注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

国際公開前の早期国内段階移行

Q: 当社は比較的新しい会社で、できる限り早期に最新製品をグローバル市場に提供するとともに、増加している国際パテントポートフォリオを示すことによる投資の促進に関心があります。すでに多くの国際出願を行い、国際調査報告及び国際調査機関の見解書も作成されていますが、まだ出願は国際公開されていません。これらの出願について早期国内段階移行の請求は可能でしょうか、それとも国際公開されるまで待たなければならないのでしょうか。

A: PCT第 23 条(1)及び第 40 条(2)によると、指定/選択官庁はPCT第 22 条(1)及び第 39 条(1)に基づいて指定されている期限前に国内手続を開始するいことはできません(多くの場合、この期限は優先日から 30 ヶ月ですが、例外に関する詳細は次のウェブサイトの期限に関する表をご参照下さいhttp://www.wipo.int/pct/en/texts/time_limits.html)。

しかしながら、PCT 第 23 条(2)及び第 40(2)には、指定/選択官庁は、出願人の明示の請求により、国際出願の処理又は審査をいつでも行うことができる旨規定されています。したがって、上記期間の満了より早期に国内段階に移行することができます。国内段階に移行するために国際出願が公開されているという要件はありません。

本件の場合、国際出願がまだ国際公開されていないので、通常、指定官庁は当該国際出願の写しを請求するでしょう。しかしながら、場合によっては、PCT第 13 条に基づき、国際出願の写しの受領を希望しない旨を国際事務局に通告している官庁に対しては必要ありません(この情報について、 PCT 出願人の手引きの国内段階の概要の関連事項を参照(http://www.wipo.int/pct/en/appguide/index.jsp))。他の全ての場合についても、出願人が国際出願の国際公開前に指定官庁に対して、PCT第 23 条(2)に基づく明示の請求を行った場合には、国際出願の写しを提出した場合にのみ当該請求は考慮されるでしょう。そのために、出願人はPCT規則 47.4 に基づき、国際事務局に対して、国際出願の写しの指定官庁への送達を請求することができます。

PCT 第 22 条に基づく国際段階への移行のために定められている他の規定(早期国内段階移行を請求している国際出願に対し、必要な場合、翻訳文の提出、及び、該当する場合、国内手数料の支払)も当然、出願人が早期国内段階移行の請求の前に満たしていなければなりません。また、発明者の氏名及びあて名が願書に含まれていない場合には、指定官庁の国内法令は、国内段階移行時にこれらの事項の提出を請求することができます(詳細は、PCT 出願人の手引きの附属書 B の関連事項を参照)。国内段階移行に必要な全ての要件を単に満たすだけでは十分ではない点ご注意下さい-出願人は特別に早期手続(処理)の請求を行わなければなりません、さもなければ、指定官庁は優先日から 30 ヶ月の通常の期限又はそれより遅い時期まで、出願手続(処理)を開始しないかもしれません。

また、国際事務局は通常、国際調査機関の見解を(国際調査機関による特許性に関する国際予備報告(IPRP 第 1 章)の形式で)優先日から 30 ヶ月を経過した後に指定官庁に送達する点にご注意下さい(PCT 規則 44 の 2.2(a)参照)。しかしながら、出願人が PCT 第 23 条(2)の規定に基づき指定官庁に明示の請求を行った場合には、国際事務局は、出願人又は指定官庁による請求があれば、速やかに国際調査機関の見解の写しを指定官庁に送達します(PCT規則 44 の 2.2(b)参照)。(国際調査機関の見解の英語翻訳が指定官庁によって請求される場合については PCT 規則 44 の 2.3 を参照。)

PCT において早期国内段階移行の明示の請求が規定されていますが、当該出願の手続(処理)を実際いつ開始するかについての決定は指定官庁次第である点ご注意下さい。実際、国内官庁の中には国際公開前に出願手続(処理)を行わない場合があります。また、明示の請求が特定の国内官庁に関してのみ行われている場合、当該国際出願の国際段階は他の指定官庁については継続している点にご注意下さい。

一度国内段階に移行すれば、特定の指定官庁に対し、PCT-特許審査ハイウェイ(PCT-PPH)に基づく早期審査の請求を行うことが可能です。この請求には、関連する国際出願について、いくつかの請求項について肯定的な国際調査機関の見解、国際予備審査機関の見解又は特許性に関する国際予備報告(第 2 章)を得ている必要があり、また該当国際調査機関/国際予備審査機関としての官庁と指定官庁としての官庁との間で PCT-PPH の合意がなされている必要があります。PCT-PPH プログラムに関するさらなる情報は PCT Newsletter 2011 年 2月号及び PCT ウェブサイトの関連ページをご参照下さい。

http://www.wipo.int/pct/en/filing/pct_pph.html

PPH プログラムの一般的な情報については以下のサイトをご参照下さい。

http://www.jpo.go.jp/ppph-portal/index.htm

将来、より多くの国際出願を提出する予定である場合や、国際調査報告及び国際調査機関の見解がまだ作成されていない途中段階の国際出願がある場合には、PCT Newsletter 2011 年 5月号の実務アドバイスで紹介された、国際段階において遅延なく国際出願の手続を進める機会を最大化するためにとりうる行動に関する情報もご関心があるかもしれません。