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現代広告における知的財産、ブランディング、多様性の関係

2023年10月

著者: Shalisha Samuel氏、声優・弁護士、ポート・オブ・スペイン、トリニダード・トバゴ

アップルの「Inclusion and Diversity – Open」、ダヴの「Real Beauty」、カナダロイヤル銀行の「That Little Voice」、プロクター・アンド・ギャンブルの「The Talk」、ハイネケンの「Open your World」のキャンペーンに共通しているのは何でしょうか。

これらのキャンペーンは、多様な人々と視点を受け入れ、見過ごされがちな社会問題に焦点を当てています。戦略的な構想と制作により、広告の「スクリプト」を創造的に破壊し、印象的なメッセージングでブランドの差別化を実現しています。

広告における多様性は、ブランドの評価を高め、商標の価値を向上させ、収益を生み出す可能性を秘めています。(写真: Jaryd Niles-Morris)

多様性がもたらす経済的可能性の利用

広告における多様性は、ブランドの評価を高め、商標の価値を向上させ、収益を生み出す可能性を秘めています。WPPの2022年のConsumer Equality Equation (CEE) レポートは、消費者間の不平等に対処するために、商品開発やマーケティング、広告において包括性を高めることが重要であることと、それにより得られる経済的利益を指摘しています。このレポートによると「[前略] 2023年までに少数民族グループの人々の可処分所得は年間2,520億ポンドになると予想され、累計可処分所得は2031年までに3.06兆ポンド、2061年までに16.7兆ポンドに達すると見込まれます [後略]」

多様性の定義とその動的特性

そもそも多様性とは何でしょうか。多様性は企業の知的財産 (IP) の価値とどう関係しているのでしょうか。

多様性とは、社会にさまざまな人々が存在し、さまざまな視点がある状態を指します。多様性には、人口統計上の多様性、経験の多様性、認知的多様性などがあり、それぞれに民族、人種、性別、認知スタイル、教育、宗教、年齢、経験、国籍などのサブカテゴリーがあります。

多様性にはこのような動的特性があるため、誰もが複数のグループに属することが多くなります。多様性は、新しい見方やアイデアが生まれる場を提供し、人々のニーズや利益に資するイノベーションと創造性を促進するため、重要です。

多様性は、新しい見方やアイデアが生まれる場を提供し、人々のニーズや利益に資するイノベーションと創造性を促進するため、重要です。

ビジネスで知的財産、ブランディング、多様性が必要とされる理由

多様性に加えて、知的財産権もイノベーションと創造性を促進します。知的財産について語るとき、企業の無形 (非物理的) 資産のことを言い、この文脈ではブランドを指します。企業のブランドは通常、商標で法的に保護されており、法廷で商標権を執行することができます。商標を登録した企業は、一定年数にわたり商標の独占的使用を認められ、更新も可能であるなど、いくつかの権利を享受します。

生産コストが低下している今日の経済では、無形資産が多大な影響力を持ち、消費者はブランドを頼りに購買の意思決定を行うようになっています。企業のポートフォリオのみならず、知識集約化が進む世界経済においても、無形資産の重要性は広く認識されるようになりました。例えば、オーシャントモの2020年無形資産市場価値調査 (2020 Intangible Asset Market Value Survey) によると、無形資産はS&P 500の市場価値の90%を占めています。

企業は強力な商標やブランド・アイデンティティを確立することで、競合他社との差別化を図り、忠実な顧客を獲得・保持し、最終的には競争の激しい市場で成功することができます。では、ブランドを宣伝する際に、多様性はどのように考慮すべきでしょうか。

広告は、ブランドが顧客基盤を拡大するために不可欠な手段です。多くのブランドがダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに注意を払い、この重要な問題を広告キャンペーンで取り上げるようになっています。(写真: nappy.co / NappyStock / Creative Commons Zero (CCO))

広告は、ブランドが顧客を獲得し、顧客基盤を拡大するために不可欠な手段です。顧客のニーズに応えるため、またビジネスを成長させるために、多くのブランドがダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン (DEI) に注意を払い、この重要な問題を広告キャンペーンで取り上げています。ブランドオーナーはこうしたキャンペーンを、新たに顧客を開拓・獲得し、競合他社との差別化を図るための有力な手段と考えるようになっています。

しかし、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの必要性に対する認識の高まりにもかかわらず、「多様性の84%は見過ごされている」とMartin Agencyの最高収益責任者Tasha Dean氏はWIPOマガジンで語り、この問題に対する消費者の注目を集めるために、まだやるべきことは多いと指摘します。

データ pdfは、多様性がビジネスの成功につながることを示しています。多様性は、ブランドが多様な消費者の共感を得られる新しい視点を提示し、有意義な関係を構築することを可能にします。顧客は、自分が共感し、自身を投影できるブランドと関わる傾向を強めていますCEEレポート (上述) では、回答者の4分の3以上が、ブランドが多様性と包括性を推進することを重視すると回答しています。

