注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

詐欺的な手数料支払請求に対して、国際事務局によって取られる手段、及び、出願人又は代理人が講じうる措置

Q: 多数の PCT 出願を行っている企業の代理人ですが、事務所及び発明者が、自身の公開された PCT 出願の一部に関して、公式のものに類似した名称及びロゴを伴った企業から、該当出願の公開又は登録のための多くの支払通知を受理しています。これらの請求書は WIPO とは何ら関係がないものであり、支払う必要のないものであることは理解しています。特定の悪徳業者によるこのような「慣行」はやや心配であり、WIPO はこれに対し何か行動をとられているのでしょうか。また、このような詐欺的慣行対策で出願人が WIPO に協力できることはありますか。

A: 多数の PCT ニュースレター読者がおそらくご存知のとおり、多年にわたり、様々な国において悪徳業者・個人が PCT ユーザー(WIPO によって提供されている他の知的財産サービスのユーザーも同様)に対し PCT の出願手続とは何ら関係のない、WIPO によりすでに提供されているサービスを超える価値のない手数料の支払を誘導しようとしています。これらの業者は、公的な機関から出された請求書であるかのように見せかけるために、これらの通知を意図的にデザインしています。通知には一般に利用可能な国際出願の書誌的事項を含んでおり、通常国際出願の公開後すぐに出願人及び発明者に送付されています。多くの場合、その通知(及び関連ウェブサイト)は、WIPO の名称及びロゴに紛らわしく類似しています。優先日から 18 ヶ月を経過した後速やかに全ての国際出願について国際公開を行うのはWIPO 国際事務局のみです(PCT 第 21 条(2)(a)参照);国際公開に関する別個の手数料は存在しません。そして、国際公開の法的効果は PCT 第 29 条に規定されています。WIPO は出願人及び発明者に対して手数料を支払わないよう注意喚起しており、もし受け取った請求書が疑わしい場合には、国際事務局又は弁理士にご連絡下さい。

PCT ニュースレター及び PCT ウェブサイトでの公表

WIPO は、2002 年にこのような詐欺的慣行を気づいた後すぐに、PCT ユーザーに対して PCT
ニュースレターの記事を通して警告を行いました(PCT Newsletter 2002 年 9 月号)。それ以
降、PCT ユーザーの中で出回ったこれらの紛らわしい請求書への注意を喚起すべく、弁理士
や代理人に対してクライアントにこのような請求書を受理する可能性がある旨を伝えること
をお願いしています。又、新たな手数料支払請求書に気づいた場合はいつでも、その例を PCT
ウェブサイト上で公表しており、現在 45 の請求書の例が掲載されています。

http://www.wipo.int/pct/en/warning/pct_warning.htm

このような理由で、WIPO では出願人の皆様に新たな請求書に関する情報提供のご協力をお
願いしております。これによって、他の PCT 関係者に注意喚起をすることができます。

弁理士向けの警告用テキスト

WIPO ではまた、企業又は法律事務所のヘッダー或いはロゴに付せて、クライアント及び/
又は発明者に転送することにより、このような紛らわしい請求書を受け取るか或いはクライ
アント・法律事務所のウェブサイトやイントラネットのサイトに投函される可能性があるこ
とを警告するためのテキストを作成し、弁理士及び知的財産関連団体に送付しました。この
警告用テキストは上記のウェブページの右欄の関連リンクをクリックすることによりご欄い
ただけます。

特許庁に対する対抗措置の要請

WIPO は同時に世界の特許庁の長官に対し、このような詐欺的請求書を送付している者に対
抗措置を講ずるよう働きかけを行っています。特許庁の長官に送付された書簡本文を PCT
ウェブサイトに掲載しています。

http://www.wipo.int/pct/en/warning/1309.pdf

この書簡において、ユーザーがこのような詐欺的スキームに関するより多くの情報を得るこ
とができる WIPO ウェブサイトへのリンクを国内官庁のウェブサイトに設けることにより
PCT ユーザー間での注意向上を促し、関係各国内で啓蒙運動に従事し、該当すれば、詐欺的
請求書を送付した者にどのような対抗措置をとることができるか分析するよう要請していま
す。また、WIPO が取り得る追加的な行動についての提案を依頼しています。

