PCTニュースレター 03/2016: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
PCT 規則に規定された様式上の要件がどの程度満たされるべきか、またそのような要件が満たされているかどうか点検する方法における不一致の可能性
Q: 当方のクライアントは異なる 3 つの受理官庁へ出願する選択肢があり、これまで代理人として各受理官庁へ PCT 出願を提出しました。望ましい実務ではないとわかっていますが、優先権の期限である 12 ヶ月に間に合わせるために、時には急遽出願を提出しなければならないこともあります。PCT 規則 11 に基づく様式上の要件の幾つかがおそらく十分に満たされていない場合があることも分かっていますが、国際出願日に影響することなくその後欠陥の補充が可能なことも承知しています。しかしながら、各官庁が様式上の欠陥の補充を求める程度に時々一貫性がない事に気付きました。ある出願に指摘を受けると思われる欠陥があると認識している場合でも、当欠陥の補充が求められないこともある一方で、他の出願の同様の欠陥に対して補充が求められることもあります。PCT 出願の様式上の要件の点検の方法においてなぜそのような不一致があるのでしょうか。
A: 受理官庁は、PCT 第 14 条(1)(a)(v)に従い、国際出願が PCT 規則 11 に規定された様式上の要件に関する何らかの欠陥が含まれているかどうかを点検し、受理官庁がそのような欠陥を発見した場合には、当該官庁は出願人に対し補充命令により所定の期間内に国際出願の補充をするよう求めます。
PCT の様式上の要件が国際段階において要件が満たされていれば、当該国際出願が国内段階に移行する際、通常は様式上の要件のいかなる補充も必要なく受理されます(PCT 第 27 条(1)による:"国内法令は、国際出願が、その形式又は内容について、この条約及び規則に定める要件と異なる要件又はこれに追加する要件を満たすことを要求してはならない")。
しかしながら、PCT規則11はPCT出願に関する多くの様式上の要件を列挙していますが、PCTにおいてこれらの規則がどこまで厳しく適用されるべきか実際には"限度"があります。PCT規則26.3は"受理官庁は、国際出願が国際公開の言語で行われた場合には、次のことを行う。(i) 国際出願について、第十一規則に定める様式上の要件が、国際公開が適度に均一なものであるために必要な程度にまで満たされているかいないかのみを点検すること。・・・"と規定し、またPCT規則26.3の2も同様に"受理官庁は、第十一規則に定める様式上の要件が、26.3の規定によって必要とされる程度にまで満たされている場合には、同規則の規定に基づく欠陥の補充をするよう第十四条(1)(b)に規定する求めを発出することを要しない"と規定します。それ故、方式審査官はこの基準とPCT規則11に規定された要件のバランスをとる役割を担いますが、時には容易ではなく、欠陥の扱い(又は扱わない)に不一致が生じる場合があります。
実務や PCT 規則、PCT に基づく実施細則及び PCT 受理官庁ガイドラインに規定されている基準適用の均一性は課題です。PCT 受理官庁として行動する 100 以上の国内及び広域特許庁と国際事務所(IB)において、それらの官庁の方式審査官の経験値は大きく異なり、また高い離職率により蓄積されない場合もあり、PCT において全ての官庁が同じように出願を扱うようにすることは今まさに直面している課題です。しかし IB の方式審査官は、そのような問題への対応がより均一に実施され、受理官庁の方式審査官が最初に気付かなかった問題を発見し、そして迅速な補充を確実にするための"第 2 の目"の役割を果たすことになっています。IB のこの再確認は PCT 規則 28.1 に基づき規定され、IB の見解において、ある PCT 出願が PCT 第 14 条(1)(a)(i)、(ii)又は(v)に規定される欠陥の何れかを含む場合は、受理官庁に対し様式 PCT/IB/313("国際出願の欠陥に関する通知")を送付し、それらの欠陥を指摘するでしょう。
もし PCT の方式上の規定がより厳密に適用されれば、出願人側の当該規則への適合性の強化につながることはたしかです。一方、多くの PCT 出願が PCT 第 14 条(1)(b)に基づき取下げと見なされることになりますので、PCT はそのような状況は避けようとしています。PCT 受理官庁ガイドラインは実際に次のように規定しています(パラグラフ 159): "何れの場合においても、規則 26.3 の観点から、受理官庁は、通常、規則 11 に基づく様式上の要件を満たしていないからといって国際出願が取り下げられたと宣言すべきではない。それらの要件を満たしていない極端な場合にのみ受理官庁はそのような宣言をすべきである。" PCT 規則 11 に規定された様式上の要件の適用を和らげる上記"国際公開が適度に均一なものである"という基準は、実際には IB のみが PCT 出願の公開を行うため、PCT 受理官庁にとって適用することは明らかに難しいことです。出願人にとっては、PCT 規則 11 の要件を満たすことは彼らに免責を提供することになっています。要件の全てが厳密に適用されていなくても、要件を満たしている場合には、補充を求められるべきではありません。
現行の PCT 制度は、全ての要件が厳密に実行されるほど満足のいくものではなく、その非効率性は確かにより広い基準をもたらしていますが、これが PCT 制度の現状であり、PCT 全加盟国において PCT 制度を利用する出願人の多様性と同様に、PCT の全官庁の多様性を考慮しながら、均一性と妥当性とのバランスを試みた結果です。
なお、受理官庁が出願における特定の様式上の欠陥の補充を求めない場合でも、補充したい"欠陥"がある場合には、出願人自身の意思で当該受理官庁にその補充を含む差替え用紙を送付することも可能ですのでご留意ください(PCT 受理官庁ガイドラインのパラグラフ 209 参照)。その際、添付する書簡において、"欠陥のある"用紙と当該差替え用紙との相違について明確に注意喚起し、"欠陥のある"用紙を当該差替え用紙に差し替えることを受理官庁に請求してください(PCT 規則 26.4 参照)。IB へ転送された後に IB にて国際公開の技術的準備が完了する前に手続きができるよう十分な時間確保のため、そのような要請はできる限り早く受理官庁へ送付することをお勧めします。万一のために、受理官庁に対し当該用紙が IB へ迅速に提出されたかどうか確認するよう念を押すことも可能です。