注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

公衆による一件書類の利用からの特定情報の省略

Q:2015 年 7 月末に提出された先の出願の優先権を主張する国際出願を、2016 年 7 月初めに提出しました。当該出願は最近、新しい出願人へ譲渡され、当方は当該出願の代理人として行動するよう出願人により選任されました。譲渡を受けた後、PCT 規則 92 の 2 に基づき、当方を代理人とするとともに出願人を変更する記録の要請を直ちに国際事務局へ提出し、添付書類として委任状と譲渡書類も提出しました。しかしながらその後すぐに、譲渡書類に、提出前に書類から削除し忘れた譲渡の取引金額に関する機密情報が含まれていることに気づきました。公衆による利用から当該情報を省略することは可能でしょうか?もし可能であれば、どう対応すればよいのでしょうか、又期限はあるのでしょうか?

A:PCT 規則 92 の 2 に基づく変更の記録要請や、譲渡証のようなあらゆる証拠書類は、当該出願が公開されると、国際出願の一件書類の一部として通常公衆に閲覧可能になります(PCT第 30 条(1)(a) 及び規則 94.1(b) 参照)。つまり、言及されている当該機密情報は、国際出願が公開されると(この場合 2017 年 1 月末)公衆に利用可能になります。

2016 年 7 月 1 日に PCT 規則 94(一件書類の利用)が改正され、この日以降に提出された国際出願に関し効力を有します。本改正により、出願人は、必要な要件が満たされていることを条件に、公衆による一件書類の利用から国際出願の一件書類に含まれる特定の機密情報の省略を請求することができます。PCT 規則 48 にも同様の改正がなされ、出願人は国際公開の対象から特定の情報の省略を請求することができます(例えば、個人のクレジットカード番号等の特定の機密情報が国際出願に記載されていた場合);しかしながら、譲渡証は国際出願の国際公開の一部を構成する書類ではないため、PCT 規則 48 の規定は今回のケースには該当しません。しかしながら、譲渡書類は国際出願の一件書類の一部分を構成するため、貴殿のケースは PCT規則 94 によってカバーされます。

PCT 規則 94.1 の新たなパラグラフ(e) に基づき、IB は、出願人による理由を示した請求の受理により、以下が充足していれば、一件書類に含まれる情報の公衆による利用ができるようにしてはなりません。

  • 当該情報が国際出願について公衆に周知する目的に明らかに資さないこと;
  • 当該情報の公衆による利用により、いずれかの者の個人的な又は経済的な利益が明らかに損なわれること;
  • 当該情報を利用する優先的な公共の利益がないこと

省略の請求を行うためには、以下の書類を IB へ提出する必要があります。

  • 望ましくは様式 PCT/IB/384 を使用した、省略のための理由を示した請求
  • 関連情報が省略された差替え用紙、及び
  • 差し替えられる用紙と差替え用紙との相違について注意喚起する添付書簡

望ましくは ePCT を介して情報の省略請求を IB へ送付することをお勧めしますが、ファックス又は郵便でも送付可能です。

公衆による利用からの情報の省略請求を行う際の特別な期限はありませんが、国際公開の技術的な準備の完了前に当該請求が IB によって受理されるよう確実にすることをお勧めします-国際公開の技術的な準備の完了後に省略請求が IB によって受理されると、IB は少なくとも特定の期間、当該情報が公衆に利用可能になることを回避できないこともあるでしょう。

公衆による一件書類の利用からの情報の省略の請求は、出願人当人による請求、若しくは請求することが出願人の利益であり、PCT 規則 94.1(e)に基づく公衆による一件書類の利用からの省略の要件を満たしている場合(様式 PCT/IB/383 参照)に IB によって出願人に送付される、当該情報の省略を請求するよう出願人に求める通知に従ってなされる場合もあります。後者の場合、求めの日付から 1 ヶ月以内、又は国際公開の技術的な準備が完了する前の何れか遅く満了する期間(PCT 規則 94.1(e) )に、IB は出願人に請求を提出するよう求めます。しかしながら、たとえ当該情報がすでに公衆に利用可能になっていても、上記期間の満了後いつでも省略の請求が可能です。この場合、IB は当該情報の公衆による利用を省略すべくできる限り速やかに行動するでしょう(必要な要件が満たされている場合)。

公衆による一件書類の利用からの情報の省略請求の審査後、IB は PCT 規則 94.1(e)に基づく基準が満たされているか判断し、以下の手続を行います:

  • IB が請求を認める場合、当初提出された当該情報を公衆による利用から省略し、様式PCT/IB/385 を使用し迅速にそれを通知します。当該情報が受理官庁、国際調査機関(ISA)、補充調査のために指定された機関(SISA)及び/又は国際予備審査機関(IPEA)が保有する国際出願の一件書類にも含まれる場合、IB は随時、各官庁/機関へ通知の写しを送付するため(PCT 規則 94.1(f) )、官庁はそのような情報の公衆による利用に関する省略請求を把握でき、当該情報へのアクセスを与えないでしょう。さらに、関連する情報は指定又は選択官庁へは送付されません;
  • IB が当該情報を公衆による一件書類の利用から省略しないと決定する場合、IB は様式PCT/IB/386 により決定の理由を示し、それを通知するでしょう。当該情報は各官庁それぞれの一件書類で閲覧でき、指定又は選択官庁へ送付されます。

省略の請求や省略を認めるか否かに関する IB の決定の通知(肯定的(様式 PCT/IB/385)であれ否定的(様式 PCT/IB/386)であれ)は、公衆からは閲覧できない点にご留意ください。

上述したように、出願人が国際公開の対象から情報の省略を請求できる同様の規則変更も 2016年 7 月 1 日に発効しました(PCT 規則 48.2(l から n) 参照)。この場合は、国際公開の技術的な準備完了前に、IB が省略請求を受理する必要があります。IB は PCT 規則 48.2(l )に基づく基準が満たされているか判断します。IB が省略の請求を認める場合、国際公開の対象から当該情報を省略します。加えて、当該情報の公衆による利用や、請求に関する一件書類に含まれる文書を公衆が利用できないように処理するでしょう。当該情報が、ISA、SISA 及び/又は IPEA が保有する国際出願の一件書類に含まれている場合にも、随時各官庁へ通知します(PCT 規則48.2(n))。

例えば、PCT 規則 92 の 2 に基づく請求の内容、又は受理官庁としての IB へ送付される PCT規則 26 の 2.3 に基づく優先権の回復請求であっても、全ての文書は、既定では、国際出願の一件書類の一部となり国際公開後公衆に利用可能となるため、どのような書類を証拠として IB へ提出するか常に注意して考慮すべきことに注意しなくてはいけません。機密情報の公開や公衆の閲覧を回避するため、機密情報が提出の文脈と無関係である場合には、最初から"きれいな" 形式での文書を提出することも可能です。何れにしても、関連する情報の国際公開又は公衆の利用を回避するためこれらの新しい規定に依拠するためには、PCT 規則 48.2(l )及び 94.1(e)に基づく全ての適用する要件を満たしている必要がある点にご留意ください。