PCTニュースレター 07-08/2020: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
最初に提出した要素が誤って提出されたものであった場合に、国際出願の正しい要素を提出すること
Q: 2019 年 7 月 16 日に出願した先の出願の優先権を主張して、受理官庁としての知的所有権庁1 (英国)(RO/GB) に対し 2020 年 7 月 14 日 (つまり 12 カ月の優先期間が満了する 2 日前) に国際出願をしました。1 週間後に、正しい要約、明細書及び図面と共に、誤って別の出願の請求の範囲を提出していたことに気付きました。国際出願日が後に変更されずに、また先の出願の優先権を主張する権利も喪失せずに、誤った請求の範囲を問題になっている出願の正しいものと差し替えることができるかどうかについて知りたいです。この差し替えが可能かどうか確認してくれますか?また可能であれば、何をすべきか教えてください。また、最初の (間違った) 請求の範囲は公開されるのでしょうか?
A: 出願人が先の出願の優先権を主張して、12 カ月の優先期間が満了する前に間違った請求の範囲 (又は明細書又は図面) を提出したことに気付いたケースですが、選択肢の一つは、単純に正しい請求の範囲を含めた国際出願を速やかに再提出し、最初の出願を取り下げることです。あるいは、2020 年 7 月 1日以降に出願された国際出願に関しては、新 PCT 規則 20.5 の 2(b)及び (c) に従い、受理官庁に正しい請求の範囲との差し替えを請求することが可能です。しかしながら、受理官庁が後日に正しい請求の範囲を受理した場合には、国際出願日は受理官庁が正しい請求の範囲を受理した日に変更されることになるでしょう。あなたは 12 カ月の優先期間の満了後にはじめて間違いに気づいたため、上記のいずれかの行為を行った場合には、先の出願の優先権の有効性を主張できなくなります (優先権の回復の請求を試みない場合)。第1の選択肢では、新規に提出された国際出願の受理日は優先期間外となります。第2 の選択肢では、正しい請求の範囲一式の受理日が国際出願日となりこちらも優先期間外となるでしょう。
最初に認定された国際出願日を保持することが重要であり、その要素又は部分が関係する先の出願に完全に記載されていた場合には、新 PCT 規則 20.5 の 2(d) は (出願の欠落している部分を提出するケースを対象とした、PCT 規則 20.5 とは異なり) 誤って提出された要素又は部分に関して要素又は部分を引用により補充することの確認を請求することを許容しています。これは、「正しい請求の範囲 」が優先権を主張する基礎出願に実際に完全に記載されていた場合には、出願に正しい請求の範囲一式を追加することができることを意味します。ただし、PCT 規則 20.7 に基づき適用される期間内(すなわち、PCT第 11 条(1)(iii) に規定する一つ又は二つ以上の要素を受理官庁2が最初に受理した日から 2 カ月間)に、PCT 規則 4.18 に基づき新規の (正しい) 請求の範囲一式を当該国際出願に引用により補充することを確認する書面の通知を RO/GB に提出することが条件です。PCT 規則 20.6 に従い、その通知には以下の書類3を添付する必要があります。
- 優先権が主張されている、先の出願に記載されている要素の全体を含む一枚又は二枚以上の用紙
- 優先権書類をまだ提出していない場合には、提出された先の出願の写し
受理官庁が正しい請求の範囲一式が先の出願に完全に記載されていることを認めることが条件となりますが、それらの請求の範囲は、PCT 規則 20.6(b)に従い、PCT 第 11 条(1)(iii) に規定する一つ又は二つ以上の要素を受理官庁が最初に受理した日に国際出願に記載されていたものとみなされます。したがって、最初の国際出願日は保持されます。
