注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

国際出願の早期公開請求

Q: まもなく国際出願が出願される出願人の代理人です。出願人は出願が早期に公開され、発明が出来る限り早く先行技術の一部になることを望んでおります。PCT第21条(2)(b)に基づき、出願の早期公開を請求する場合、認識しておくべき事項はあるでしょうか?

A: 国際出願は公開されると速やかに先行技術の一部となります(PCT 規則 34.1(b)(ii)参照)。より早期の公開は、競合他社が通常よりも早く貴殿の出願内容を確認することが可能になることを明らかに意味します。さらに、出願の早期公開は同様の分野での貴殿の後続の出願に関して貴殿に対し引用される可能性があるため、早期公開は非常に慎重に考慮される必要があります。とはいえ、多くの出願人にとって、早期公開は大きな利点をもたらす可能性があります。より早期の公開は第三者により出願される特許出願の今後の調査において、結果的に通常よりも早い期日から効力を有する先行技術として引用され得る可能性があります。これは同様の又は密接に関連する発明の特許を第三者が取得することをより妨げやすくするでしょう。これが貴殿を競合他社より優位な立場にさせるでしょうし、国内段階移行の予定がない国において特に有益になることがあります。より早期の公開は発明が公衆にとりより早く利用可能になることも意味し、特定の指定(選択)官庁及び特定条件の下、より早く暫定的な保護が付与される場合があるでしょう。

国際公開は通常、優先日から 18 ヶ月の満了後速やかに行われます(PCT 第 21 条(2)(a))。上述期間の満了前に国際出願の公開を国際事務局(IB)に請求する場合(PCT 第 21 条(2)(b))、通常より早く公開が行われます。ePCT プライベートサービスの"早期公開請求"の Action 機能を利用して IB へオンラインの請求を提出することによりこれを行うことが可能です。早期公開請求に署名し提出した後、ePCT の Action 機能が、IB の手続のため適切に提出されたことを確認するメッセージが表示されます。国際出願の早期公開は ePCT パブリックサ-ビスへ署名済みの書簡をアップロ-ド又は IB へのファックスやメールの送付による方法でも請求が可能です。

必要な手数料が支払われたことを条件に、IB は早期公開請求の受理後速やかに国際出願を公開するよう最大限努めます。ただし、IB は実務的な理由で、出願の公開準備に時間が必要なため、公開は即時には行われないことにご留意ください。例えば、要約がまだ翻訳されていない場合、PCT 翻訳部が翻訳に時間を必要とするでしょう。IB は早期公開請求の受理を認め、新しい公開予定日を通知します。

ただし、国際出願の早期公開請求は、国際段階の特定の手続に影響する場合があるため、そのような請求を行う前に以下の事項を考慮するようお勧めいたします。

受理官庁としての IB (RO/IB) への国際出願

国際公開が国際段階において出来る限り早期に行われるよう請求することを望まれる場合には、RO/IB に出願する利点を考慮してもよいでしょう-受理官庁として行動する国内及び広域官庁が IB へ記録の写しを転送するのに費やす時間を省き、公開前の手続の時間を短縮できるでしょう。RO/IB への国際出願に関する情報は、下記ウェブサイトにて"PCT 受理官庁(RO/IB)としての国際事務局への直接出願"をご覧ください。

http://www.wipo.int/pct/en/filing/filing.html

IB が ISR をまだ利用可能でない場合の早期公開請求

国際出願の早期公開を非常に早い時期に請求する場合、国際調査機関(ISA)は国際調査を実施する時間がないことがあり、その場合国際出願は国際調査報告(ISR)なしで公開されなければなりません(若しくは、場合によっては、PCT 第 17 条(2)に基づく宣言により ISA は調査を実施しません)。ISR を国際出願と共に公開することができない場合には、IB は PCT 出願人の手引 附属書 B(IB)に表示されている料金である、特別公開手数料(執筆時は、200 スイスフラン)を課すでしょう。早期公開請求の受理後及び特別手数料の支払い後、国際公開は出来る限る速やかに行われます。ISR の受理後、国際出願は再公開されます。又 PCT 第 19 条(PCT 規則46.1 参照)に基づく請求の範囲への補正を行うために ISR の作成から 2 ヶ月若しくは優先日から 16 ヶ月(いずれか遅く満了する期間)の期間があるため、IB が当該期間内にそのような補正を受理する場合、国際出願は再度公開されます。