多くの特許庁が、国民及び居住者に対しプレスリリースや警告を公表し、紛らわしい請求書
の例をウェブサイト上に掲載したり、セミナーで出席者に警告を行うことにより、このよう
な紛らわしい請求書への対抗措置を取っている旨、国際事務局に通知しています。いくつか
の国ではこれら請求書の作成者に対する法的手続を開始しています。オーストラリア、オー
ストリア、フランス、ドイツ、イスラエル、日本、スイス、イギリス、EPO の各特許庁によ
って公表されている通知へのリンクは、以下のサイトに掲載されています。http://www.wipo.int/pct/en/warning/pct_warning.htm このページは他の官庁からの情報を受け取り次第更新いたします。

法的措置

WIPO 及び関係者の努力にもかかわらず、これらの詐欺的請求書は急増し、その方法もより
巧みになってきており、無防備な発明者や中小企業から多くのお金を騙し取っています。
WIPO は活動をより強化し、これらの詐欺行為が存続している政府機関に連絡をとり、これ
らの業者へ対抗した法的措置や、これら業者がしようしているロゴや名称を WIPO のものと
類似していないものへの変更の促進においていくつかの成功を収めています。

WIPO はまた、政府が対抗措置を試みている国に対し支援を行っています。例えば、フロリ
ダ州司法長官は、Federated Institute for Patent and Trademark Registry(FIPTR)社及び個
人(1 名)に対し、PCT ユーザーに対して送付した通知が同州の欺瞞的・不公正取引慣行法
に違反している旨の民事訴訟を提起しました。フロリダ州司法長官局の要請により、WIPO
は訴訟準備に協力し、訴訟において専門家の証言を提供しました。訴訟の結果、被告に対し
重大な判決が下されました。この業者は、PCT ユーザーを含む特許及び商標の出願人に対し、
紛らわしい請求書を送付したことにより、同州の・不公正取引慣行法に違反したとみなされ
ました。この業者は、"Register"と呼ばれるものに PCT 出願をリストアップするという、実
際は何の価値もないサービスの提供に対する料金請求を行っていました。また、他の例とし
て、チェコ共和国の工業所有権庁は同国内で活動を行っているこのような業者を刑事告訴し
ました。他の政府においても詐欺的慣行に従事する者に対する適切な法的措置を講じられる
ことを期待しています。WIPO はこれらの慣行を抑制するべく努力している国々の法執行機
関との協力を継続していきます。

出願人又は代理人に可能な活動

手数料支払の請求書を受け取り、その正当性が疑わしい場合には、上述の PCT ウェブサイト
上の請求書の例のリストに同じものがないかチェックすべきです。同様の例が存在しない場
合で、請求書が疑わしい場合には、国際事務局までご連絡下さい。

電話番号: +41 22 338 83 38

ファクシミリ番号: +41 22 338 83 39

電子メール: pct.infoline@wipo.int

当該通知が詐欺的なものである場合には、支払を行わないよう類似の通知を受け取る可能性
があるすべての関係者及び発明者に対し警告すべきです。PCT ウェブサイトのリストに掲載
されていない通知を受け取った場合、このリストへの追加掲載のため、WIPO(以下の電子
メールアドレス宛)に当該通知のコピーの送付をお願い致します。

pct.legal@wipo.int

また、管轄の政府機関及び/又は消費者保護団体に対し苦情を申し立てることも可能です。
当該機関におけるこの問題に対する認識が高まり、このような請求書を送付する者に対する
対抗措置が促進される可能性があります。