PCTニュースレター 02/2020: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
"相当な注意" 基準に基づく優先権の回復のための要件の充足
Q: やむを得ぬ理由により、12 カ月の優先期間を徒過してしまい、当期間が経過した2日後になってようやく出願できました。当方が国内段階移行を予定している指定官庁は、優先権の回復には、状況により必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらず優先期間の徒過が生じたものであることを要求しています。基準を点検する受理官庁が、相当な注意の基準に関して肯定的な認定を行う可能性を最大限に高めるためには、何を提出すべきなのか知りたいです。また、相当な注意が払われたとみなされる状況の事例をいくつか教えてくれますか?
A: 優先権の回復請求の方法に関する詳細は、PCT Newsletter 2015 年 9 月号の実務アドバイスに掲載されています。以下のリンクから、ご参照ください。
www.wipo.int/pct/ja/newslett/2015/newslett_2015.pdf#page=66
願書様式 (PCT/RO/101) の第 VI 欄、または PCT 規則 26 の 2.3(e)1 に基づき適用される期間内に提出される受理官庁あての書簡のいずれかにより、優先権の回復請求を提供します。それに加えて、優先期間を徒過した理由を説明する "理由の陳述" も、同一期間内に提出する必要があります (PCT 規則 26 の2.3(b)(ii))。理由の陳述は、回復基準として満たされるよう求めている基準が考慮され、望ましくは陳述を裏付ける申立てもしくはその他の証拠が添付されているべきです (PCT 規則 26 の 2.3(b)(iii))。
"相当な注意" の基準を満たすためには (比較的厳しくない "故意ではない" 基準が通常は単なる申告で十分であるのとは対照的に)、陳述において、出願の遅滞が生じた事実および状況の詳細を、国際出願の適時な提出のために取られた是正措置または代替措置とともに記載する必要があります。一般に、PCT 規則 26 の 2.3(a)(i) の意味における "相当な注意" を払ったという基準は、合理的に注意深く行動する出願人であれば取ったであろうあらゆる手段を出願人がとっていた場合にのみ満たされます。
当該出願人が、合理的に注意深く行動する者が取るであろう "相当な注意" を払ったかどうかを決定するにあたって、受理官庁は個別の案件に応じた事実および状況を考慮します。一般に、国際出願を提出する期間を遵守するため出願人があらゆる予防策を講じてきたことを証明するだけでは十分ではありません。むしろ、出願人は問題となっている当該出願に関し、あらゆる "相当な注意" を払ったことを示さなければなりません。受理官庁は、優先期間の満了までの国際出願の提出に関する出願人の具体的な行為について、事実に基づく分析を行います。
出願人が代理人によって代理される場合、出願人および代理人の両者が、当基準を満たすための "相当な注意" を払ったことを示さなければなりません。出願人に関する限りは、通常の状況においては、資格のある代理人を選任することで一般に "相当な注意" の基準を満たしていると考えられます。
各受理官庁は、個々の事情に応じた分析を行う一方、受理官庁が "相当な注意" 基準が満たされていると認定する場合の事例が、PCT 受理官庁ガイドライン (www.wipo.int/pct/en/texts/pdf/ro.pdf) に記載されています。ガイドラインにある事例は、あなたのケースにおいて理由の陳述がどの程度詳細であり、(必要な場合は) どのような証拠が陳述の裏付けとして提出されるべきなのかを、あなたに教えてくれます。
例えば、優先期間の徒過が、特定の管理業務の遂行を委ねられていた代理人または出願人の事務職員(アシスタントやパラリーガルのような専門家ではない者) による人為的過誤であった場合の事例を紹介します。
"出願人または代理人は、事務職員に特定の管理業務を委ねるが、注意深く行動する出願人または代理人は、経験豊富で適切に訓練を受けて監督されている従業員を慎重に人選し、訓練および業務の監視を行っている。国際出願の記録管理、監視、準備または提出に関するアシスタントの人為的過誤は、出願人または代理人が、当該アシスタントの管理において "相当な注意"が払われており、当該事例において優先期間内に提出できなかったことが単独の人為的過誤であったことを示すことができれば、当該出願人または代理人に帰せられることはない。当該出願人または代理人は、通常、当該アシスタントがその特定の業務を任されていた年数、当該アシスタントに与えられていた研修および管理の程度、ならびに当該アシスタントがそれまで全ての責務を勤勉に実施してきたか否かを理由書において説明すべきである。" [PCT 受理官庁ガイドライン、166 M(f) 項]
優先期間の徒過に関するよくある理由の事例はさらに、以下のリンクに掲載されています。
www.wipo.int/en/web/pct-system/texts/ro/ro166a_166t#_166m
個人の発明者または中小企業は同程度の基準が求められませんが、すべての出願人もしくは代理人は、当該分野におけるベストプラクティスに相当する効率的で信頼性のあるリマインダー機能、監理およびバックアップシステムを構築することが求められる点にご留意ください。
出願人の提出する理由の陳述や証拠が、関連する基準が満たされているかどうかの決定に十分でないと受理官庁が判断する場合には、当受理官庁は、回復請求を拒否する前に、出願人に優先権の回復を拒否する意向を知らせます。そして、様式 PCT/RO/158 (Notification of Intended Refusal of Request toRestore Right of Priority and/or Invitation to Furnish Declaration or Other Evidence (優先権の回復請求を拒否する用意がある旨の通知および/または申立てその他の証拠の提出命令)) の発行により設定した (追加の) 期間内に意見、証拠もしくは申立てを提出する機会を出願人に与えます。適用される期間が経過した後、当官庁は受け取った返答に基づき、該当する基準が満たされているか否かに関する決定を行い、様式 PCT/RO/159 (Notification of Decision on Request to Restore Priority (優先権の回復請求についての決定通知)) の発行により出願人に通知します。
理由の陳述が十分でない場合には、上述のように補完は可能です。しかしながら、PCT 規則 26 の2.3(e) に記載される期間内に、理由の陳述が全く提出されなかった場合には、通常、受理官庁は理由の陳述の欠如による拒否と記載して、優先権の回復請求を拒否する点にご留意ください。
回復請求に関する証拠として受理官庁に提出された機密書類が IB により公開される可能性が懸念される場合には、受理官庁は出願人による理由を示した請求により、または当受理官庁の決定に基づき、該当する情報が機密であるとみなされることがあります。その場合には、そのような証拠は IB に送付されず、当該情報は結果として公衆に利用可能にはされません (PCT 規則 26 の 2.3(h の 2))。当規則に該当する情報の例には、国際出願提出の遅滞に関わった個人の情報があります。例えば、パラリーガルの氏名、または病気の性質を記載した診断書です。受理官庁による回復請求の決定にそのような機密情報は不要であるため、すでに最初の時点で書類から削除することも可能です。どの官庁が回復請求を受理しているか、および (一つの基準のみ適用している場合は) どちらの基準を当官庁が適用しているかに関する情報、ならびにそのような請求を行う場合に当官庁に支払う手数料に関する情報は、以下のリンクにある表をご参照ください。
www.wipo.int/pct/en/texts/restoration.html
指定官庁がそのような請求を受理し、関連する基準を適用する範囲で、出願人は国内段階において優先権の回復請求 (PCT 規則 49 の 3.2) を行うことも可能である点にご留意ください。そのような請求は、PCT 第 22 条に基づき適用される期間から 1 ヵ月以内に、関連する各指定官庁に対して提出される必要があります。詳細は、上述したリンクにある優先権の回復に関する表に掲載されています。