IB が国際調査報告(ISR)を利用可能である場合の早期公開請求

IB が ISR をすでに利用可能な場合には、早期公開請求を行うための手数料の支払いはありません。国際公開は出願人の早期公開請求の受理後速やかに IB により行われるでしょう。上述のように、PCT 第 19 条の補正を行うのに ISR の作成から 2 ヶ月若しくは優先日から 16 ヶ月(いずれか遅く満了する期間)の期間があり、IB が当該期間内に補正を受理すれば、国際出願は再公開されます。

通常より早めに取るべき行動

国際出願の早期公開を請求する場合、公開の技術的な準備の(より早めの)完了前(通常国際公開の 15 日前に完了)に取るべき特別な行動があります。技術的な準備の完了前に十分な時間を持って準備する必要がある行動を以下に説明します。

  • 出願人、代理人、共通の代表者又は発明者に関しての PCT 規則 92 の 2 に基づく変更を国際公開に反映する場合の当該変更の請求。
  • 国際出願の様式上の欠陥の補充:公開される国際出願に補充の内容も含めたい場合、国際出願のあらゆる様式上の欠陥は早期公開を請求する前又は請求時に補充されるべきです。とはいえ、受理官庁が、国際公開の技術的な準備の完了後に満了する期間を提示して補充をするよう求め、公開の技術的な準備の完了後に補充を提出する場合には、いずれの補充も国際出願の再公開の対象になるでしょう。
  • 優先権の主張の補充又は追加:PCT 規則 26 の 2.1(a)に基づく優先権主張の補充又は追加を請求する必要がある場合は、国際出願の早期公開の請求前に行われるべきでしょう-後から行う場合は、早期公開請求が国際公開の技術的な準備の完了前に取下げられていなければ、補充/追加の請求は提出されていないものと見なされます(PCT 規則 26の 2.1(b))。
  • 国際段階での優先権回復の請求:PCT規則 26 の 2.31に基づく優先権回復の請求を希望される場合は、国際出願の国際公開の技術的な準備の完了前に回復請求の全ての要件 2が満たされている必要があります(当該完了日が優先権期間の満了日から 2 ヶ月の優先権回復請求期間の満了前に当たる場合)(PCT規則 26 の 2.3(e))。
  • 生物材料の寄託に関する言及を含めること:国際出願の出願時にすでに寄託された生物材料に関する表示の提出を求める指定(選択)官庁が幾つかありますが、早期公開の請求時にそのような表示を提出するよう求める官庁もあることにご留意ください(PCT規則 13 の 2.4(c))。これに関する指定官庁の要件の詳細は、PCT 出願人の手引 附属書L をご参照ください。
  • 国際公開のための国際出願の翻訳:国際出願の出願言語が公開言語ではない場合で、公開の技術的な準備の完了日が優先日から 14 ヶ月の満了前に当たる際には、当該準備の完了前に翻訳が提出されるよう確実にすべきです(PCT 規則 12.4(a))。
  • 国際公開を回避するのに十分な時間においての PCT 規則 90 の 2.1、90 の 2.2 又は 90の 2.3 に基づく国際出願、指定又は優先権主張の取下げ。

PCT 規則 4.17 に規定する申立ての追加のための PCT 規則 26 の 3 に基づく期間、及び PCT 規則 17.1(a)に基づく優先権書類を提出する期間は、早期公開請求による影響はありません。

国内段階への早期移行

早期に特許を取得するため、特定の指定(又は選択)官庁に対して国内段階への早期移行の請求(PCT 第 23 条(2)及び第 40 条(2))を考慮したい場合もあるでしょう。これは国際公開後暫定的な保護を付与しない官庁に関し特に有益なものになるでしょう。国際出願の国際公開は国内段階移行への条件ではありませんが、特定の指定(選択)官庁の国内法令は当該出願の国内審査を開始する前に国際公開が行われたことを求める場合もある点にご留意ください。早期国内段階移行の詳細は PCT Newsletter 2006 年 8 月号及び 2011 年 10 月号をご覧ください。

  1. つまり、先の出願の優先権の主張をしており、当該優先期間内に国際出願が提出されなかったが、当該満了の日から2ヶ月の期間内に提出する場合、状況により必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらずそのような事態が生じた、又は故意ではなかったことを説明することができます。
  2. つまり、受理官庁への回復請求の提出(優先期間内に国際出願が提出されなかったことの理由を記載する書面を含む)、欠落している優先権主張の追加請求の提出及び適用される手数料の支払いを意味します。