PCTニュースレター 09/2016: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
国際調査と補充国際調査の相違
Q: 国内段階で新たな先行技術が引用される可能性を最小限にとどめたく思っており、国際出願において補充国際調査を請求できることを認識しています。国際調査と補充国際調査の相違を説明していただけますか?
A: 国際調査は全ての国際出願に対し自動的に実施されるものです(国際調査機関(ISA)が、PCT第 17 条(2)に基づき国際調査報告を作成しない旨を宣言する場合を除く)。補充国際調査は国際調査に加えて請求することができる任意の調査です。主国際調査は、PCT 最小限資料に加え、国内(又は広域)官庁としての役割において ISA により調査される追加の文献もカバーします。補充調査のために指定された機関(SISA)の幾つかは、主国際調査を実施する場合のように文献全体をカバーする完全な調査を行いますが、幾つかの機関は異なる調査の範囲を提供し、そのため異なる料金の補充調査手数料を課すことがあります。例えば、完全な調査の提供に加えて、特定の言語又は複数言語、若しくは特定の技術分野における文献をカバーする限定的な調査を提供する場合があります。したがって、補充国際調査を請求することは、調査の言語的又は技術的な範囲を拡充し得て、国内段階で新たな先行技術が引用されるリスクをさらに軽減するでしょう。
2 種類の調査のその他の相違を以下に列挙します。
調査請求の仕方;調査請求の言語
出願人は国際調査の実施を特別に請求する必要はありません - 国際出願の出願が国際調査実施の請求を構成するものとなります。補充国際調査は任意であるため、特別に請求する必要があります。PCT ウェブサイト(http://www.wipo/int/pct/en/forms/index.html)にて編集可能なPDF 形式で提供されている様式 PCT/IB/375(補充調査請求書)を記入していただくのが望ましいでしょう。当該様式はドキュメントアップロード機能を介して ePCT にてアップロードが可能です。
1つの国際調査は ISA により一度だけ行われます。しかしながら、補充国際調査の場合は、出願人が複数の SISA による別個の補充国際調査の実施を希望し、必要となる追加手数料を支払う用意があれば、同一の国際出願に関して複数の補充国際調査を請求することができます。別個の補充調査請求書が各 SISA に対し提出される必要があります。
補充調査請求書は英語又は仏語で国際事務局(IB) へ提出する必要がある点にご留意ください。
調査機関の選択
国際調査の場合、出願人が ISA として選択可能な官庁は、該当する国際出願が出願される受理官庁により基本的に決定され、通常は、かなり選択肢は少ないです(また場合によっては 1 つの管轄 ISA のみ選択可能)。しかしながら、補充国際調査を請求する場合には、選択する機関が主国際調査を実施している/実施した ISA ではないことを条件に、補充国際調査を実施する準備があることを IB に通告した何れの ISA も自由に選択することができます(PCT 規則 45 の2.9(b))。最近 3 つの官庁(シンガポール知的所有権庁、ウクライナ国家知的所有権庁及びヴィシェグラード特許機構)が追加されたため、現在、(稼動している 21 の ISA のうち)以下に列挙する 9 つの官庁が SISA として行動しています:
AT オーストリア特許庁
EP 欧州特許庁
FI フィンランド特許登録庁
RU 連邦知的所有権行政局
SE スウェーデン特許登録庁
SG シンガポール知的所有権庁
UA ウクライナ国家知的所有権庁
XN 北欧特許機構
XV ヴィシェグラード特許機構
特定の SISA は、主国際調査が行われた対象の制限を超えて補充国際調査が実施される場合の制限や条件に加えて、ある一定期間において実施される補充国際調査の最大件数について制限を設けている場合がある点にご留意ください。補充国際調査の範囲に関する制限の情報は、PCT出願人の手引 の各官庁の附属書 SISA をご覧ください。
調査を請求する期間
国際調査の請求は国際出願の出願時に効果的に行われています。ただし、出願人は優先日から19 ヶ月の満了まで1補充調査請求書を提出することができ、補充国際調査を請求することが該当する出願にとって最適なことであるのかどうか、慎重に検討する時間があります。主国際調査の結果を入手していることが、出願人が補充国際調査が有益であるかどうか決定するのに役立つでしょう。多くの場合、時間が許容すれば、補充調査請求は出願人がISRを受理した後にのみ、提出されます。
調査に支払う手数料
