PCTニュースレター 05/2009: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
国際調査報告を作成しない旨の宣言:後に出願した関係する他の PCT 出願で取れる可能な手続き
Q: 類似の発明について、いくつかの PCT 出願をしました。その PCT 出願では、調査を行うために同一の国際調査機関(ISA)を選択しています。これらの中で最初に行った出願について、国際調査報告(ISR)を作成しない旨の宣言を ISA から受け取りました。理由は、ISA が調査しない対象に関する出願だったということです。この出願について、調査手数料の払戻しを受けることは可能でしょうか。また、その他の出願についても、ISR を得ることができない恐れがあることから、対象を変更するために請求の範囲を補正することは可能でしょうか。できないのであれば、当初、国際調査を行うために選択した ISA を、関係する対象を調査する ISA に変更することは可能でしょうか。
A: ISA が有意義な調査ができないと認めた場合に、PCT 第 17 条(2)(a) に基づき、ISR を作成しない旨の宣言がされます。PCT 規則に基づき、ISA が調査する必要がなく、特に、調査しないことを決定した対象に関する国際出願の場合には、有意義な調査ができないと認められます(PCT 第 17 条(2)(a))。ISA は適用される国内/広域法の条文に基づき、国内/広域の特許付与手続きが適用される対象のみを調査することがあります。ISA が調査しないと決めることができる対象の一覧は、PCT 規則 39.1 に規定されています。特定の ISA によって調査されない対象に関する情報は、PCT 出願人の手引きの付属書 D の関係頁でご覧いただけます。詳細については、関係する ISA に直接お問い合わせください。国際出願を出願する前に、選択希望の ISA によって調査されない対象を確認することをお勧めします。
調査手数料の払戻しについては、ISR が作成されないことは ISA が調査手数料を払い戻す理由に該当していません。調査手数料が払い戻される事例は、PCT 規則 16.2 に記載されています。各 ISA で適用される払戻しの条件については、PCT 出願人の手引きの付属書 D の関係箇所をご参照ください。
選択したISAが特定の対象を調査しないことによって、そのISAによるISRが作成されなかったとしても、そのことが、補充国際調査を行うISAの一つにより、補充国際調査が行われることを請求する妨げにはなりません。しかし、ISAがISRを作成しない旨の宣言を行い、その宣言が、補充国際調査を開始する前に、補充国際調査機関で利用することができる場合には、補充国際調査機関は補充国際調査報告を作成しないことを決定することができます(PCT規則 45 の 2.5(e))。補充国際調査の請求に関する詳細は、PCT Newsletter No. 12/2008 をご参照ください。
PCT 第 19 条に基づく請求の範囲の補正は、ISR が作成されないと提出できないことから、PCT 第 19 条に基づく請求の範囲の補正によって、この問題を解決することはできません。国際予備審査請求書を提出した場合には、PCT 第 34 条(2)(b) に基づいて、請求の範囲を補正することが可能ですが、国際予備審査機関は、調査された請求の範囲のみを審査すれば足ります(PCT 規則 66.1(e) 参照)。PCT 第 28 条(1) 及び第 41 条(1) に基づき、指定及び選択官庁において出願を補正する機会が与えられますが、補正は国際出願の出願時における開示の範囲を超えてはいけません。
関係する他の PCT 出願に関しては、ISR を受理する前に PCT 第 19 条に基づく請求の範囲の補正を行うことはできませんし、もし、ISA が ISR は作成されない旨の宣言を行った場合には、それらの出願についても補正書を提出することはできません。ISA の選択の変更について PCT は特に規定していませんが、PCT 受理官庁ガイドラインのパラグラフ 115 には、二以上の ISA が国際調査を行う権限を有する場合には、調査用写しが ISA に送付される前であれば、機関の選択を変更できるとあります。
ISRが作成されていないこと自体は、国際出願の有効性に何ら影響がありません。公開や指定官庁への送付などの手続きは継続されます。ISAが作成されないことの影響についての詳細はPCT Newsletter No. 10/2007 の実務アドバイスをご覧ください。