PCTニュースレター 07/2007: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
実務アドバイス(取下げられた優先権主張に関する情報の第三者による取得)
Q: 先の国内出願に基づいた優先権主張を伴う国際出願を出願後、先の出願に国際出願に含まれていない情報があることに気が付きました。そして、その情報は先の出願で最初に公開されるべきではないものでした。先の出願に含まれるその情報を公衆が閲覧できないようにする方法があるのでしょうか。優先権書類と優先権主張についての情報が第三者に取得されないようにするためには優先権主張を取下げるだけで十分でしょうか。
A: PCT に基づき優先権主張を取下げたとしても、PCT 出願に関する優先権書類自体と優先権主張の情報がどの程度第三者に閲覧可能になるのかは、以下(1)でご説明するように、優先権主張を取下げる時期に依存します。また、PCT システムのもとで取り得る手段は先の国内出願又は PCT システム外で出願した他の出願の状況と分けて考えることはできません(以下の(2)参照)。
(1)(a) 国際公開の技術的準備が完了する前に優先主張を取下げた場合国際公開の技術的準備が完了する前(つまり、公開日の 15 日より前)に国際事務局によって優先権主張の取下げの通告が受領された場合
(取下げの通告を受理官庁に送達する場合には、受理官庁が国際事務局に国際公開の技術的準備が完了する前に通告できるように、更に早く送達する必要があります。)
- 国際事務局によるパテントスコープ検索サービス(www.wipo.int/pctdb/en/)又は国際事務局に対する請求によって、優先権書類を第三者が取得することはできません(PCT 規則 17.2(c)(ii))。
- 優先権主張に関する情報は公開された国際出願のフロント頁の書誌情報には含まれません。
しかし、第三者が国際事務局に一件書類中の文書の写しを請求した場合には、第三者が優先権主張についての情報を得ることが可能である点に留意が必要です。特に、願書様式(優先権主張は第 VI 欄に記載)又は優先権主張に関する書類(優先権主張の補充又は追加、優先権主張の取下げの通告)から情報を得ることが可能となります。
それらの書類の第三者による利用は PCT 規則 94.1(b)に基づいています。PCT 規則 94.1(b)は第三者が国際出願の国際公開後に国際事務局に一件書類中の文書の写しを請求できることを規定しています(PCT 第 38 条及び PCT 規則 44 の 3.1 及びサービスの費用の支払に従う限り)。
(b) 国際出願の国際公開前であって、国際公開の技術的準備が完了した後に優先主張を取下げた場合
国際公開の技術的準備の完了から実際の公開日までの 15 日間に、国際事務局によって優先権主張の取下げの通告が受領された場合
- 国際事務局によるパテントスコープ検索サービス又は国際事務局に対する請求によって、優先権書類を第三者が取得することはできません(PCT 規則 17.2(c)(ii))。
しかし、
- 国際事務局が、公開された国際出願のフロント頁から優先権主張に関する情報を削除することは遅すぎるためにできません。
- 公開の技術的準備の完了後に優先権主張が取下げられたことを知らせる情報を国際事務局はパテントスコープ検索サービス(その国際出願の "notices" タブ)で公にします(PCT 規則 48.6(c))。
- パテントスコープ検索サービスは優先権主張が取下げられたことを書誌情報の画面("biblio. data" タブ)で指摘します。
従って、優先権主張がされた後に取下げられたことを、第三者は気付くことになりますが、優先権書類自体を参照することはできません。
(c) 国際出願の国際公開後に優先権主張が取下げられた場合
国際事務局が優先権主張の取下げの通告を国際出願が公開された後に受領した場合
- 国際事務局によるパテントスコープ検索サービス又は国際事務局に対する請求によって、優先権書類を第三者が取得可能となります(PCT 規則 17.2(c))。
- 優先権主張に関する情報は公開された国際出願のフロント頁に既に記載されています。
- 国際公開後に優先権主張が取下げられたことを知らせる情報を国際事務局はパテントスコープ検索サービス(その国際出願の "notices" タブ)で公にします(PCT 規則 48.6(c))。
- パテントスコープ検索サービスは優先権主張が取下げられたことを書誌情報の画面("biblio. data" タブ)で指摘します。
(2)国内出願の取下げ、又は、その出願を優先権主張するその他の出願
国際公開の技術的準備が完了する前に優先権主張を取下げることができたとしても((1)(a))参照)、適用される国内法に基づいて先の国内出願が公開されないように、先の国内出願も取下げる必要があります。同様に、PCT システム以外でその他の出願がされていた場合には、それらも取下げることが必要です。つまり、優先権書類が閲覧されること、又は、優先権主張に関する情報が公開されることを防ぐために、PCT 出願における優先権主張を取下げることは、先の出願やその他の関係する出願からその出願や関係する情報が閲覧可能となる要件には何ら影響を与えません。
国際公開の技術的準備が完了する前に優先権主張を取下げることができなかった場合((1)(b)及び(c)参照)、PCT システムでは優先権主張に関する情報(場合によって優先権書類自体)が第三者に閲覧可能となったとしても、先の出願自体や PCT システム外のその他の出願から閲覧される情報は制限できる可能性があります。場合によっては、情報の取得を防ぐより、情報の取得を制限する方が最適の方法かもしれません。そして、緊急事態として、適用される国内法毎に対応することになります。
(3)PCT における優先権主張の取下げに関して
優先権主張は優先日から 30 ヶ月を経過する前にいつでも取下げることができます(PCT 規則 90 の 2.3(a))。また、優先権主張の取り下げによって優先日に変更が生じる場合には、もとの優先日から起算してまだ満了していない期間は、変更の後の優先日から起算します(つまり、国際出願日、又は、他の優先権主張がある場合には、最先の優先権主張を取下げた結果による新たな優先日から再起算)(PCT 規則 90 の 2.3(d))。また、PCT 規則 90 の 2 に基づく他の種類の取下げと一緒に優先権主張の取下げを提出すること、及び、様式 PCT/IB/372(取下げの通告)を用いることが推奨されています。様式 PCT/IB/372 には、国際公開を防ぐことが可能である期間に、取下げの通告が国際事務局によって受領されたことを取下げの条件とできるチェック欄が設けてあります。
なお、取下げによって国際公開日又はその他の優先日の前に公開された先行技術文献が新規制及び進歩性の判断の対象に含まれることから、優先権主張を取下げる前に、取下げが新規性及び進歩性の判断に与える影響について十分検討することが必要です。
優先権主張の取下げに関する説明は、「PCT 出願人の手引き」第 460-461 項をご参照下さい。また、国内移行期限を延長するために優先権主張を取下げることに関しては PCT ニュースレター No. 01/2003 をご覧下さい。