多様性はビジネスの成功につながります。多様性は、ブランドが多様な消費者の共感を得られる新しい視点を提示し、有意義な関係の構築をもたらします。

2,000人を超える消費者を対象としたAdobeの世界的な調査 (2019年) によると、「過半数のアメリカ人 (61%) が広告における多様性を重要視しており [中略] 消費者の38%は、広告で高い多様性を示しているブランドを信頼する傾向があると回答しています」。WPPの2022年のレポートでも、広告に少数民族を採用しているブランドに対する消費者の信頼感は「79% (白人の回答者の間では60%)」と高いことが指摘されています。

このような競争優位性により商標の価値を高め、ブランドオーナーは知的財産を担保に事業拡大のための資金を確保し、新製品に投資することが可能になります。さらに、企業の知的財産の価値はビジネスパートナーにとっても魅力的なものであり、ライセンスやフランチャイズの機会をもたらします。

ブランドがDEIへのコミットメントを示す機会

広告キャンペーンにおける多様な表現が、株価と投資家の信頼感を高める可能性があることを示唆する証拠はありますが、それがより包括的な世界を作るための真の取り組みなのか、一時的な流行に過ぎないのかを疑問視する声もあります。企業は、次に良いものが現れるまで時流に便乗しているだけなのでしょうか、それともダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに真剣に取り組んでいるのでしょうか。

また、このようなコマーシャルに登場する人々やその声についてはどうでしょうか。彼らや彼らが代表するグループは、長期的にどのような恩恵を受けるのでしょうか。

広告業界の内側から見たDEIの視点

広告業界の主要プレーヤーたちが、この問題に対する見解をWIPOマガジンで語ってくれました。

Ogilvy UKのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン (DEI) 担当ディレクター、Matt Foster氏は次のように述べています。「そもそも優れたDEIの本質とは何でしょうか。それは真の統合です。以前は、広告で多様性は表現されていませんでした。これは、キャスティング・エージェントや制作チームはもちろんのこと、広告主である企業や広告を制作する代理店にも多様性がなかったためです。DEIは限られた分野だけに焦点を当てればよいという考えは、この問題をあまりにも単純にとらえていて、進展の妨げにしかならないでしょう」

ブランド、代理店、広告業界全体がDEIを重視すべき理由は、それが正しい行動だからではなく、それが唯一の選択肢だからです。

Bianca Guimaraes氏、パートナー、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、Mischief @ No Fixed Address社

Mischief @ No Fixed Address社のパートナーでエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務めるBianca Guimaraes氏は、「ブランド、代理店、広告業界全体がDEIを重視すべき理由は、それが正しい行動だからではなく、それが唯一の選択肢だから」であると考えています。同氏はさらに、「私たちが住んでいる世界は多様です。多様性は、企業がこの世界とどう対話するかに反映されるはずです。そのくらい単純なことです」と言います。

こうした考え方は、DEIがコマーシャル制作を支えるエコシステムに不可欠であることを示唆しています。Foster氏はまた、Ogilvy UK社のDEIモデルは、従業員に対する同社の方針や体制、プロセスに焦点を当てていると言います。同氏によると、このモデルはコミュニティの異文化交流を支え、「アイデアを考えて市場に出すまで (サプライチェーン全体に)」DEIを組み込んでいます。

コマーシャルにおけるDEIの必要性は、Rainbow Kirby氏の記事『6 Ways the Advertising Industry Can be Inclusive in 2022』でも強調されています。Kirby氏は、広告キャンペーンで多様性を表現するだけでは不十分であり、脚本やセットデザイン、音楽の選択、着用する衣服など、制作過程にも包括性を反映させるべきだと主張します。同氏は、取締役を含むすべてのプレーヤーが制作過程に影響を与えると力説しています。

DEI重視の広告:  ブランドがマイノリティ・グループの地位を向上させる可能性

ブランドが、社会から取り残されたグループと知的財産のライセンス契約を交わすことで、彼らの地位を向上させることができるかもしれません。例えば、米国のメディア・アクティビストで社会正義派の作家でもあるEbonye Gussine Wilkins氏は、企業等が提供するコンテンツがコミュニティを反映したものとなるよう、コンテンツの制作と修正を支援しています。Wilkins氏は、広告における多様性について異なる視点を持っており、WIPOマガジンで話を聞いたところ、ブランドにとって、社会的地位の低いグループが経営する企業に投資することは、こうしたグループをコマーシャルに起用する機会になると同時に、マイノリティ・グループの個人が率いる企業への投資によって、DEIに対する姿勢が本物であることを示す機会にもなると言います。

同氏は、社会的地位の低いグループが経営する企業から、彼らのコミュニティの経験やストーリーを最も適切に表現するストックイメージのライセンスを取得することは、ブランドにとって消費者と真摯に向き合う機会になると指摘します。例えば、ジョロフライス (トマト風味の炊込ご飯) やブレッドフルーツ (パンの実) 、ウガリ (トウモロコシ粉の粥) などが写っている夕食時の家族の写真は、ガーナ、ナイジェリア、カリブ海諸国、ケニア出身の消費者と真の関係を築きます。このアプローチはまた、マイノリティ・グループの個人が率いる企業の知的財産を商業利用することによって、企業が自社のビジネスを構築し、多様性に対する真のコミットメントでそれを支える機会を提供します。

