注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

12ヶ月の優先期間を徒過してしまった際に取り得る行為、及び国際出願のタイムラインへの影響

Q: PCT出願を提出するための12ヶ月の優先期間を過ぎてしまいましたが、幸運にも優先期間の満了後の2ヶ月の満了前に誤ちに気づきました。当方にはどのような選択肢がありますか?また、当方の国際出願のタイムラインはどのように影響されるでしょうか?

A: 先の出願の優先権を正当に主張するためには、国際出願は常に優先期間内に提出されるべきことにご留意ください。つまり、優先期間とは優先権が主張されている、先の出願の出願日から12ヶ月であり(工業所有権の保護に関するパリ条約の第4条C及びPCT規則2.4参照)、当該期間内に提出されない場合、優先権は喪失されます。

以下は、貴殿が実行可能な行為の一覧と、そのような行為を行う際に留意すべき情報です。

1)先の出願の優先権を主張しない

可能な選択肢の一つは先の出願の優先権を主張しないことです。先の出願の優先権を主張しない選択をする場合、国際段階のタイムラインは国際出願日から計算されるため、貴殿は国内段階へ移行するまでより多くの時間を有するでしょう。しかしながら、関連する先行技術が優先日となるであろう日と国際出願日との合間の日付で存在する場合に貴殿の出願に与える影響を踏まえると、リスクのある行為になるでしょう。

2)国際出願の提出後優先権の主張を取り下げる

国際出願を提出して優先権を主張し、出願後にPCT規則90の2.3に基づき優先権の主張を取り下げる決定をする場合、先行技術に関する効力の可能性についての影響は上記1)と同様です。まだ満了していない国際出願のタイムラインの残存期間の期限は優先日の代わりに(当該出願において別のそれより後の優先権の主張もされている場合を除いて)、国際出願日から再計算されます。優先権の回復請求を行わない旨のビジネス上の決定を受けて、又は受理官庁が優先権の回復請求を拒否する場合(以下の項目4参照)に、優先権の主張を取り下げる決定をする可能性もあることにご注意ください。なお、効力を有するためには、30ヶ月の期間の満了前に優先権主張の取下を行う必要がある点にご留意ください。

3)先の出願の優先権を主張するが、他の行動を取らない

先の出願の優先権を主張し、優先日から12ヶ月の満了後に国際出願を提出し、状況を是正するさらなる行動を取らない場合、優先権は失われ、より先の関連する先行技術が発見されるリスクが生じます。優先期間が満了したとしても、国際段階のタイムラインはそれでもなお提出時の出願に記載した優先日から計算されることにご留意ください。

4)先の出願の優先権を主張し、優先権の回復を請求する

優先日から12ヶ月の満了前に国際出願を提出しなくても、当該期限の満了から2ヶ月以内に提出し、先の出願の優先権を主張する場合、PCT規則26の2.3に基づき受理官庁に対し優先権の回復を請求することが可能な場合もあります。回復が認められた場合には、優先権主張を維持できる場合があります。

しかしながら、以下にご留意ください:

  • 幾つかの受理官庁はPCT規則26の2.3と国内法令との不適合を国際事務局へ通知しているため、優先権の回復請求を受理しません。
  • 受理官庁がそのような請求を受理する場合であっても、12ヶ月の期間を徒過したのが故意ではなかったことしか証明できず、相当な注意を払ったにもかかわらず12ヶ月の期間を徒過したということを証明できない場合には、国内段階で限られた数の指定/選択官庁に対してのみ優先権回復の見込みがある点にご留意ください。なぜなら多くの官庁は故意ではない基準のみに基づいての優先権回復は認めていないからです。それ故、貴殿は限られた数の指定/選択官庁に対する回復の利益の可能性と、先の出願の優先権を主張しなかった場合よりも30ヶ月の期間が早く満了する事実とを比較考量する必要があります。
  • 相当な注意を払ったにもかかわらず12ヶ月の期間を徒過したことを証明できる場合、("故意ではない"基準に関して上述した指定/選択官庁の数と比較して)より多数の指定/選択官庁に対して回復の見込みがあるとしても、幾つかの指定/選択官庁は当該効果の適用を留保しているため(PCT規則49の3.1(g)及び49の3.2(h))、上述の回復は全ての可能な指定/選択官庁に対しては効力を有しません。それ故、貴殿は、優先権の回復の請求を考慮する官庁に対する回復の利益の可能性と、先の出願の優先権を主張しなかった場合よりも30ヶ月の期間が早く満了する事実とを比較考量する必要があります。

優先権の回復を請求しない選択をする場合、又は優先権の回復を請求するが受理官庁が当該請求を拒否する場合、国際段階におけるタイムラインはそれでもなお最初に記載された優先権主張の日から計算されることにご留意ください。出願人は、それらの二つの状況のどちらにおいても、30ヶ月の期日は国際出願日から計算されるだろうと誤って思い込む場合があります。しかし、そうではありません-優先権の主張がPCT出願に含まれ、当該出願が12ヶ月の優先期間の満了から2ヶ月以内である国際出願日を有する限り、国際段階で出願人 が優先権の回復を請求するかどうか、又は受理官庁が回復に関してどのような決定をするかにかかわらず、優先日が国内段階移行期限を含む特定の期限を起算する基礎となります。優先権の主張が取り下げられる場合のみ、期限はPCT規則90の2.3(d)に従い再計算されます。

このような誤った思い込みのリスクは、継続中のPCT出願の管理にePCTを利用することのメリットの一つを想起させます。出願人が30ヶ月の期日を管理する際、ePCTにおいて表示される当該出願の"タイムライン"の日と照合確認を実行することが可能です。本機能は30ヶ月の期日の正確な起算に関する誤解のリスクを排除します。

継続中のPCT出願を管理するためにePCTを利用する別のメリットは、たとえ30ヶ月の期日の満了に関して管理上の誤りが発生したとしても(優先日から起算する代わりに、誤って国際出願日から起算)、ePCTシステムは、28ヶ月頃に30ヶ月の期日が間近であることを出願人に警告する、自動リマインダーの電子メールメッセージを送付します。

国際段階で優先権の回復を請求しない場合でも、関連する指定/選択官庁が不適合の通知を行っていないことを前提に、国内段階でもまだ優先権の回復を請求することが可能な点にご留意ください(PCT規則49の3.2参照)。もし貴殿の管轄受理官庁が"故意ではない"基準のみを適用することを認識しており、上述したように、肯定的な決定ではあっても、限られた数の指定/選択官庁のみが受入れる決定しか得られない場合は、これもまた貴殿にとって関心のある選択肢になるかもしれません。
優先権の回復請求に関する詳細は、PCT出願人の手引 国際段階のパラグラフ5.062から5.069(www.wipo.int/pct/guide/en/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf)、及び"FAQ:PCT規則改正(2007年4月1日)"の優先権の回復に関する部分を、以下のリンク先からご参照ください。

www.wipo.int/pct/en/faqs/april07_faq.html#2007_restoration

また優先権の回復請求を受理する受理及び指定/選択官庁や、当該官庁が適用する各基準、及び支払う手数料の幾つかを列挙する詳細な表もご利用いただけます。本表は、上述の状況での様々な行動を受けてのメリットやデメリットを評価するのに役立つでしょう。以下のリンク先からご利用いただけます。

www.wipo.int/pct/en/texts/restoration.html

優先権の回復をテーマにすでに執筆された実務アドバイス(PCT Newsletter 2007年4月号、2009年9月号、10月号、11月号及び2015年9月号)も参考になります。