断をすることができます。この情報は先生側の評価に用いることができ、この先生は担当する生徒が伸びているため優秀であるといった判断をすることができます。

この技術は汎用性が高く、人事領域における活用としては、マネージャーと部下の関係を解析する、製薬会社では、営業の業務が効果的に行えているかをオンラインで管理することにも活用いただいています。最も注力しているのはメンタルヘルスケアで、病院と協力して、患者の動画データを学習することにより、うつ病の程度をAIが判断するようなことも既存の技術以上に高精度でできるようになりました。

これらのAIを活用して、さまざまなサービスを提供しています。例えば、アメリカではメンタルヘルケアのオンラインセラピーのクリニックを立ち上げており、その業務の裏側で本AIを活用して、テクノロジーと人を融合したサービスの提供を行っています。

-御社の知財戦略はどのようなものですか

創業者は3人とも特許の知識を持っており、それぞれの知識を持ち寄り、今後どのような部分のAIが重要になるかを検討して、出願方針を検討しています。

創業当時には、ChatGPTのようなLLM(大規模言語モデル)を活用したAIは存在しませんでしたが、トランスフォーマーモデルのAIについては、グーグルがすでに出しており、言語情報についてはドラスティックに状況が変わるだろうと予測していました。言語は比較的扱いやすい部分であり、大企業にスタートアップは太刀打ちできないと考えていました。

またこれまでの蓄積についても、NTTのような大企業が持っているようなデータ資産にスタートアップは立ち向かえません。そこで、他の人が持っていない情報を集めて、それを活用するAIを開発し、それを特許で守ることを戦略のベースとしました。

そこで注力対象としたのが病院の診療でした。オンライン受診の動画の解析を行ったような事例は少なく、これは特許を取得できるだろうと判断しました。新規なアイデアに加えて、それを実現する技術も有していましたが、同様の発想をする者はいると考え、特にAIの開発が盛んな米国、中国に負けないよう、多国間での権利化が必要であると認識していました。

そのため知財戦略が重要であると考え、知財戦略を経営に反映させられる人物として、知財とAIの両方に詳しい専門家を4人目のメンバーに招き、密にコミュニケーションをとっています。経営目線で、ポートフォリオとしてここが足りないという指摘や、ある国でこのような技術を提供する企業が出てきたので注意が必要といったアドバイスをしてもらっています。

-PCTをどのように活用していますか

創業以来、100件以上のPCTを出願しています。海外展開は創業当初から模索しており、中国、フランス、イギリス、シンガポール、インド、米国などを対象として検討していましたが、どの国にどの技術が刺さるかについては試行錯誤していました。

日本だけで事業を行っていると、AIの投資額が大きい海外の企業に押しつぶされるのは明らかであり、これらの国を主眼として、創業の2-3年目に実装したものはほぼ全てPCT出願を行いました。

事業戦略の決定には、国際調査報告の結果も活用しています。他の国でどのような技術について、どのような企業がどのような事業を実施しているかの調査としても活用しています。この分析も踏まえたうえで、最初から特許戦略と合わせた形でプログラム開発を行っています。

スタートアップが開発するような新規な技術はどの分野で活用できるかわかりませんが、PCTは国内移行までの時間を稼げること、また国際調査報告を活用することで、早い段階で競合がわかることは大きなメリットであると考えています。

特に、最近では、米国マーケットへの進出が本格化し、過去に行ったPCTのうちからISRの評価の高いものを中心に米国へ国内移行を進めています。この際、PCT-PPHも活用することにより早く確実に登録を進めています。