注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

第三者による国際予備審査の一件書類中の情報の利用

Q: PCT 第 34 条の規定に基づき当方の国際出願の補正が可能になるように、国際予備審査の請求を検討しています。特許性に関する国際予備報告 (PCT 第 II 章)には、第三者がアクセスして利用できるのか知りたいです。また、国際予備審査の一件書類中の他の文書も、第三者が利用できるのでしょうか。

A: 特許協力条約 (PCT 第 38 条) では、国際予備審査の一件書類は機密文書であると規定しています。しかしながら、実務においては、特許性に関する国際予備報告 (PCT 第 II 章) (IPRP (第 II 章)) (国際予備審査報告 (IPER) としても知られる) の作成後は、一件書類はもはや機密文書ではありません。国際予備審査の一件書類の第三者による利用に関連する現行の規定をよく理解するためには、まず以下の背景情報を知っておくと役立ちます。

PCT 第 38 条は、国際事務局 (IB) 及び国際予備審査機関 (IPEA) は、いかなる者又は当局に対しても国際予備審査の一件書類につき承諾を得ずに知得されるようにしてはならないことを明示的に規定しています。IPRP (第 II 章) の作成前に、第三者により一件書類が知得されるようにするには、出願人の請求による場合又はその承諾を得た場合にのみ許可されます。ただし、特許性に関する国際予備報告 (IPRP(第 II 章) の作成後は、IPEA は PCT 規則 71.1(a) に基づき出願人及び IB に対しそれぞれ写しを送付します。そして IB は優先日から 30 カ月が経過した後、選択官庁に対し、その写しを送達します (PCT 第 36条及び規則 73.2(a))。これにより選択官庁は、国際予備審査の一件書類を利用することができるようになり、さらに適用する国内法令が公衆に対し一件書類の利用を認めている場合には、公衆に対してその利用を認めることができます (PCT 規則 94.3)。

2004 年 1 月に発効した PCT 規則 94.1(c) では、IB は選択官庁に代わって IPRP (第 II 章) を利用可能にすることを許可されました。多くの選択官庁は、IB が当該報告を PATENTSCOPE(www.wipo.int/patentscope/en/) 上で公衆に利用可能にすることを明示的に許可しましたが、IB が優先日から 30 カ月が経過する前に PATENTSCOPE 上に掲載することは許されていません。同様に、2020 年 7 月 1 日に発効した PCT 規則 71.1(b) 及び 94.1(c) の改正に従い、国際出願に関して当該日以降に IPEA が受領した、又は IPEA が作成したその他の書類も、優先日から 30 カ月が経過した後1にPATENTSCOPE 上で利用可能にされます。しかしながら、全ての IPEA が新しい PCT 規則 71.1(b) を実行する技術的なシステムの準備ができているわけではなく、技術的なシステムが整備され次第、IB に対し書類の送付を開始する予定になります。したがって、2020 年 7 月 1 日以降に国際予備審査 (IPE)の手続中に出願人に対して発行された又は出願人から送付された書類は、公衆の利用可能になることに十分ご留意下さい。

IPEA が出願人及び IB に送付する IPE の一件書類中の実際の文書には、IPRP (第 II 章) に付属して送付されるものと、別個に送付されるものがあります。以下に説明します。

以下の書類は、該当する場合、PCT 規則 70.16 に従い、IPRP (第 II 章) に付属書類として添付されます。

  • PCT 第 34 条の規定に基づく補正を含む PCT 規則 66.8 の規定に基づき提出される差替え用紙、並びに書簡
  • PCT 第 19 条の規定に基づく補正を含む PCT 規則 46.5 の規定に基づき提出される差替え用紙、並びに書簡
  • PCT 規則 26.4 に規定する差替え用紙であって、PCT 規則 91.1(b)(iiii)22 に規定する IPEA によって許可された明白な誤記の訂正を含むもの、並びに書簡

ただし、その差替え用紙については、後の差替え用紙又は PCT 規則 66.8(b) の規定に基づき一の用紙の全体を削除することとなる補正によって差し替えられたもの又は取り消されたとみなすものを除きます。以下の書類は、付属書類として報告書に添付されることにご留意下さい。

