PCTニュースレター 04/2021: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
PCT官庁からの書類受領の遅延についてPCT規則80.6が適用する場合の期間の計算
Q: 国際出願した際に、出願人が電子メールアドレスを提供し忘れたため、受理官庁は、PCT手数料 (と後払手数料) の納付の補正命令書 (様式PCT/RO/133) を郵送せざるを得ませんでした。命令書の発行日は2021年3月23日 (火曜日)でしたが、受領した日は発行日から15日後の2021年4月7日(水曜日)でした。手数料は命令書の発行日から1か月以内に支払うことになっているため、期限は2021年4月23日 (金曜日) までとなりますが、その期日まで、あまり時間がありません。命令書の受領が遅延したことの補償として、手数料の支払期間の延長を請求することはできるのでしょうか?
A: 命令書がその発行日の後7日よりも遅い日に受領されたことを受理官庁が認める証拠を提出できる場合には、PCT規則80.6 (第2文) に従い、当該官庁は、命令書の発行日から通常の1か月の期間より後に満了するものとして取り扱います。すなわち、手数料の支払期間のために追加される日数は、命令書の発行日の後7日経過後から、その通知を受領した日までの日数と等しい日数を追加した日に満了するものとします。
この事例では、命令書の発行日から15日後にその通知を受領しているので、2021年4月23日 (金曜日) から数えて8日の追加日数があることになり、期間の末日は2021年5月1日 (土曜日) に当たります。しかしながら、文書又は手数料が国内官庁 (若しくは政府間機関) に到達すべき期間の末日が、当該官庁が公の事務の処理のために利用者に対して開庁していない日に当たる場合、その期間は、その後の最初の就業日に満了します (PCT規則80.5)。該当する受理官庁が、2021年5月1日 (土曜日) と2日(日曜日) は閉庁しているものとすると、期間は2021年5月3日 (月曜日) に満了することになります。期間の計算を分かりやすく示すと、以下の通りになります。
2021年3月23日 + 1か月 = 2021年4月23日
+ 8日 (PCT規則80.6) = 2021年5月1日 (土曜日)
→ PCT規則80.5の適用 = 2021 年5月3日 (月曜日)
十分注意する必要がある点は、PCT規則80.5は自動的に適用されるのに対して、PCT規則80.6の第2文は自動的に適用されるものではなく、出願人が、当該官庁が認める証拠を提出できるという条件付きであることです。さらに、期間延長を受けるためには早急に証拠を提出する必要があります。
なお、もし今回のような受理官庁からの命令書の受領遅延が、郵便サービスに起因したものであるとすると、国際出願の際に、受理官庁、国際事務局 (IB)、国際調査機関や予備審査機関、そして指定 (若しくは選択) 官庁が通知を送ることができる電子メールアドレスを提供することの重要性を指摘しています。
現在係属中の国際出願については、PCTの通知を受領するための電子メールアドレスの記録を、PCT規則90.2の2に基づき請求することができます。係属中の出願が複数ある場合には、電子メールアドレスが追加されるべき出願の全てを記載したリストを提供して下さい。IBは提供された電子メールアドレスを記録して、関係するPCT官庁や機関に通知します。この手続を行う最善の方法は、ePCTを利用して記録の請求をアップロードすることです。この方法を利用するためには、もしまだWIPOアカウントを作成していないのであれば、アカウントを作成することでWIPOのePCTシステムにログインでき、IBに対し電子的に書類をアップロードできるようになります。請求は国際出願1件についてのみアップロードし、「規則92の2に基づく変更届 (複数の出願用)」の書類を選択して、電子メールアドレスの追加を希望する国際出願番号 (30か月の期間が満了していないもののみ) を全て記載したリストを提出して下さい。IBにおける処理の際に、記録変更の請求の写しがリストされた各国際出願の一件書類保存されます。詳細は、以下のリンクをご参照下さい。
/en/web/epct/learnmore?N=690 並びに
/en/web/epct/learnmore?N=820
PCT 関連書類の紙形式での送付及び受領に対する代替⼿段については、PCTニュースレター 2020年4月号の実務アドバイスをご参照下さい。日本語版と英語版のリンクはそれぞれ以下になります。
/pct/ja/newslett/2020/newslett_2020.pdf#page=29
https://www.wipo.int/edocs/pctndocs/en/2020/pct_news_2020_4.pdf
IBとの間の電子的通信手段については、以下のリンクをご参照下さい。
/pct/en/covid_19/communication.html
該当する受理官庁が電子出願を受理している場合には1、出願人の皆様には (特にePCTを利用して) 国際出願を電子的に提出することを全般にお勧めします。ePCTを利用することにより、郵便によるPCT関連文書の受領の遅延や亡失を回避できるだけでなく、出願人はePCTが提供する多くのセーフガードや役立つ機能のメリットを享受できるためです。出願が提出された方法に関係なく、ePCT上で該当する出願へのアクセス権を取得することで、全出願人は出願後であっても国際出願を電子的に管理することができる点にご留意下さい。PCTの電子サービスヘルプページには、ePCTの利用開始をサポートする豊富な情報が掲載されています。以下のリンクからご利用下さい。
/en/web/epct/learnmore?N=169