PCTニュースレター 10/2012: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
国際出願において出願人として発明者を記載することが依然として利益がある状況
Q: 米国の代理人で、過去数年にわたり、受理官庁としての米国特許商標庁(RO/US)に対し、英国に居住地及び国籍を有する企業出願人及び米国に居住地及び国籍を有する出願人/発明者である多数の国際出願を行ってきました。2012 年 9 月 16 日付の米国発明法に含まれる変更の発効に基づいて、同日以降に行われた国際出願において米国の指定についての出願人として発明者の名前を記載することがもはや要求されなくなり、企業出願人が英国に居住地及び国籍を有する者であるならば、願書様式において発明者が発明者のみとして記載される場合に RO/US に出願することが依然可能でしょうか?
A: 米国の住所又は国籍を有する出願人がいない場合、 RO/US への有効な国際出願の提出は不可能です。国際出願は、出願人がその居住者か国民である締約国の国内官庁又はその締約国のために行動する国内官庁、あるいは受理官庁としての国際事務局に対してのみ、行うことができます(PCT 規則 19.1)。したがって、出願人が英国の居住地及び国籍を有する者のみであれば、出願は RO/GB、RO/EP 又は RO/IB にのみ行うことが可能です。もし RO/USに対して国際出願を行うことを試みた場合、国の安全に関する適用規定を満たし、PCT 規則19.4(b)に言及されている手数料が支払われると、PCT 規則 19.4(a)(i)に基づき、当該出願はRO/IB に転送され、その後の手続きが行われます。
また、上記三官庁の一つに対して国際出願を行う場合、代理人は出願人の居住地又は国籍の締約国の国内官庁又はその締約国のために行動する国内官庁に対して業として手続をとる権能を有しなければならないため、質問者(米国の代理人)は代理人として行動する資格がなくなります(PCT 規則 83.1 の 2、規則 90 参照)。したがって、唯一の出願人が英国の居住者及び国民であるため、代理人は RO/GB 又は RO/EP に対して業として手続をとる権能を有しなければなりませんが、質問者は RO/US に対してのみ業として手続をとる権能を有していると思われます。
さらに、上記三官庁のいずれかに国際出願が行われ、国際出願において記載された唯一の出願人が英国の居住者及び国民である場合、PCT 規則 35.3 及び 59.1(b)に従い、管轄国際調査機関(ISA)及び国際予備審査機関(IPEA)は EPO のみとなり、USPTO は管轄国際機関ではありません。
この種のシナリオでは、少なくとも一人の発明者を少なくとも一つの指定国についての出願人とすることを維持する理由になり得るでしょう。願書様式(PCT/RO/101)の第 III 欄にのいて、出願人及び発明者が全ての指定国についての出願人又は追記欄に記載された国についての出願人であることを記載する方法、あるいは、PCT-SAFE 又は他の電子出願ソフトウェアを利用した場合に関連する記載を行う方法により、実施することができます。米国の指定についての出願人として発明者を表示する要件はもはやなくなったにもかかわらず、上記のような出願人の記載は、PCT 規則に基づいて異なる指定国について異なる出願人を記載することが依然可能であることから、欠陥とはみなされず、いかなる実質的権利を失うことにはならないでしょう。一以上の発明者を出願人として維持しておくことにより、出願人はRO/US に対して出願を行うことが可能になり、ISA 及び IPEA として USPTO 及び RO/USによって特定された他の ISA/PEA を選択することが可能になり、質問者が受理官庁及び国際事務局に対して出願人を代理することが可能になります。このような方法を選択する場合、受理官庁又は国際事務局から送付される、PCT 規則 92 の 2 に基づく出願人/発明者のステータスを発明者のみに変更するための変更の要請の可能性をリマインドするための通知、あるいは電子出願ソフトウェアにおける同様の警告メッセージを考慮する必要はありません。発明者のうちの一人の名前を出願人として選択する場合、その後の取下げ(指定、優先権の主張又は国際出願)を希望する際にその出願人/発明者の署名が要求される点考慮しておくべきです。
受理官庁の管轄の決定及び ISA の選択肢の決定に関連があるのは、国際出願日時点で表示されている出願人の国籍及び居住地であり、その後の変更に関係がない点、注意が必要です。したがって、出願人として企業出願人のみを記載した国際出願をすでに行っている場合、発明者のステータスを出願人/発明者に変更するための PCT 規則 92 の 2 に基づく変更の記録の要請により、この実務アドバイスの冒頭の状況を改善することはできません。RO/US に対して出願するためには、出願時に米国の居住地又は国籍を有する出願人が存在しなければなりません。
米国のみについての出願人として発明者を記載する一般的な実務は継続されない予定ですが(特に、願書様式及び電子出願での様式において、その可能性の提供がもはやおこなわれなくなるので)、特に、全ての出願人が同じ居住地及び国籍を有している場合は、この実務を行うことが依然考慮される、という状況もあり得るでしょ。特に、異なる PCT 締約国からの出願人が存在する場合、受理官庁、ISA 及び IPEA の選択肢は広がります。したがって、国際出願を行う際、出願人とみなされる者を決定する前に、出願の特別な状況を慎重に検査すべきです。
PCT Newsletter 2012 年 10 月号に掲載された実務アドバイスの補足:国際出願において出願人として発明者を記載することが依然として利益がある状況(第 2 部)
PCT Newsletter 2012 年 10 月号の実務アドバイスについて補足いたします。PCT 出願において、最近の米国国内法の改正により米国指定の目的で発明者を出願人として表示する必要がなくなったのですが、先の記事では発明者を少なくとも 1 つの指定国の出願人として記載することが依然として有益であるかもしれないという状況について説明しています。
国際出願に際して出願人としてどのような者を含むことができるかということですが、その者は出願する権利を有している必要があります。そうでない一つの状況として、次のケースがございます。国際出願以前に、発明者がすでに出願人、たとえば、彼または彼女が勤務している会社に、発明の権利を譲渡してしまっている状況です。
特定の状況において、"主"出願人の権利は慎重に考慮されなければならないということにご留意ください。また、その出願人が出願人として追加する者を承認し、そのような"共同"出願に関する全ての法的意味を理解されるべきであることにご留意下さい。