注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

優先日から 12 ヶ月から 14 ヶ月の間に国際出願を行った場合に生じる結果

Q: 先の国内出願の基づく優先権主張を伴う国際出願を提出しようとしています。優先期間が自社の作業上の理由によりあと 2 日で期限を迎える予定であり、期限前までに国際出願を準備することが非常に困難な状況です。しかしながら、いずれにせよ、国際出願が優先期間の満了の日から 2 ヶ月以内に提出されていれば、優先権主張は維持されると理解しています。本件はこのケースに該当するでしょうか。

A: 先の出願に基づく有効な優先権主張のために、国際出願は常に優先権の基礎となる先の出願の出願日から 12 ヶ月の優先期間内に提出されなければなりません(PCT 規則 2.4 参照)。さもなければ、優先権は失われます。もしかすると次の事実、すなわち、国際出願が 12 ヶ月の優先期間の満了の日から 2 ヶ月以内に提出された場合、国際段階の目的では優先権主張は無効とはみなされず、国際段階のすべての期限は、優先権の回復の手続が取られていない場合でさえ、最先の優先日から計算される(PCT 規則 26 の 2.2(c)(iii)参照)、ことと混同されているのかもしれません。

国際出願が優先日から 12 ヶ月の満了前までに提出できず、その期間満了の日から 2 ヶ月以内に提出する場合、優先権の回復の請求することができます。優先権の回復の請求は、かなり複雑な手続であり、いくつもの要件を満たさなければなりません。これらの要件の詳細については過去の「実務アドバイス」で紹介されています(本「実務アドバイス」の最後にある参考情報を参照)。しかし、最終的に国内段階において優先権の回復を希望する場合に認識しておくべき点について、以下簡潔に概説します。

優先権の回復の請求は、優先期間の満了の日から 2 ヶ月以内に受理官庁に対して提出しなければならず、場合によっては、手数料を支払わなければなりません。さらに、優先期間内に国際出願が提出されなかった理由を説明した陳述を補充しなければならず、場合によっては、その理由の陳述を裏付ける申立てその他の証拠も提出すべきです(PCT 規則 26 の 2.3(f))。

受理官庁に対する優先権の回復の請求に関する限り、受理官庁により適用される基準によりますが、回復のための次の基準のうちの一つを満たさなければなりません:国際出願が提出されなかったことが、状況により必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらず生じた場合、あるいは、故意でない場合。

受理官庁が優先権を回復した場合であっても、その有効性は国内段階で保証されません、特に、指定官庁が PCT 規則 49 の 3.1 と国内法との不一致を国際事務局に通知している場合は国内段階で認められず、また、指定官庁が受理官庁の適用した基準より厳しい回復の条件を課しているか否かにもよります。優先期間内に国際出願が提出されなかったことが「相当な注意」を払ったにもかかわらず生じたものであると認定した場合には、二つの基準のうちより厳しい基準であるため、原則それぞれの指定官庁で有効です(PCT 規則 49 の 3.1)。しかしながら、受理官庁が、優先期間内に国際出願が提出されなかたことが「故意ではない」との認定により PCT 規則 26 の 2.3 に基づいて優先権を回復した場合、国内法令が当該基準に基づいているか、又は、(出願人からみて)当該基準より有利な基準に基づく優先権の回復を規定する指定国においてのみ効力を有します(PCT 規則 49 の 3.1(b))。多くの官庁では、より緩やかな「故意ではない」基準を適用している点、ご注意下さい。国内段階に移行しようとしている国の官庁が、優先権に回復に関する受理官庁の決定を承認するかどうか、さらに、受理官庁に対して、又は、国内段階移行時に指定官庁に対して、いずれに回復の請求をするのがより容易か、考慮する必要があります。

受理官庁及び/又は指定官庁としての多くの特許庁が国際事務局に対し、PCT規則26の2.3、PCT 規則 49 の 3.1、及び/又は、PCT 規則 49 の 3.2(h)が、国内法令に適合しないことを通報しており、以下のような結果をもたらしています。

  • いくつかの受理官庁が優先権の回復の請求を考慮しない
  • いくつかの指定官庁が優先権の回復の請求を考慮せず、また状況によって、いくつかの指定官庁が、受理官庁によって回復された優先権を許可しない可能性がある

上記優先権の回復に関する留保を国際事務局に通報している官庁は 、"Restoration of the right of priority by receiving Offices (RO) and designated Offices (DO) under PCT Rules 26bis.3 and 49ter.2"(PCT 関連資料「優先権の回復」参照)と題された表から確認することができます。

http://www.wipo.int/pct/en/texts/restoration.html

受理官庁に関する限り、受理官庁としての国際事務局は、優先権の回復の請求を許可しており、いかなる PCT 締約国の国民又は居住者によって提出される国際出願を管轄しています。

注意しなければならないことは、出願人が 12 ヶ月の優先期間の満了まで故意に国際出願の提出を待った場合、おそらく「相当の注意」、「故意ではない」のいずれの基準での考慮にも適さなくなることです。

出願人は、常に 12 ヶ月の優先期間の満了前に国際出願を提出することを強く求められており、国際出願が 12 ヶ月の優先期間の満了の日から 2 ヶ月以内に提出された場合、国際段階では優先権主張は無効とはみなされないという事実に頼るべきではありません。優先権の回復が可能であったとしても、相対的に複雑な優先権の回復の請求の手続を行うよりも、12 ヶ月の優先期間内に国際出願を提出するほうが望ましいです。12 ヶ月の優先期間の終了前に出願することにより、国際出願が PCT 第 11 条に掲げる最小限の要件を満たしている限り、出願後のいかなる欠陥も国際出願日のその後の変更なく対処することが可能です。

以前に発行されたニュースレターの「実務アドバイス」では、優先権の回復の請求をどのように、いつ提出するかについて(PCT Newsletter 2007 年 4 月号)、受理官庁が優先権の回復に関する規定を適用していない場合における優先権の回復の請求について(PCT Newsletter2009 年 9 月号)、「受理官庁に適用される優先権の回復のための基準による受理官庁の選択について(PCT Newsletter 2009 年 10 月号、11 月号)の情報が提供されています。優先権の回復の請求に関するさらなる情報は、「PCT 出願人の手引き」の「国際段階の概要」の段落 5.062 から 5.069、"FAQs"の"Amendments to the PCT Regulations (April 1, 2007"の優先権の回復の請求に関する箇所をご覧下さい。

http://www.wipo.int/pct/en/faqs/april07_faq.html#2007_restoration