注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

受理官庁が優先権の回復に関する規定を適用していない場合における、PCT 規則 26 の 2.3 に基づく優先権の回復の請求

Q: 不測の事態により、その出願の優先日から 1 年と 5 日後に、私が出願した国際出願が受理官庁によって受理されました。優先権主張を有効にするために、受理官庁に優先権の回復を請求することによって、PCT 規則 26 の 2.3 に基づく規定の恩恵を受けたいと考えました。ところが、その出願が提出された受理官庁は、適用される国内法令と上記規則との不適合を、PCT 規則 26 の 2.3(j) に基づいて通告しています。優先権主張を有効にする他の方法はないのでしょうか。

A: たとえ、受理官庁が国内法令と PCT 規則 26 の 2.3 の不適合を通告していたとしても、国際出願日が優先期間が満了した日から 2 ヶ月以内であれば、国際段階の目的では、優先権主張は無効とはみなされません。それは PCT 規則 26 の 2.2(c)(iii) に規定されており、全ての受理官庁に適用されます。したがって、先の出願日が国際段階の期限を計算する基礎として用いられます。しかし、国際出願に優先権主張が保持されるという事実は、国内段階でそのような優先権主張の有効性を決して保証するものではありません。この段階で手続きをしないことにより、国内移行して指定官庁に対してこの状況の救済を要求する手続きは、今手続きすることに比べて、煩雑になるでしょう。今手続きするとは、受理官庁に対して国際段階で優先権の回復を請求することです。

そのようにするために、PCT 規則 19.4(a)(iii) に従い、受理官庁としての国際事務局(RO/IB)にこの国際出願を送付することを、出願した受理官庁に対して請求することができます。RO/IB は、全ての PCT 締約国の国民及び居住者のための管轄受理官庁となっています。RO/IBは PCT 規則 26 の 2.3(j) に基づく留保を行っていないため、受理官庁としての国際事務局には優先権の回復を請求できます。ただし、請求を 12 ヶ月の優先期間が満了した日から 2 ヶ月以内に行うことが必要です。

もし、国内受理官庁に優先権の回復請求を既に提出している場合には、PCT 規則 26 の 2.3を適用していないその官庁は、出願人の承認のもと、更なる手続きを進めるために国際出願を RO/IB に送付することを RO/IB が認めることを求めます(PCT 受理官庁ガイドライン、パラグラフ 166A)。PCT 規則 26 の 2.3(e) に基づく適用期限が満了する前に、この請求が国内受理官庁に到達していれば、いかなる請求も RO/IB に間に合って受理されたとみなされます。

国内受理官庁が国際出願を RO/IB に送付した場合(出願人の請求又はその他の場合)、送付のためには、送付手数料と同額を国内受理官庁に支払う必要があります(PCT 規則 19.4(b)参照)。支払われたその他の手数料(例えば、国際出願手数料及び調査手数料)については、国内受理官庁によって払い戻されます。そして、RO/IB に適用される手数料(例えば、送付手数料、国際出願手数料及び調査手数料)を支払うことが求められます。いくつかの受理官庁では優先権の回復請求手数料(PCT 規則 26 の 2.3(d))を要求しますが、RO/IB はそのような手数料を要求していません。更なる手続きのために、国内受理官庁が RO/IB に国際出願を送付した場合、この出願は国内受理官庁によって国際出願が受理された日に RO/IB が受理したとみなされます(PCT 規則 19.4(b))。しかし、国際出願を出願するために必要な手数料を支払う目的としては、RO/IB が実際に出願を受領した日が、国際出願が受領された日とみなされます(PCT 規則 19.4(c))。

ご質問の場合、国際出願後に優先権の回復を請求することになるので、RO/IB に書簡形式で回復の請求をします。望ましくは、回復の請求と同時に、優先期間内に国際出願が提出され なかった理由の陳述を裏付ける申立てその他の証拠を提出します(PCT 規則 26 の 2.3(f))。(RO/IB 又は PCT 規則 26 の 2.3 と国内法令が適合しているその他の受理官庁に対して、回復の請求を出願時に行うのであれば、請求のために、願書様式の第 VI 欄に特別の欄が設けられています。詳細は第 VI 欄の説明(the Notes)参照)。必要な基準を回復の請求が満たせば(RO/IB は回復の請求に対して、「相当な注意」及び「故意ではない」の基準を適用します。)、RO/IB は、決定と決定に採用された基準を出願人に通知します。

たとえ、受理官庁が優先権主張を回復したとしても、その主張の有効性は国内段階で保証される分けではありません。顕著な例は、指定官庁が、国内法令と PCT 規則 49 の 3.1 との不適合を国際事務局に通告している場合があります。また、指定官庁が受理官庁と同じ基準を適用しているのかにもかかってきます。「相当な注意」を払ったにもかかわらず、優先期間内に国際出願が提出されなかったと受理官庁が認めた場合には、回復は全ての国で有効となります(PCT 規則 49 の 3.1)。しかし、優先期間内に国際出願が提出されなかった理由を「故意ではない」と認めて、PCT 規則 26 の 2.3 に基づいて優先権の回復を受理官庁が行った場合には、その基準若しくはその基準より有利な基準によって回復を行うことが国内法令に規定されている指定官庁において、回復は有効となります(PCT 規則 49 の 3.1(b))。

国際段階で優先権の回復を請求する以外の利用できる選択肢としては、各指定官庁において優先権の回復を請求することができます(PCT 規則 49 の 3.2)。この場合、PCT 規則 49 の3.2(b)(i) に基づいて、PCT 第 22 条の期限から 1 ヶ月以内に請求を行う必要があります。しかし、PCT 規則 49 の 3.2(h) に基づいて留保している指定官庁には、請求は受け入れられません。

PCT 規則 26 の 2.3(j)(受理官庁による優先権の回復)、49 の 3.1(g)([指定官庁における]受理官庁による優先権の回復の効果)及び 49 の 3.2(h)(指定官庁による優先権の回復)に関して留保を行っている官庁の情報については、次の一覧をご覧ください。

http://www.wipo.int/pct/en/texts/restoration.html

優先権の回復の請求に関する更なる情報は、PCT Newsletter No. 04/2007 の「実務アドバイス」、「PCT 出願人の手引き」の国際段階のパラグラフ 98A から H、優先権の回復に関する「よくある質問とその回答:PCT 規則の修正(2007 年 4 月 1 日付け)」の該当部分、をご参照ください。

http://www.wipo.int/pct/en/faqs/april07_faq.html#2007_restoration