PCT 規則 40 の 2.1 に従い,国際調査機関 (ISA) は、PCT 規則 20.5(c)、20.5 の 2(c)、20.5(d) 又は 20.5の 2(d)に基づき欠落部分又は正しい要素若しくは部分が後に提出された場合において、欠落部分又は正しい要素若しくは部分が国際出願に含まれたこと、又は PCT 第 11 条(1)(iii) に規定する一つ又は二つ以上の要素を受理官庁が最初に受理した日に国際出願に記載されていたものとみなされることが、ISA が国際調査報告 (ISR) の作成を開始した後にはじめて ISA に通知された場合には、出願人に追加手数料を支払うよう求めることができます。RO/GB に対し出願された国際出願のための管轄 ISA である欧州特許庁 (EPO) は、誤って提出された要素に関して追加手数料を請求することにご留意ください。したがって、すべての請求の範囲が誤って提出されたあなたのケースでは、正しい請求の範囲が引用により含められたことが通知された時点で、ISA としての EPO が最初の、誤って提出された請求の範囲にかかわるISR の作成をすでに開始していた場合には、追加手数料を支払うよう求められるでしょう(2020 年 3月 27 日付けの EPO 管理理事会の決定をご参照ください (OJ EPO 2020、A36) (www.epo.org/law-practice/legal-texts/oficial-journal/2020/04/a36/2020-a36.pdf))。
PCT 規則 20.6(b) に基づき正しい請求の範囲一式が引用により補充された場合、誤って提出された請求の範囲一式は出願に残ります(PCT 規則 20.5 の 2(d)) 。受理官庁は、これらの誤って提出された用紙を「誤って提出されたもの(ERRONEOUSUSLY FILED) (規則 20.5 の 2) 」と表示して、それらの用紙を請求の範囲の末尾に (改頁せずに) 移動させ、当該書類を国際事務局 (IB) に送付します。IB は、国際出願の一部としてそれらの用紙を公開します。これは、PCT 規則 20.5 の 2(c) に基づくケースとは対照的です。当該規則では、出願人は誤って提出された要素を正しいものと差し替えるよう (引用により補充することの請求をせずに) 受理官庁に単に請求するだけです。この場合、正しい要素が誤って提出された要素と差し替えられます。そして、その誤って提出された要素は出願から削除され、したがって国際出願の部分としては公開されることはありませんし、PATENTSCOPE4上でも閲覧可能にはなりません。
受理官庁及び/又は指定 (若しくは選択) 官庁としての一部の官庁は、PCT 規則 20.8(a の 2) 及び (b の2) に基づき、それぞれ新規則 20.5 の 2(a)(ii)及び (d) は適用される国内法と適合しない旨 (PCT 規則20.8(a) 又は (b) に基づく不適合の通知を IB に提出したそれらの官庁に関しては、不適合の通知は PCT規則 20.8(a の 2) 又は (b の 2) にもそれぞれ適用するものとみなされます) を IB に通知した点にご留意ください。これはすべての受理官庁が、誤って提出された要素を引用により補充することの確認を許容できるわけではないことを意味します。またすべての指定官庁が、誤って提出された要素を引用により補充することを認めた受理官庁の決定を考慮するとは限らないことも意味します。この不適合の通知を行った官庁の一覧は、以下をご参照ください。
www.wipo.int/pct/en/texts/reservations/res_incomp.html
出願人が PCT 規則 20.8(a の 2) に基づく不適合の通知を行った受理官庁に国際出願をした場合、出願人は PCT 規則 19.4(a)(iii) に基づき、国際出願を受理官庁としての IB に送付するよう受理官庁に請求することができます。受理官庁としての IB は、誤って提出された要素や部分が提出された場合、正しい要素又は部分を引用により補充することを認めています。また特定の指定官庁がそのような留保をした場合でも、当該官庁が補正された請求の範囲一式を受理しないというわけではなく、国際出願日が後になる結果をあなたが受け入れる準備ができているのであれば、それらの請求の範囲の手続をさらに進めることができます。その場合、当該指定官庁に対し優先権の回復を請求する価値があるのかどうかについてもさらに検討することができるでしょう。
引用により補充することの詳細については、PCT 出願人の手引、国際段階の概要、6.024 から 6.031 項をご参照ください (www.wipo.int/pct/guide/en/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf)。