PCTニュースレター 04/2014: 実務アドバイス
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特定の受理官庁に対して出願するための資格、特定の指定のための出願人の表示:欧州特許庁に対する出願例
Q: ドイツに拠点をもつ特許代理人で、初めて国際出願を行います。本件の出願人は 2 人います。一人はドイツ(DE)の居住者及び国民で、もう一人はアメリカ合衆国(US)の居住者及び国民です。
- 欧州特許庁(EPO)に対して国際出願をすることが可能でしょうか。
- もし可能であれば、DE の居住者及び国民である出願人は EP 指定の出願人とし、US の居住者及び国民である出願人は、他の全ての PCT 締約国の出願人として表示できるでしょうか。
A: (1) 如何なる PCT 締約国の居住者又は国民(自然人又は法人)も、国際出願をすることができ(PCT 第 9 条)、2 人以上の出願人がいる場合は、そのうち少なくとも一人が国際出願をする資格を有していれば出願することができます(PCT 規則 18.3)。
ある受理官庁が特定の国際出願の受理を管轄するかどうかの判断は、国際出願日における出願人の住所及び/又は国籍で行います。PCT規則 19.1 によれば、国際出願は、出願人の選択により、出願人がその居住者及び/又は国民である締約国の国内官庁又はその締約国のために行動する国内官庁1、又は、国際事務局(RO/IB)に対して行うことができます。2 人以上の出願人がいる場合、特定の受理官庁に対して出願するためには、そのうち一人が当該官庁における国籍及び/又は住所の基準を満足していれば十分です(PCT規則 19.2)。もし、いずれの出願人もこの要件を満たさないのであれば、国の安全に関する規定によって当該国際出願をIBに送付することが妨げられない限り2、当該受理官庁は出願を受理せず、当該国際出願は、PCT規則 19.4 に基づき、更なる手続きのためRO/IBへ送付されます。
それ故、ご質問に関しては、(本件のドイツのような)欧州特許条約(EPC)締約国の一つの居住者及び/又は国民である出願人が含まれている場合は、国際出願を受理官庁としてのEPO(RO/EP)に対して行うことができますし、次のような選択肢もあります。
- 出願人が居住者又は国民である国の受理官庁(ドイツ特許商標庁)、又は、
- RO/IB
さらに、US の住所及び国籍のもう一人の出願人に基づけば、受理官庁としての USPTO に対して出願するという 4 番目の選択肢もありますが、貴殿が USPTO に対して手続きを行うことが登録されていなければ、当該出願人の代理をすることはできません。
欧州特許機構は現在 38 の加盟国があり、それら全ての国の国民及び/又は居住者もまた RO/ EP に国際出願をすることができます。当該加盟国のリストは、次のリンク先からご覧いただけます。
http://www.epo.org/about-us/organisation/member-states.html
いくつかの EPC 加盟国は、PCT 及び EPC が適用される属領を有しています。それらの領土の出願人もまた RO/EP に対して PCT 出願を行うことができます。それらの領土のリストは次のリンク先の EPO の Official Journal 2014 年 3 月号に掲載されています。
http://www.epo.org/law-practice/legal-texts/official-journal/2014/03/a33.html
上記ウェブサイトに掲載されているリストは、EPC 加盟国の属領のみに関係し、属領を有する EPC 加盟国でない他の PCT 締約国が存在することにご注意ください。特定の属領についての詳細は、関係する国の官庁にお問い合わせください。
受理官庁としての EPO に対する出願に特化した詳細は、次のリンク先の"Euro-PCT ガイド"をご参照ください。
http://www.epo.org/applying/international/guide-for-applicants/html/e/ga_b.html
特定の官庁に対して国際出願を行う資格があるかどうか決定する際、"発明者のみ"として表示されている者のみが当該 PCT 締約国の居住者又は国民である場合、当該官庁は受理官庁になり得ないことを重視する必要があります。RO/EP では、EPC 加盟国の発明者は表示されているが、出願人がそのような国の居住者でも国民でもなく、結果として RO/EP に対して出願する資格のある出願人がいないという国際出願を多く受領しています。これは、2012年 9 月に米国発明法の関連規定が発効され、願書様式(PCT/RO/101)に発明者を米国指定のための出願人として表示する必要がなくなってからより頻繁に起こっています。したがって、出願人やその代理人は、出願人が国際出願を行う資格があるかどうかだけでなく、出願人が特定の受理官庁に対して国際出願を行う資格があるかどうかについても確認するよう、十分にご注意ください。
(2) 2 人以上の出願人がいる場合、特定の出願人をその国籍や住所に関わらず、特定の指定国のための出願人として表示することができます(PCT規則 4.5 (d))。しかし、ある特定の国が国内特許及び広域特許の両方に指定されている場合は、同一の出願人を両方の指定について表示しなければいけません(PCT実施細則第 203 号)。つまり、本件において、EP指定に関する出願人として表示される出願人(DE出願人であろうとUS出願人であろうと)は、EP指定によってカバーされる全ての国の国内指定に関する出願人としても表示されなければいけません。もちろんこのことはドイツのようなPCTからの国内ルートを閉鎖していないEPC加盟国のみに関します。3