  • 後の差替え用紙又は一の用紙の全体を削除することとなる補正によって差し替えられたもの又は取り消されたとみなされる、上述した差替え用紙
  • 差し替えられた又は取り消された用紙に関連する書簡

ただし、報告書に添付されるのは、関係する差し替えるための補正又は取り消すための補正が、出願時における国際出願の開示の範囲を超えてされたものと IPEA が認めた場合、又は補正の根拠を表示する書簡が補正書に添付されていなかった場合に、補正は行われなかったものとして報告書が作成された場合に限ります。

改正された PCT 規則 94.1(c) では、IB は選択官庁に代わって、加えて以下の書類の写しを(PATENTSCOPE 上で) 公衆に利用可能にするよう規定しています。以下の書類の写しは、2020 年 7 月1 日以降に関係する国際出願に関連して IPEA が受領したもの又は IPEA が作成したもので、PCT に基づく実施細則3 4の新第 602 の 2 号に列挙されています。

  • IPEA が作成した見解
  • (出願人が IPEA の見解に同意しない場合には) PCT 規則 66.3 に基づき出願人が IPEA に対し提出した抗弁を含む書簡
  • PCT 第 34 条の規定に基づく補正を含む差替え用紙、補正書に添付される書簡、並びに差し替えられた補正書及び書簡
  • IPEA による請求の範囲を減縮する又は追加手数料を支払う求め
  • (PCT 規則 68.3(c) に従い、その異議が IPRP (第 II 章) に添付されるよう、出願人が明確に請求したか否かにかかわらず) 請求の範囲を減縮する又は追加手数料を支払う求めに対する異議及びその異議についての決定の書面
  • IPEA が送付を希望する一件書類中の他の文書

IPRP (第 II 章)、付属書類及び添付書類に加えて、PCT 規則 93 の 2 に従い選択官庁が要求する場合には、IB は報告の本文の英語への翻訳文も掲載します (付属書類の翻訳文が要求されている場合には、出願人はその翻訳文を作成し関係する選択官庁へ送付する必要があります)。

改正された規則は、IPE 手続の透明性をより高め、選択官庁及び公衆の役に立つことを目指しています。選択官庁は、PATENTSCOPE を介して一つのプラットフォーム上で IPE の一件書類をより容易に利用できます。当該一件書類には、2020 年 7 月 1 日以前には IPEA からのみ取得できた書類も含みます。この手続により国内段階処理が促進され、国内/広域官庁による不必要な作業の重複を除外し、IPEの最終判断に関する包括的な理解を提供します。

国際予備審査請求を行ったものの、後になり第 II 章の一件書類が公衆に利用可能になることを望まない場合の唯一の対応手段は、IPRP が作成される前に当該請求を取り下げることです。そうすることでIPEA は出願の処理を中止し、IPRP (第 II 章) は作成されないでしょう (PCT 規則 90 の 2.6(c))。

IPRP (第 II 章) の詳細は、PCT 出願人の手引、10.074 から 10.083 項及び 11.074 項を、以下のリンクからご参照下さい。

www.wipo.int/pct/guide/en/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf

IPEA の一件書類の利用に関連した最近の PCT 規則改正についての背景情報は、文書 PCT/WG/12/12に記載されています。以下のリンクからご利用ください。

www.wipo.int/meetings/en/doc_details.jsp?doc_id=435263

  1. IB は、出願人から受理した PCT 規則 48.2(l) に基づく請求により国際公開の対象から省略された一件書類中の情報を利用することができるようにしてはなりません。 これは当該請求に関する一件書類中の文書にも該当します。
  2. 訂正の請求が IPRP (第 II 章) の作成に考慮されなかった場合、報告書はその旨を記載します。なお訂正に関連する用紙は報告書に添付されます。
  3. www.wipo.int/pct/en/texts/ai/s602bis.htm
  4. 特定の状況では、IPRP (第 II 章) に添付される書類の種類と別個に送付される書類が重複することもある点にご留意下さい。