バルバドスの起業家、Christina Hunte氏とKevin Headley氏がカリブ海諸国のストック写真のデータベースを構築しているのは、ブランドにとって消費者との有意義な関係の構築が不可欠だからです。

広告における多様性は、提供する製品やサービスの多様性にも左右されます。

広告における多様性は、提供する製品やサービスの多様性にも左右されます。Fenty Beauty社のFenty Beauty Foundationのコマーシャルには、さまざまな肌色のモデルが登場しますが、これはこのブランドが50色のファンデーションを取り扱っているためです。同社のインクルーシブな製品ラインは、TIME誌のThe Best Inventions (その年で最も優れた発明品) に選ばれました。また、Savage X Fentyブランドのランジェリーなどが提供する幅広いサイズ展開は、あらゆる体型やサイズの人々の新しいトレンドやスタイルを刺激し、こうした人たちは今ではファッションショーにも登場しています。

広告における多様性は企業文化に根差している必要があり、制作過程に限定されないことをクリエイティブ・エージェンシーは認識するようになっています。

広告における多様性は企業文化に根差している必要があり、制作過程に限定されないことをクリエイティブ・エージェンシーは認識するようになっています。多様性は企業理念でなければならず、そうでなければコマーシャルで多様性を表現する試みは空虚なものとなり、ブランド・イメージを毀損しかねないとWilkins氏は指摘します。

広告における多様性は企業文化に根差している必要があり、制作過程に限定されないことをクリエイティブ・エージェンシーは認識するようになっています。(写真: Prostock-Studio / iStock / Getty Images Plus)

そのため、自社製品を表現する広告代理店の適性を評価する際に、ブランドが代理店にDEIレポートを要求するようになったのは当然と言えるでしょう。Foster氏は「クライアントは、特定の顧客チームの性別・人種構成から、どのようなサプライヤーと取引しているか、サプライヤーはマイノリティ・グループが経営している会社かということまで、広範囲にわたるさまざまな質問を投げかけます。DEIレポートは、クライアントやクライアントの調達チームによる私たちの評価の一部になっており、そうあるべきだと思っています」と述べています。

Mischief @ No Fixed Address社のGuimaraes氏は「マーケティングに携わる人々は、語りかける消費者を反映し、本物のメッセージを伝えるようにしなければなりません。同じように考え、語り、同じ人生経験を共有する、似たようなブランドや代理店チームを持つことには何のメリットもありません」と言います。

広告における多様性は企業文化に根差している必要があり、制作過程に限定されないことをクリエイティブ・エージェンシーは認識するようになっています。(写真: Prostock-Studio / iStock / Getty Images Plus)

つまり、ブランドのマーケティングや広告を担当するチームの多様性によって、結果として生まれる広告キャンペーンが形作られ、クライアントの多様な価値観が反映される、ということです。

Institute of Practitioners in Advertising (広告実務家協会、IPA) が2022年に行った調査によると、広告代理店のチーム構成は変化しています。63年目を迎えたこの調査によると、経営幹部職の女性は12%増加し、非白人の従業員は58%増加しています。広告代理店の多様性が高まっていることについて、IPAのPaul Bainfair会長は「[前略] 多様性と包括性の向上に向けて業界全体で取り組んできた努力が実を結びつつあります」と述べています。

ブランドのマーケティングや広告を担当するチームの多様性によって [中略] クライアントの多様な価値観が反映されます。

多様性を必要としているのはブランドだけではありません。ミシェル・オバマ元大統領夫人を撮影した写真家、Flor Blake氏などのクリエイターも同じです。Blake氏は、キャスティングの変更をクライアントが拒否したプロジェクトから降りたことを振り返ります。「制作室で私はこのこと [多様性と包括性] を話題にします [中略] 私が携わるすべてのキャンペーンでDEIを考慮します」と同氏は説明します。

無形資産が引き続き市場で優位を占める中、広告キャンペーンにおける多様性の価値を認識しないブランドは、市場で確固たる地位を築く機会を逃すおそれがあります。広告にさまざまな人々や視点を取り入れることで、企業はブランド・アイデンティティを強化し、Foster氏の言う「多様性がもたらす利益」を誰もが手に入れることができます。

広告における多様性と包括性は今や現代広告の一部となり、Foster氏によると「[前略] 間違いなく浸透しています」が、変化のスピードは「飛躍を期待している」消費者にとって十分ではありません。専門家は、単に売上を伸ばすための、DEI重視を装った見せかけのコマーシャルに警告を発しています。多様性を受容するブランドの構築に必要とされるのは、事業の知的財産価値を高め、コミュニティを強くするための、真の倫理的なアプローチです。

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