PCTニュースレター 09/2026: 実務アドバイス

注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

国際予備審査の請求について

Q: PCTに基づく国際出願を行い、先日、国際調査機関 (ISA) から見解書を受け取りました。残念ながら、国際調査の結果の一部は好ましくないものでした。PCT第II章に基づく国際予備審査の請求をする価値はあるのでしょうか?もしあるのであれば、この手続にはどのような内容が含まれるのか教えてください。

A: 簡単に言えば、国際予備審査とは、国際段階における任意の手続であり、出願人は、国内段階に移行する各国の国内官庁に個別に抗弁を提出する代わりに、ISAの見解書に対して正式に答弁し、国際出願を補正することができます。これを行うには、管轄する国際予備審査機関 (IPEA) に請求書 (様式PCT/IPEA/401 (日本語版記入例)) を提出し、関連する手数料を支払う必要があります。

国際予備審査は、国際段階において、出願人がISAとIPEAの審査官とやり取りができる唯一の機会ですが、その期間は限られています。また、国際段階において、出願人が明細書や図面を補正し (PCT第34条と規則66)、その補正について審査を受け、審査官の指摘に対して反論を提出できる唯一の機会でもあります。また、出願人は、国際予備審査の期間中、請求の範囲を補正してその審査を受けることも可能です。これは、国際調査の期間中に国際公開がされる前にPCT第19条に基づき提出される、請求の範囲の補正とは異なる点です。

国際予備審査の請求をする権利 (PCT規則54)

国際予備審査の請求をする時点で、少なくとも1人の出願人がPCT締約国の居住者又は国民でなければなりません。国際出願日の付与後に、当初の出願人が当該出願の権利を、第II章に拘束されるPCT締約国[1] の国民又は居住者ではない出願人に譲渡した場合には、請求する権利を失うことがあります。

国際予備審査の請求後に支払う手数料 (PCT規則57と58)

出願人は、国際予備審査手数料 (選択した管轄IPEAによって金額が異なる) と、国際事務局への取扱手数料の200スイスフランを支払う必要があります。両手数料ともIPEAに支払います。手数料の金額については、PCT出願人の手引の附属書Eをご参照ください。手数料は、請求書の提出日から1か月以内、又は優先日から22か月以内のいずれか遅い方の期間までに支払う必要があります。手数料が支払われるまで審査が開始されないため (PCT規則69.1(a))、手数料はできるだけ早くお支払いください。

国際予備審査を請求するメリットとは

前述のとおり、国際出願の明細書や図面を補正したい場合には、国際予備審査を請求する必要があります。また、国際調査機関の見解に同意できない場合も、国際予備審査を請求することで、審査官に考慮してもらうための正式なコメントを提出する機会が得られます。これにより、国際出願の内容から審査官の懸念を取り除き、国際段階において全面的に肯定的な国際予備審査報告を取得できる可能性が高まります。肯定的な報告は、商業的な観点からも有益な情報源となり得ます。国際予備審査がもたらす費用対効果は、国内段階移行する予定の官庁数や、各国の実体特許法の違いを考慮して判断する必要があります。場合によっては、例えば特許対象となる事項に関する各国間の違いを考慮するなど、請求を行うよりも、国内段階まで待って、現地の法律や慣行に合わせて補正や反論を調整する方が望ましいこともあるでしょう。er than filing a demand, for example to take into account differences among countries regarding patentable subject matter.

