PCTニュースレター 12/2014: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
国際出願における欠落部分の引用による補充の確認を満たす条件
Q: 2週間前に国際出願を提出しましたが、ePCT プライベートサービスで提出した国際出願を閲覧した際、請求の範囲の最後の頁が欠落していることに気付きました。その欠落した請求の範囲は、当該国際出願で主張された優先権の基礎となる先の出願に含まれているので、PCT 規則 4.18 に基づき引用による欠落頁の補充を望みます。しかし、引用による補充を確認するための要件の一つに先の出願の写しを提出することとあります。当方はまだ優先権書類を入手できておりませんが、国際出願日に影響せずに欠落した請求の範囲の頁を引用により補充することは可能でしょうか。また当該請求をするにあたり、何か他にすべきことがあればご助言いただけますか。
A: PCT 規則 20.6 に基づく、欠落部分の引用補充を確認するための要件の一つは、PCT 規則17.1(a)、(b)又は (b の 2)の規定に従っていない場合には、先の出願の写しを提出することです。しかし、これは先の出願の認証謄本である必要はありません。PCT 規則 20.6 に基づく要件を満たすには、先の出願の単なる写しを提出すれば十分です。1
PCT 規則 20.6 に従い、請求の範囲の欠落頁の引用補充を確認するために、PCT 第 11 条(1)(iii)に規定する一又は二以上の要素を受理官庁が最初に受理した日から 2 ヶ月以内(PCT 規則20.7 参照)に、受理官庁に対して PCT 規則 4.18 に基づき当該国際出願に引用により補充される欠落部分を確認する書面の通知を提出しなければいけません。そして、その通知には次の書類を添付する必要があります:
- 欠落頁(当該部分が先の出願のどこに記載されているかについて通知に示す)
- 先の出願の単なる写し(先の出願の認証謄本を提出していない又は利用可能ではない場合)
- 先の出願が国際出願の言語と異なる場合、先の出願の国際出願の言語での翻訳文、又は、PCT 規則 12.3(a)又は 12.4(a)に基づき国際出願の翻訳文が求められる場合(それぞれ国際調査、国際公開のための翻訳文)は、国際出願の言語に加え、その翻訳文の言語による翻訳文
さらに、出願時に以下の文言が願書様式(PCT/RO/101)に含まれていなければなりません。
"引用による補充:条約第 11 条(1)(iii)(d)若しくは(e)に規定する国際出願の要素の全部、又は規則 20.5(a)に規定する明細書、請求の範囲若しくは図面の一部がこの国際出願には含まれていないが、受理官庁が条約第 11 条(1)(iii)に規定する要素の 1 つ以上を最初に受領した日において優先権を主張する先の出願にそれが完全に含まれている場合には、規則 20.6に基づく確認の手続を条件として、その要素又は部分を規則 20.6 の規定によりこの国際出願に引用して補充することを請求する。"
願書様式の最新版を利用すれば第 VI 欄の下段にすでに記載されており、PCT-SAFE や ePCT出願の電子版の願書にも自動的に含まれているので、特に問題にはなりません。また、国際出願を提出する受理官庁が引用による補充の確認のための請求を受け入れるかどうか確認する必要があります。多くの受理官庁は国際事務局(IB)に対し、欠落(要素又は)部分の引用による補充に関する PCT 規則が、当該官庁において適用される国内法令に適合しない旨を通知しています。2
その結果、IB に対し通知したこれら受理官庁は、引用による補充に関する PCT 規則を適用せず、その代わり、欠落部分を後日提出した場合は、国際出願日を当該受理官庁が欠落部分を受理した日に訂正します。しかし、出願人は、欠落部分を無視するよう請求することにより当初の出願日を維持するという選択肢を有します(PCT 規則 20.5(e))。もし、そのような受理官庁に対して国際出願が提出された後に欠落部分を補充する必要が生じた場合、出願人は当該受理官庁に対して、PCT 規則 19.4(a)(iii)に基づき、欠落部分の補充を受け付ける IB の受理官庁に国際出願を送付するよう請求することができます。
受理官庁が欠落部分の補充を認めたとしても、指定(及び選択)官庁の中には、限られた範囲内で、受理官庁の引用による補充の決定を再度確認することもあります(PCT 規則 82 の3.1(b)から(d)参照)。さらに、多くの指定官庁は IB に対し、欠落(要素又は)部分の引用補充に関する PCT 規則が、当該官庁において適用される国内法令に適合しない旨を通知しています。3 つまり、PCT 規則 20.6(b)の規定に基づき受理官庁の発見によりある部分を引用により当該国際出願に含めたが、当該引用補充は、それら指定官庁での手続上、当該国際出願には適用されず、当該指定官庁は国際出願日が欠落部分の受理日に変更されたものとして当該出願を取り扱うことができます。
国際出願の欠落分及び要素の補充の確認に関する詳細は、次のリンク先の PCT 出願人の手引パラグラフ 6.025 から 6.031 をご参照下さい。
http://www.wipo.int/pct/guide/en/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf
- 先の出願の認証謄本は、優先日から 16 ヶ月以内(又は国際出願の国際公開の日前に国際事務局(IB)に受理される場合はより遅い時期(PCT 規則 17.1 参照))に提出できます。
- 次の国の受理官庁は、PCT 規則 20.8(a)に基づき、PCT 規則 20.5(a)(ii)及び(d)及び 20.6 が、当該官庁で適用される国内法令に適合しない旨を国際事務局に通知しました:ベルギー、キューバ、チェコ共和国。ドイツ、インドネシア、イタリア、メキシコ、大韓民国
- 次の国の指定官庁は、PCT 規則 20.8(a)に基づき、PCT 規則 20.5(a)(ii)及び(d)及び 20.6 が、当該官庁で適用される国内法令に適合しない旨を国際事務局に通知しました:中国、キューバ、チェコ共和国。ドイツ、インドネシア、リトアニア、メキシコ、大韓民国、トルコ