PCTニュースレター 05/2020: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
期間が遵守されなかったことによる遅滞についての許容 - PCT 第 19 条に基づく請求の範囲に関する補正書を提出する期間を徒過した事例
Q: 新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の世界的流行の影響により、クライアントは隔離中であり、PCT 第 19 条に基づく補正書を期間内に国際事務局に提出する指示を出す対応ができませんでした。 その結果、PCT 規則 46.1 に基づく期間内に補正書を作成して提出することができませんでした。 補正書の提出の遅滞についての許容の請求を行うことは可能でしょうか?可能であれば、請求を行う手続はどのようなものでしょうか。
A: PCT 規則 82 の 4.1 は、書類の提出や手数料の支払いならびに PCT 第 19 条に基づく請求の範囲の補正書の提出などの行為について、PCT の期間が遵守されなかったことによる遅滞についての許容を規定しています。 また PCT 規則 82 の 4.1 の規定は、不可抗力の事由 (「戦争、革命、市⺠暴動、同盟罷業、天災...その他これらに類する事由」) について定めています。
国際事務局 (IB) は、今般の感染症の世界的流行は「天災...その他これらに類する事由」に該当する事由と解されるべきであるという立場を明確にしました。IB の解釈声明は以下のリンクをご参照くだい。
www.wipo.int/pct/ja/news/2020/news_0009.html
PCT 第 19 条に基づく補正書を IB が受理するためには、以下の行為が必要となります。
- PCT 第 19 条に基づく補正書を、合理的にできる限り速やかに電子形式1 で IB に提出する。
- PCT 規則 46.1 に基づく期間2 の満了後 6 カ月以内に「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)関連の問題」を遅滞の理由として挙げる説明書を電子形式 1 で IB に提出し、適用される期間が遵守されなかったことによる遅滞の許容について PCT 規則 82 の 4.1 に基づく請求を行う。
通常であれば、PCT 規則 82 の 4.1 に基づいて説明された理由により関連する期間が遵守されなかった旨の証拠を、該当する場合には官庁、機関または IB に対して提出することが求められます。 しかしながら現状を考慮して IB は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 関連の問題を理由としてなされるPCT 規則 82 の 4.1 の請求を優遇し、あなた (または出願人) の住所、営業所を有する地、または滞在地が影響を受けたことを立証する証拠の提出を求めません (上述した IB の解釈声明をご参照ください)。
また一方で、PCT 制度には多くの相互に依存したプロセスがあり、許容されたある行為の遅滞が他のプロセスにも影響を及ぼす可能性があります。そのためある行為が遅滞した場合にはその可能性を考慮する必要があることにご留意ください。 例えば、PCT 第 19 条の補正書が遅れて提出された場合、出願の再公開が必要となることがあり、仮保護の手続に遅れが生じることもあります。さらに国際予備審査の請求を検討したい場合や、国際予備審査の目的で国際予備審査機関 (IPEA) に PCT 第 19 条補正を考慮してもらいたい場合であっても、国際予備審査の請求をする期間までに (すなわち、PCT 規則 54 の 2に基づく期間の満了前に) 補正書が準備できていない可能性もあるでしょう。 もちろん、補正書が提出されるまで待つことができ、また必要に応じて、IPEA に対して国際予備審査請求を提出する期間が遵守されなかったことによる遅滞についての許容を請求することもできます。 ただしその場合、通常国内段階移行を決定する前に必要となる国際予備審査報告の発行を遅らせてしまう可能性が生じます。
PCT 規則 82 の 4.1 に基づく期間が遵守されなかったことによる遅滞についての許容の請求は、一般的に優遇されます。しかしながら、困難な状況であってもできる限り行為の遅滞を避けることが出願人の利益となるでしょう。
規則 82 の 4.1 は受理官庁、国際調査機関、補充国際調査に指定された機関、IPEA または IB に対して手続を行う場合に適用されますが、以下の場合には適用されないことにご留意ください。
- 優先期間については、PCT 第8条の規定により、実質的にはパリ条約第4条が適用される (PCT規則はただし、関係する官庁が当該規定に係る留保をしていないことを条件として、国際段階または国内段階において優先権の回復を請求できる可能性を規定している)。
- 徒過された期間が、国内段階での指定官庁または選択官庁に対して行われるべき行為に関連している場合。 これらの官庁において、関連する国内法令に基づいて適用されうる救済措置がある場合がある (PCT 第 48 条(2)、規則 82 の 2.2)。また指定官庁が PCT 規則 49.6(f)3 に定める留保をしていない限りは、指定官庁および選択官庁は PCT 規則 49.6 に基づき、出願に関する権利の回復請求手続きを提供することが求められる。詳細は、PCT 出願人の手引の関連する国内編(/pct/ja/guide/index.html) をご参照ください。または関係する国内官庁に直接お問い合わせください。
予期せぬ事態により PCT に基づく期間を徒過した場合に適用される可能性のある他の救済措置の詳細については、PCT ニュースレター 2020 年 3 月号の「実務アドバイス」をご参照ください。
- 感染症の世界的流行にある現状では、郵送による国際出願に係る書類の送付は決して推奨しない点にご留意ください。PCT 第 19 条補正のケースでは、ePCT にある専用のアクション機能 (www.wipo.int/en/web/epct/learnmore?N=840) を利用して提出することをお勧めします。ただし当該機能は、期間がすでに満了している場合には利用できません。したがって ePCT のドキュメントアップロード機能、ならびに専用機能がない場合 (PCT 規則 82 の 4 に基づく請求など) (www.wipo.int/en/web/epct/learnmore?N=820) の他の書類タイプを提出する機能をご利用ください。ePCT システムにログインするための WIPO アカウントをまだ作成しておらず、すぐに作成できない場合には緊急用アップロードサービス (https://pct.wipo.int/ePCTExternal/pages/UploadDocument.xhtml?lang=ja) を利用して PDF 形式で書類を提出することができます。
- PCT 規則 46.1 に規定する期間は、国際調査機関による IB および出願人への国際調査報告の送付の日から 2 カ月の期間または優先日から 16カ月の期間のうちいずれか遅く満了する期間とする。ただし、第 19 条の規定に基づく補正で当該期間の満了の後に IB が受理したものは、その補正が国際公開の技術的な準備が完了する前に IB に到達した場合には、当該期間の末日に IB が受理したものとみなす。
- PCT 規則 49.6(f) に基づく留保をしている国に関する情報は、www.wipo.int/pct/en/texts/reservations/res_incomp.html をご参照ください。