注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

(i) 国際予備審査及び(ii)国内段階において、発明の単一性が欠如していると認められた場合の結果

Q: 自分の会社の国際出願が調査された際、国際調査機関(ISA)から発明の単一性が欠如しているので追加手数料を支払うように求められました。国際出願の手続きを進める意思はあったのですが、追加手数料は支払いませんでした。結果として、出願の所定の部分については調査されていません。この出願に対し国際予備審査の請求を行った場合、又は国内段階に移行した場合にどのような影響があるのでしょうか。

A: PCT Newsletter No. 08/2008 の「実務アドバイス」で解説いたしましたように、国際出願は、一の発明又は単一の一般的発明概念を形成するように連関している一群の発明についてのみ行う(PCT 規則 13)ことになっています。発明の単一性が欠如していると ISA が判断した場合については上記解説をご参照ください。

国際予備審査の請求書が提出された場合に発明の単一性が欠如しているとき

国際予備審査の請求書を提出すると、国際予備審査機関(IPEA)は請求の範囲が発明の単一性を満たしているか確認します。それは、たとえ追加手数料の一部若しくは全部が支払われて、主発明以外について国際調査報告(ISR)が作成されている場合でも行われます。

しかし、IPEA に対して PCT 第 19 条及び/又は第 34 条の補正に基づいて審査することを請求したとしても、一般的に、IPEA は調査されていない発明に関する請求の範囲を審査する必要はありません(PCT 規則 66.1(e))。

IPEA が発明の単一性の要件が満たされていないと認めた場合には、PCT 規則 68.2 に従い、単一性の要件が満たしてるとは認められない理由を明示し、求めの日から 1 ヶ月以内に次のことに応じることを求めます。この求めには様式 PCT/IPEA/405 が使われます。

a) 国際調査が行われた請求の範囲であり、かつ、単一性の要件が満たされるように請求の範囲を減縮する(この場合、IPEA は減縮の少なくとも一の可能性を明示する。)

b) 追加手数料を支払う

PCT 規則 68.3(c) に従って、追加手数料は異議を申し立てて支払うことが可能です。この場合の手続きは、国際調査において適用される手続きと同様です(PCT Newsletter No. 08/2008の「実務アドバイス」参照)。なお、異議の審理には、異議申立手数料を IPEA へ支払うことが必要な場合があります(PCT 出願人の手引きの付属書 E の該当 IPEA 参照)。請求の範囲を減縮するか、追加手数料を支払わない場合には、出願人が他の発明を指定しない限り1、主発明のみが審査されます。

一方、発明の単一性の要件が満たされていないと認めた場合であって、出願人に請求の範囲を減縮する又は追加手数料を支払うことを求めることに比べ、国際出願の全体について国際予備審査報告(IPER)を作成する追加の労力がほとんどない場合には、経済的観点から、PCT規則 68.1 に従って、審査官は請求の範囲を減縮する又は追加手数料を支払うことを出願人に求める代わりに、国際出願の全体について国際予備審査を進め、発明の単一性の要件を満たしていないと認めた旨を表示し及びその理由を明記することができます。

発明の単一性が欠如していた場合に、IPEA において行われる手続きについての詳細は、PCT国際調査及び予備審査ガイドラン、

http://www.wipo.int/pct/en/texts/pdf/ispe.pdf

若しくは、PCT 出願人の手引きの国際段階 パラグラフ 398 及び 399 をご覧ください。

http://www.wipo.int/pct/guide/en/gdvol1/gdvol1-09.html#_v1_398

国内段階における負の影響の可能性

ISA によって全ての請求の範囲が調査されなかったとしても国際出願の有効性には影響がありません。指定(選択)官庁に対する送付を含む、その出願に関する手続きは全ての請求の範囲に関して行われます。しかし、指定(選択)国の国内法令は、当該指定(選択)国における効果に関する限り、出願人が当該指定(選択)国の国内官庁に特別の手数料を支払った場合を除くほか、調査及び/又は審査が行われなかった国際出願の部分は取り下げられたものとみなすことを定めることができます(PCT 第 17 条(3)(b) 及び 第 34 条(3)(c))。この規定を直接採用している国は少数ですが(中国及びスウェーデンなど)、特許権が付与される前に調査を行うための手数料を請求する国もあります。また、国際予備審査の際に出願人が請求の範囲を減縮することを選択した場合であって、国際予備審査の対象とならなかった請求の範囲について国内段階でその請求の範囲について権利の取得を求める場合には、PCT 第34 条(3)(b)に従って、同様な手数料が適用されることがあります。

国内段階において、指定官庁が国際調査及び予備審査機関の発明の単一性に関する判断を再検討し、異なる判断をすることは可能です。これらの官庁では出願から追加の発明の削除を求めたり、必要であれば、分割出願を行うことを求めます。しかし、PCT 第 27 条(1) 及び 第27 条(4) に従い、官庁は PCT 規則 13 に規定される基準に基づいて見解を述べる必要があります。ただし、対応する国内基準による結論が出願人により有利な場合(より安い手数料、より少ない補正及び分割出願が要求される)には、PCT 規則 13 に規定される基準に基づく必要なありません。

  1. 訳者注:国際予備審査機関としての日本国特許庁に対して請求の範囲を特定することは行われていません。納付された手数料で充当しうる数の発明につき、審査官が主要な発明と認める順序(審査官がその順序を定めることができないときはその請求の範囲における発明の記載の順序)に従って手数料が納付されたものとみなされます(特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則第 60 条)。