PCTニュースレター 06/2010: 実務アドバイス
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国際公開後の PCT 第 19 条に基づく補正の提出;補正の際の言語要件
Q: 国際調査報告及び国際調査機関の見解書が、国際公開後に遅れて送付されてきました。国際公開後であっても国際調査報告は遅れて公開されるものと理解しています。PCT 第 19条に基づく請求の範囲の補正を行った場合、同様に国際公開されるのでしょうか?また、オランダ特許庁に対してオランダ語で出願した PCT 出願について、国際公開の目的で公開言語、つまり英語、に当初出願の翻訳を行いましたが、補正についても英語に翻訳しなければならないのでしょうか?
A: PCT 第 19 条に基づいた請求の範囲の補正書は、国際調査報告の送付の日から 2 ヶ月の期間又は優先日から 16 ヶ月の期間うちいずれか遅く満了する期間内に国際事務局に対し提出することができます(規則 46.1)。本件の場合、国際調査報告が国際公開後に送付され、よって、優先日から 16 ヶ月の期間より後に送付されていることから、適用される期限は国際調査報告の送付の日から 2 ヶ月になります。正しい言語で、かつ、上記期限内に請求の範囲の補正書が受理された場合、当該補正は修正されたフロントページ(すなわち、書誌的事項、発明の名称及び要約を含むページ)とともに公開されます(PCT 規則 48.2(h))。
国際公開のための技術的準備の完了の日までに、請求の範囲の補正書が提出されておらず、19 条に基づく請求の範囲の補正の提出期限が過ぎていない場合、19 条に基づく請求の範囲の補正書の期限が過ぎていない旨の表示を国際公開公報上に行うことで、第三者に対し注意を促します。そして、期限内に請求の範囲が補正された場合、請求の範囲の補正書及び PCT規則 46.4 に基づく説明書(下記参照)は別途公開されます。
PCT 第 19 条に基づく補正書は公開言語で提出しなければなりません(規則 46.3)。(たとえ翻訳文を提出する意思があったとしても)他の言語で補正書を提出すべきではありません。出願人は、最初に提出したすべての請求の範囲と差し替える、完全な一式の請求の範囲を含む差替え用紙を提出しなければなりません(規則 46.5(a))。さらに、出願人は、最初に提出した請求の範囲と補正により異なるものとなる請求の範囲を特定し、及び最初に提出した請求の範囲と補正後の請求の範囲との相違について注意を喚起すること(規則 46.5(b)(i))、並びに最初に提出した請求の範囲であって補正により削除されたものを特定すること(規則46.5(b)(ii))を記載した書簡を添付します。これらに加えて、2010 年 7 月 1 日より、出願時における国際出願中の補正の根拠を表示することが必要になります(新規則 46.5(b)(iii))。なお、添付する書簡は英語、又は、国際公開言語が仏語の場合は仏語で作成します(規則 92.2(d))。
また、出願人は、補正に関する簡単な説明書(英語の場合又は英語に翻訳した場合に 500 語を超えてはならない)を提出し、補正の説明及びその補正が明細書及び図面に与える影響の表示することができます。この説明書は請求の範囲の補正とともに公開されます。またこの説明書は公開言語で作成します。
PCT 第 19 条に基づく補正の公開は、仮保護が与えられる国における仮保護を確実なものとする点で役立つかもしれませんが、国際調査機関の見解における否定的見解が示された点について 19 条補正により修正しても、その後の特許性に関する国際予備報告第 I 章の内容に影響を与えることはありません。19 条補正について、国際予備審査請求が行われない限り、国際段階において実体面での審査が行われることはありません。国際予備審査請求を行った出願人は、国際予備審査機関に対し、国際予備審査の対象として 19 条補正を利用することを請求する可能性を有しており、また、それにより特許性に関する国際予備報告第一章における否定的見解が克服されるのであれば、特許性に関する国際予備報告第二章では肯定的な結果になるかもしれません。出願人が国際予備審査を請求し、19 条補正が国際予備審査で考慮されることを希望する場合、国際予備審査請求書(様式 PCT/IPEA/401)の Box No.IV(国際予備審査に対する基本事項)において対応箇所に表示する必要があります。また、補正書の写しを国際予備審査請求書とともに提出することが望ましいです(規則 53.9(a)(i))。
請求の範囲の補正の公開時にすでに国内段階に移行している国において、当該国の指定官庁は請求の範囲が補正されたものとみなすと考慮する必要はありません。
請求の範囲と同様に明細書及び図面を補正する場合には、国際予備審査請求の際(PCT 第34 条(2)(b))又は国内広域官庁に対して(PCT 第 28 条及び第 41 条)、補正を行うことができます。
PCT 出願人の手引きの国際段階の段落 9.004 から 9.011 に、19 条補正の提出に関する詳細な説明があります。