請求時期と請求先

優先日から22か月が経過する前であれば国際予備審査を請求することは可能ですが、早期に手続を開始すれば、国際予備審査の手続に充てられる時間が長くなります。したがって、国際調査の結果 (通常、優先日から約16か月後に到着) を受け取ったら速やかに確認し、請求をするかどうかをできるだけ早く決定してください。時間に余裕があれば、審査官は追加の意見交換の機会を提供してくれる可能性が高くなります。

どのIPEAを利用できるのか、また複数の機関から選択可能なのか、あるいは一つのIPEAに限られるかは、どの受理官庁を利用したかによって決まります。ただし、一部の機関は、自ら国際調査を行った場合に限定してIPEAとして対応する場合があります。国際予備審査を請求する前に、希望する機関が、該当する出願の審査を管轄しているかを確認してください。関連情報は、PCT出願人の手引の附属書CとEに記載されています。

請求手続

管轄するIPEAがePCT経由で請求を直接受け付けていない場合でも、ePCTを利用して国際事務局 (IB) 経由で請求書を提出することができます。IBは、その請求書を管轄IPEAに転送します (PCT規則59.3)。請求書は、IBがそれを受領した日に提出されたものとみなされますが、手数料の支払期間である1か月の期間は、IPEAがその請求書を受領した日から起算されます。

請求書の様式には、IPEAが審査の基礎とするべきものが、当初提出された出願なのか、PCT第19条に基づく補正、及び/又はPCT第34条に基づく補正のいずれであるかを明記し、関連する補正書を添付する必要があります。

IPEAは、原則として、ISAの見解書を自らの最初の見解書とみなします (PCT規則66.1の2(a))。そのため、国際予備審査報告を作成する前に、ISAの見解書に加えて、別途見解書を作成する義務はありません。ただし、報告の作成を開始する前に受領した補正や反論は考慮に入れなければなりません (PCT規則66.4の2)。IPEAが見解書又は報告を発行する時期に関する実務は様々です。したがって、関連するIPEAに直接確認することをお勧めします。一部のIPEAは、出願人がISAの見解書に対する実質的な答弁を提出し、その答弁に対し異議を申し立てる必要がある場合には、追加の見解書を発行します。ただし、管轄するIPEAが追加の見解書を発行する意向があるかどうかが不明な場合、出願人は、審査官と少なくとも1回の対話を確保するために、国際予備審査の請求時に口頭審理を請求すべきです。

また、IPEAは、国際調査報告が作成された日以降に発行された先行技術文献やIPEAが調査のために利用可能となった関連する先行技術文献を発見するための、義務付けられた「トップアップ調査」を行います (PCT規則66.1の3)。新しく発見された先行技術文献が異議申立てに用いられる場合には、出願人に対し意見を提起する機会が与えられなければなりません。

なお、IPEAは、ISAが調査した請求の範囲のみを審査する義務を負う点にご留意ください。すべての請求の範囲について調査報告が作成されていない場合には (PCT第17条(2)(a))、国際予備審査の請求をしても、その請求の範囲について効果を生じません。

IPEAは、国際予備審査の終了時に、特許性に関する国際予備報告第II章 (IPRP II – International Preliminary Report on Patentability, Chapter II) (国際予備審査報告 (IPER – International Preliminary Examination Report) とも呼ばれる) を作成します。各国内官庁は、この報告に拘束されるものではありませんが、肯定的な評価を得ることで、国内手続を円滑に進められるだけでなく、特許審査ハイウェイ (PPH – Patent Prosecution Highway) の参加庁において、出願処理の迅速化が可能となります。

このトピックに関する追加情報は、過去の PCT ニュースレターの以下のバックナンバーに掲載された実務アドバイスをご参照ください。

  • 2026 年 2 月号: 国際予備審査を請求した後のPCT第34条に基づく補正書の提出
  • 2021 年 9 月号: 国際出願の早期国内段階手続の申請
  • 2020年9月号: 第三者による国際予備審査の一件書類中の情報の利用
  • 2019年6月号: (PCT 規則69.1(A) の修正を受けて考慮すべき) 国際予備審査開始のタイミング
  • 2010年4月号及び2010年5月号: 国際予備審査を請求するか否かの決定を行う際に考慮すべき要素 パート1と2

また、第II章の手続に関する詳細な説明は、PCT出願人の手引の国際段階の概要、第10章をご参照ください。

1. ウルグアイは、PCT第64条(1)(a) に基づき第II章の規定に拘束されないことを宣言しています。