注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

PCT出願において慎重に要約を起草することの重要性

Q: 国際調査報告を受け取ったところ、当方が起草した要約を国際調査機関が修正し、また要約に添えるために選んでいた図面とは別の図面が選択されていました。今後、当方の要約、又は図面の選択の変更を回避するにはどうしたら良いでしょうか?

A: 国際調査機関(ISA)が国際調査を実施する際、貴殿が提出した要約が要約の起草に関するPCTの規定に準拠しているかどうか確認します。国際調査報告が当該要約が修正されたことを示すものであれば、ISA は提出された要約が以下に記載する関連する規定に準拠していなかったと見なしたことになります。PCTの手続において、要約の内容を決定し、要約が含まれていない場合に作成することはISA の特別な権限です(PCT規則38及び44.2)。

PCT出願における要約の目的は、明細書、請求の範囲及び図面(あれば)に含まれている開示の概要を提供し、発明の属する技術分野を表示することです(PCT第3条(3)及びPCT規則8)。要約は"技術的課題、発明による技術的課題の解決方法の要点及び発明の主な用途を明瞭に理解する"ことができるように起草されるべきです(PCT規則8.1(a)(i))。ただし、要約は求められている保護の範囲を解釈すべきものではないことにご留意ください(PCT第3条(3))。

要約は、"当該技術分野における調査のための選別手段として、特に、当該国際出願自体を調べる必要性の有無を判断する上で科学者、技術者又は研究者に役立つよう、効率的に利用することができるように"起草される必要があります(PCT規則8.3)。要約の起草が上記の目的に見 合うかどうかは当然ながら、関連する主題や、技術分野、使用される言語により、また特定の個別のケースによっても異なる場合があります。

ISAが貴殿が提出していた要約を修正した場合、国際調査報告が郵送で発送された日から一ヶ月以内に当該機関に、意見及び/又はさらなる修正を提案することができます。ISAは提案や意見を考慮すべきですが、それに応じたり、要約をさらに修正する義務はありません(PCT規則38.3)。さらに、PCT規則91.1(g)(ii)は要約にある誤記は訂正できないことを規定しているため、明白な誤記の訂正を請求することにより要約へのさらなる変更を求めることはできません。

貴殿の意見を受けてなおISAにより要約がさらに修正されない場合は、国際予備審査請求書を提出することで、国際段階で追加の修正を提出することができます。しかしながら、PCT第34条に基づく要約の修正は、公開された出願には反映されない点にご注意ください。

それ故、国際調査報告作成の遅延、また国際事務局による再翻訳や国際出願の再公開につながりかねないISAによる要約の修正を回避するためにも、出願時に提出する要約は慎重に起草することが重要です。国際公開における要約の品質は、効果的な先行技術調査を可能にするため重要であり、適切な要約はまた、特に関連する発明の優れた"広告"を提供することにもなり出願人の利益でもあります。

要約の長さと内容

要約は表現することができる限りにおいて簡潔なものとすることが重要です。PCT規則8.1(b)は英語に翻訳した場合の語数に関して規定しており("英語の場合又は英語に翻訳した場合に50語以上150語以内であることが望ましい")、特定の長さを奨励しています。IBは国際公開のための英語の翻訳文及び、原文が仏語でない場合は、仏語の翻訳文も作成します。

公開される出願の言語が英語でない場合は、推奨される長さの範囲が現在の規定においてはガイドラインでしかない点を考慮すると、要約の長さが要件に従っているかどうかを見極めるのは難しい場合があります。また、要約の語数は必ずしも品質の指標であるとは限らないことが一般的に認識されているため、特定の発明に関しては、より長い記述はやむを得ないかもしれません。しかしながら、推奨される語数を大幅に超えるのは避けることが重要です。

一般的に、"本開示は~に関する"、"本開示により定義される発明"及び"本発明は~に関するものである"などのニュアンスの表現は使用されるべきではありません。

要約に記載されている主要な技術的特徴であって国際出願の図面に示されているもののそれぞれには、括弧付きの引用符号を付するべきです(PCT規則8.1(d))。

要約に添える図

原則として、一の図のみを選ぶべきであることを念頭に置き、要約に添えるため発明の特徴を一層良く表している図を選ぶべきです。貴殿がいずれの図も示さない場合、又はISAが貴殿の示した図以外の図が発明の特徴を一層良く表していると認める場合には、当該機関は要約に添えるべき図を国際調査報告にて特定します。

図に関してはより一般的に、PCT規則11.10 から11.13に規定される様式上の要件に従うべきです。準拠しているかどうかは"国際公開が適度に均一なものであるために必要な程度にまで満たされているかいないかのみ"(PCT規則26.3(a))国際段階で点検されます。出願人が方 式上の要件を満たしていない場合には、国際段階では準拠することを"強制"はされないかもしれませんが、指定官庁は国内段階で訂正を求める場合があり、これはより面倒な手続となることがあることにご留意ください。

図面には通常、理解のために不可欠な単語又は語句を除き、文言を記載してはならず(PCT規則11.11)、いずれの文も(出願の原語又は翻訳文共に)公開される出願の表紙に収まる大きさに縮小されてもなお判読可能である必要があります。さらに、国内段階移行時に文言を翻訳する必要のある場合があり、結果として追加の諸経費が生じることがあるため、一般的に引用符号のみを含むことが望ましいです。

要約に関する詳細はPCT出願人の手引、国際段階の5.164から5.174項、及びPCT Newsletter 2001年8月号と2013年3月号の"実務アドバイス"をご覧ください。

誤植

PCT Newsletter 2017年4月号に掲載された"実務アドバイス"に関連して、PCT第34条は"請求の範囲、明細書、及び図面"の修正について規定していますが、要約の修正については規定していないことにご留意ください。