注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

戦略的な出願:

管轄国際調査機関が一つ以上ある場合にどの国際調査機関を選択するかを決定する際に考慮すべき点

Q: 当方はある国際出願の唯一の出願人です。ある受理官庁に出願する予定ですが、当該受理官庁が特定している管轄国際調査機関がいくつかあります。どの官庁を選択するかを決定する際に考慮すべき主な点は何でしょうか?

A: 各受理官庁は、当該受理官庁に対して行われた国際出願について、それぞれ国際調査及び国際予備審査を実施する管轄となる国際調査機関 (ISA) 及び国際予備審査機関 (IPEA) を一以上特定しています (PCT規則35)。複数のISA/IPEAが管轄している場合には、(以下に説明する制約を受ける場合がありますが) その中から選択することができます。この実務アドバイスでは、よりシンプルに説明するために、IPEAと国際予備審査手続には触れずに、ISAと国際調査手続に限って説明します。  

出願人が受理官庁としての国際事務局 (RO/IB) に対して国際出願を行う場合、管轄ISAの選択肢は、出願人 (又は出願人が一人以上いる場合には、そのうちの一出願人) が居住者若しくは国民である締約国の国内官庁、又は当該締約国のために行動する国内官庁、或いは政府間機関に通常出願した場合と同様になる点にご留意下さい(PCT規則35.3)。

各受理官庁が管轄しているISA については、PCT出願人の手引 附属書Cを確認して下さい。複数の国際調査機関 (ISAs) が国際調査の実施を管轄している場合には、出願人は出願時に、願書の第VII欄に選択した機関を記載する必要があります。

管轄機関を選択する前に考慮すべき主な点を、以下に説明します。

利用する受理官庁に応じて異なるISAが選択可能な場合:

出願人が居住者である締約国が、当該出願人が国民である締約国とは異なる場合、国際出願できる受理官庁の選択肢が広がることがあります。各受理官庁が当該官庁の管轄ISAを特定するため、国際出願を行う受理官庁を選択する際に、利用可能なISAについて慎重に検討すべきです。また、将来のある出願において、異なる国籍と居住地を有する複数の出願人がいて、RO/IBに出願する場合には、より多くの管轄ISAから選択することができるでしょう。それは、管轄ISAの選択は、出願人が利用可能であった全ての国内受理官庁若しくは広域受理官庁のために管轄したであろうISA全てを含むためです。

国際調査で認められる言語:

ISAを選択する際には、国際出願について調査の実施を管轄するISAが認める言語を考慮すべきです。国際調査の目的のみで国際出願を翻訳することを避けたいのであれば、提出している国際出願の言語を認めているISAを選択するのが望ましいでしょう (PCT規則12.3)。各ISAが認めている言語については、PCT出願人の手引 附属書Dに記載されています。

ISAが徴収する調査手数料 (及びその他の関連手数料):

出願人にとって、特定の官庁に国際調査の実施を請求する際の手数料が、重要な検討材料になるかもしれません。調査手数料及び関連手数料は、担当するISAが設定しているため、手数料はかなり異なります。加えて、一部の官庁は、国内官庁若しくは広域官庁として遂行する実務に応じて、特定の状況において (特に中小企業や低所得若しくは中所得経済からの出願人を対象として) 調査手数料の減額を行っています。また、特定のISAが国際調査を実施した場合、国内/広域段階で支払う手数料の一部が減額されることがあります。調査手数料や調査手数料の減額についての情報は、該当する場合、PCT出願人の手引 附属書Dに記載されています。また、利用可能な国内手数料の減額に関する情報は、該当する場合、PCT出願人の手引の対応する国内編に記載されています。

国際調査の品質、国際調査報告 (ISR) 及び見解書の発行の適時性:

出願人は、ISAの評判、つまりPCT国際調査及び予備審査ガイドラインの第21章 (「国際調査及び予備審査のための共通の品質枠組み」) への準拠や、報告書発行の適時性における信頼性を考慮するとよいでしょう。参考情報として、以下の役立つリソースがあります。

  • PCT国際機関品質報告

/pct/en/quality/authorities.html (英語版) 及び

  • PCT年次報告に再掲載されている報告書発行の適時性に関する統計 -最新版は次のリンクから利用可能

https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_901_2021.pdf (英語版)
(機関によるIBへのISR送付の適時性に関する統計は、84及び85ページに掲載)

ISAが調査を行わない対象:

