注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

今月号の筆者に関する注記、及び今後の記事の寄稿の受付

今月の実務アドバイスは、長年にわたる PCT の経験をもち、米国に拠点を置く特許弁理士が寄稿して下さいました。感謝申し上げます。他の PCT 実務者からの、読者がユーザの視点からの事例を理解するのに役立つ記事の寄稿を歓迎しております。是非 PCT 法務部までお送り下さい。(PCT 法務部:pct.legal@wipo.int)

国際段階における国際出願に関する期限や手続きの管理の重要性、及びどの手続きを管理すべきかの提案

Q: これまで PCT を利用したことがありませんが、多くの PCT 出願の国際段階における期間管理や特定の様式の受領を依頼されました。何を管理すべきか助言をお願いします。

A: PCT の国際段階では認識しておくべき期限や手続きが多くあるため、特に数多くの特許を扱っている企業では、それらの期限を見逃さないための効率的な管理システムの構築が非常に有益です。そのような管理システムは、通常"期間管理システム"と呼ばれ、大抵は期限を確認したり、出願人(又は代理人)に期限を通知するよう設定されているソフトウェアを指します。出願人がどの程度手続きを管理したいのかはそれぞれ異なります。以下は国際段階において管理すると役立つ手続きの提案です。

最初に、国際出願を提出する前に、PCT 出願において先の出願に基づいて優先権主張するのであれば、PCT 出願が 12 ヶ月の優先期間内に確実に提出されるように、先の出願の提出日から12 ヶ月になるかなり前の日付を期間管理システムに設定すべきでしょう。

PCT 出願が提出されたら、以下の様式の到着を確認するとよいでしょう:

  • 様式 PCT/RO/105 は、国際出願日と国際出願番号を記録するもので、日付と番号が付与されてからすぐに送付されます。
  • 様式 PCT/RO/102 は、手数料が支払われた確認、若しくは支払われた手数料が間違っているか又は全く支払われていないか、どの場合であっても出願人に通知されます。送付手数料(該当する場合)、調査手数料及び/又は国際出願手数料が当該様式に記載される期限満了までに支払われていない場合は、様式 PCT/RO/133 を受領するので、当該様式の送付日から 1 ヶ月の新しい期限を管理し、国際出願が取下げと見なされるのを回避するため、その通知された期限内に確実に手数料を支払う必要があります。
  • 様式 PCT/IB/301 は、国際事務局(IB)が受理官庁から記録原本を受理したことを確認するものです。
  • 様式 PCT/IB/304 は、優先権主張された先の出願の認証謄本の IB による受理日を通知します。
  • 様式 PCT/ISA/202 は、国際調査機関(ISA)による調査用写しの受理日を通知します。当該日付は国際調査報告(ISR)と ISA の見解書の作成予定日(期限は ISA による調査用写しの受領から 3 ヶ月、又は優先日から 9 ヶ月のうちいずれか遅く満了する期間(PCT 規則42.1))を計算するのに便利です。これにより期間管理システムで"作成予定日"の管理が可能になります。

これらの各書類の到着後、様式に記載されている情報、例えば付与された国際出願日がご自身の情報と一致しているかどうか、確認することが望ましいでしょう。確認に関しては、様式番号はその様式を作成する官庁を示しています。例えば様式 PCT/RO/105 や PCT/RO/102 は受理官庁、様式 PCT/IB/301 は IB、そして様式 PCT/ISA/202 は ISA により作成されます。これらの様式を管理する期間に関しては、

  • 様式 PCT/RO/105 及び PCT/RO/102 は、関係する受理官庁での手続きにかかる時間によりますが、出願人は受領確認のために出願日から 1—2 週間程度の期間を設定して管理することが望ましいでしょう
  • 様式 PCT/IB/301 と PCT/ISA/202 は、受領確認のために様式 PCT/RO/105 と PCT/RO/102の受領後 1—2 週間程度の期間を設定して管理することが望ましいでしょう。

また、以下の期間管理も挙げられます:

  • 優先日から 16 ヶ月:PCT 第 19 条に基づく請求の範囲の補正の提出。ISR の受領後、報告書に記載された送付日に 2 ヶ月を加えた日付が、16 ヶ月の期限より遅いかどうか確認し、該当する場合は期間管理システムで設定された日付を変更すべきでしょう。
  • 優先日から 18 ヶ月:国際出願の国際公開予定日であり、早期公開を請求していない限り(PCT 第 21 条(2))、その後速やかに行われます。
  • 優先日から 22 ヶ月:国際予備審査請求の提出。ただし、ISR(及び ISA の見解書)の送付日から 3 ヶ月の満了が 22 ヶ月の期限より遅くなる場合、適用される期限は遅くなる可能性がある旨ご留意下さい。ISR の受理後、送付日に 3 ヶ月を加えた日が 22 ヶ月の期限より遅いかどうか確認し、該当する場合は設定した日付を変更すべきでしょう。
  • 優先日から 30 ヶ月:国内(広域)段階移行(多くの指定(又は選択)官庁に関して)。国内段階移行前に各官庁が適用する期限に注意し、国内段階移行に必要な全ての要件が期限内に満たされているか確認が必要です。30 ヶ月の期限はまた PCT 規則 92 の 2 に基づく変更の要請の期限満了も意味し、期限満了後に IB が受理した要請は記録されません。

国際段階で PCT 出願の管理に役立つものとして ePCT システムの活用は非常に有益ですので、様式 PCT/IB/301 の到着後、ePCT システムで当該 PCT 出願へアクセスできるかどうか確認しておくことが望ましいでしょう。

ePCT は上述の日付(及びその他の日付)を自動的に計算する、非常に便利な"タイムライン"機能を提供しています。例えば、"タイムライン"機能では、IB による ISR の手続き後、19 条補正の提出、国際予備審査請求及び 34 条補正の提出の(該当する場合、再計算された)期限日が表示されます。さらに、例えば、"19 条補正の提出期間が 2 週間後に終了します"又は"国際公開のための技術的な準備が 2 週間後に完了します"のように、満了間近の期限や近々に予定されている重要な手続きを前もってお知らせする自動電子メール通知の設定も可能です。当該機能の利便性は ePCT システムの活用をお勧めする理由でもあります。ePCT のタイムライン機能や設定可能な他の期限の事例の詳細は、下記リンク先の ePCT ユーザガイドをご覧下さい。

http://www.wipo.int/pct/en/epct/pdf/pct_wipo_accounts_user_guide.pdf