各 ISA 及び SISA はそれぞれの手数料を設けています。幾つかの事例では、ある特定の官庁により実施される補充国際調査に支払う手数料は、当該官庁により実施される国際調査に支払う手数料と同額です。例えば、ISA 及び SISA としての欧州特許庁、フィンランド特許登録庁、スウェ-デン特許登録庁が当該事例にあたります。しかしながら、幾つかの官庁においては異なる手数料を支払います。例えば、補充調査が特定言語においてのみ実施される場合においては、より少ない文献を調査するため、補充調査手数料は低くなるでしょう。 SISA としてのロシア連邦知的所有権特許商標行政局は、国際出願の対象が人体又は動物の体の処置方法に関するものであるため、国際調査報告を作成しない旨が ISA により宣言されている特別な場合においては、独立国家共同体文献の通常の調査より高い料金にて、PCT 最小限資料の完全な調査を提供していることにご留意ください。
各官庁に支払う手数料の詳細は、PCT 手数料表 l(b)をご覧ください。補充国際調査の場合は、補充調査取扱手数料(現在 200 スイスフランに設定)も IB のサ-ビスに対して支払います。国際調査に支払う手数料は受理官庁により徴収されますが、補充国際調査に支払う手数料は IBによりいずれも徴収されます。
発明の単一性
主国際調査の場合、ISA が発明の単一性が欠如していると見なす場合、複数の発明の調査のための追加手数料を支払うよう出願人に対し求めることができます(PCT 規則 40.1)。しかしながら、補充国際調査の場合は当選択肢は存在しません-SISA が国際出願が発明の単一性の要件を満たしていないと認める場合には、追加手数料の支払いを出願人には求めずに、請求の範囲に最初に記載されている一の発明のみを調査するでしょう(PCT 規則 45 の 2.6(a))。ただし、出願人は、補充調査請求書の第 IV 欄 に記載している場合には、ISA が特定する発明のうち主発明(PCT 第 17 条(3)(a)参照)以外の一の発明に補充国際調査を減縮することを、SISA に求めることができます(PCT 規則 45 の 2.1(d))。
ISA が国際出願が発明の単一性の要件を満たしていないと認め、補充国際調査を開始する前にSISA が ISR を利用することができる場合には、主国際調査の対象とならなかった請求の範囲を調査から除外することができます(PCT 規則 45 の 2.5(d))。しかしながら、SISA は ISA に同意する義務はなく、発明の単一性に関して独自の所見を有することがあります。
調査報告の作成期間
ISAは当該ISAによる調査用写しの受領から3ヶ月の期間(優先権が主張されている場合には、通常優先日からおよそ 16 ヶ月以内)又は優先日から 9 ヶ月の期間のうち、いずれか遅く満了する期間に ISR を作成することとなっています(PCT 規則 42.1)。補充国際調査報告(SISR)に関しては、SISA は、補充調査請求書を受領し ISR が作成された後にのみ補充国際調査を開始します。しかしながら、ISR が遅れている場合には、遅くとも優先日から 22 ヶ月の期間に調査を開始するでしょう(PCT 規則 45 の 2.5(a))。 SISR は優先日から 28 ヶ月までに作成されます(PCT 規則 45 の 2.7(a))。
調査報告の内容
SISR は通常、主 ISR と内容や外観が似ています。しかし、当該報告には発明の名称及び要約書に関するコメントや対象の分類も含まれておりません。さらに、補充国際調査中に発見された他の文献との関連で読む際の新たな関連性のために必要な場合以外は、ISR ですでに引用された関連する先行技術文献を再掲載することを必要としません。SISR では(主国際調査とは異なり)見解書が作成されないことから、SISR は、場合によっては主 ISR で記載されるよりも文献の引用に関する詳細な説明を含むことがあります。そのような追加情報が先行技術の完全な理解に役立つためです。さらに、実施された補充調査の範囲に関して追加のコメントが含まれている場合もあります。これは、主 ISR のメリットを享受せず補充調査が実施された際に特に関連があります。
調査結果の公開
ISR は国際出願の一部として、優先日から 18 ヶ月の満了後速やかに公開されます(PCT 第 21条(2)(a))。しかしながら、SISR 自体は、国際公開の一部としては公開されません。とは言っても、国際出願がすでに公開されている場合は、IB が SISR を受領してから速やかに、PATENTSCOPE にて一般に閲覧可能になります。国際出願が国内段階へ移行する際に、ISR 及び SISR のいずれも指定官庁へ送付されるでしょう。
国際調査及び補充国際調査の詳細は、PCT 出願人の手引、国際段階の概要 第 7 及び 8 章、また ISA 及び SISA の詳細は、PCT 出願人の手引 附属書 D 及び SISA をそれぞれ以下のリンク先からご参照ください。
http://www.wipo.int/pct/en/appguide/
補充国際調査の更なる情報は、補充調査請求書の様式に記載された注釈や PCT Newsletter2008 年 12 月号のカバ-ペ-ジ、2011 年 4 月号の 9 ペ-ジ及び 2012 年 1 月号の 10 ペ-ジをご覧ください。