PCT規則39に従い、国際出願の対象が当該規則の (i) から (vi) のいずれかである場合には、ISAは国際出願の調査を実施する必要はありません。国際出願がそれらの対象のいずれかに関連している場合、当該出願の対象を調査する旨を記載しているISAを選択するとよいでしょう。詳細は、PCT出願人の手引 附属書Dの各ISAのページに記載されています。

先の国内出願を調査した官庁とは異なる官庁に調査を請求するかどうか:

(国内、広域若しくは国際出願のいずれであっても) 先の出願の優先権を主張している場合で、先の出願を調査した官庁が管轄ISAでもあるならば、より早期に調査結果を得るため、又は可能な手数料の減額を受けるため、同一官庁をISAとして選択することを希望する場合があるでしょう。また、場合によっては、特定の官庁(現在、欧州特許庁、フィンランド特許登録庁、イスラエル特許庁、スペイン特許商標庁で利用可能)に対していわゆるPCTダイレクトサービスを利用することもできます。この制度では、当サービスを提供している官庁に国際出願を行った出願人は、当該官庁で既に調査された先の出願からの優先権を主張する場合、優先基礎出願について作成された調査報告及び見解書で提起された異議に応答するための非公式コメントを提出することができます。

または、国際調査について異なる視点を得るために、別のISAに調査の実施を請求したいこともあるでしょう。例えば、調査を行う審査官の言語の専門知識や、ISAがPCT最小限資料の他に調査できる特定の文献コレクションに基づいてISAを選択することもできます。

IPEAを選択する上での制約:

一部のIPEAは、当該機関若しくは別の特定されたISAが国際調査を実施した出願に限って、国際予備審査を行います。そのため、出願人が特定のIPEAに国際予備審査の実施を請求したいのであれば、この制約がISAの選択に影響することがあります。

先行技術に関する考慮:

出願人が、特定の地域に限って発明の保護を求める場合、その地域に特に関連する先行技術を調査するISAを選択できれば有益でしょう。例えば、発明の保護が韓国で必要であれば、(可能な場合) ISA/KRを選択すれば、当該官庁が韓国語の関連する先行技術文献を発見する可能性があるため、価値があるかもしれません。他のISAは、言語の理由によりそれらの文献を利用できないことがあるためです。また、国際出願についてISAとして行動し肯定的なISRを作成した同一官庁に国内段階移行する場合には、国内審査において当該官庁からより早期に肯定的な結果を得られるはずです。

一部ISAによる国際調査の実施件数の制限:

一部のISAは、特定の受理官庁に対して行われた国際出願に関して、調査する国際出願の件数を制限しています。例えば、ISAとしてのオーストラリア特許庁とイスラエル特許庁は、受理官庁としての米国特許商標庁に対して行われた出願に関して、調査する国際出願の件数を制限しています。このような制限については、PCT出願人の手引に表示されています (関係する管轄受理官庁に関連する附属書Cをご参照下さい)。

特許審査ハイウェイの利用可能性:

出願人が、PCT特許審査ハイウェイ (PCT-PPH) のワークシェアリングスキームを利用して出願の審査手続を早期に行うよう複数の国内官庁に請求し、国内段階における出願の早期審査を希望するのであれば、どの国内 (又は広域) 官庁が関係する管轄ISAとPCT-PPHの合意があるのかを確認して下さい。二庁間又は多庁間の合意に関する詳細は、以下のリンクから、PCT-PPHプログラムのページをご参照下さい。

/pct/en/filing/pct_pph.html

また、以下のリンクから、PCTニュースレター 2021年9月号のPCT-PPHプログラムに関する「実務アドバイス」もご一読下さい。

https://www.wipo.int/edocs/pctndocs/en/2021/pct_news_2021_9.pdf (英語版)

/pct/ja/newslett/2021/9_2021.pdf#page=6 (日本語版)

ISAが補充国際調査 (SIS)も実施しているのかどうか:

追加の手数料 (補充調査手数料及び補充調査取扱手数料) が必要となりますが、出願人は、国際段階のいつでも、補充国際調査機関 (SISA) として現在同調査を提供している10機関のいずれかにSISを請求することができます。SISAの選択は、出願人が国際出願を行う受理官庁によって決定されるわけではありませんが、SISAは国際調査を実施した機関とは別の機関である必要があります。SISを請求する予定がある場合、出願人はISAと同一のSISAを選択することはできないため、国際調査を実施するISAの選択に影響を及ぼすことがあります。