PCTニュースレター 02/2008: 実務アドバイス
注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。
国際出願を国内受理官庁に出願し、PCT 規則 19.4 に基づき当該国内受理官庁が受理官庁としての国際事務局に当該出願を送付することを当てにすることについて
Q: 私は米国の代理人ですが、国籍がメキシコで米国の居住者である顧客から国際出願を出願することを依頼されました(先の国内出願に基づく優先権を主張していません。)。受理官庁としての米国特許商標庁(RO/US)は英語で記載された国際出願だけを受理しますが、当該出願の明細書と請求の範囲はスペイン語で記載されています。手続のこの段階で英語に国際出願を翻訳する費用が生ずるのは避けたいので、どの言語で記載された国際出願でも受理する受理官庁としての国際事務局(RO/IB)に当該出願を出願する予定です。それにもかかわらず、PCT 規則 19.4 に基づき米国特許商標庁が RO/IB に当該出願を送付することを想定して、当該出願を RO/US に出願することは可能でしょうか。若しくは、直接 RO/IB に出願すべきなのでしょうか。
A: 国際出願が PCT 受理官庁として行動する国内(広域)官庁に出願されたが、規則 12.1(a)に基づき当該官庁によって受理される言語でされたものではない場合には、PCT 規則 19.4に基づく救済措置が適用になります。当該措置において、国の安全に関する規定によって送付することが妨げられない限り、当該国内官庁は国際出願を RO/IB に送付します。どの言語で記載された国際出願であっても RO/IB は受理すること(管轄国際調査機関(ISA)及び当該 ISA が受理する言語によって、国際調査のために翻訳文を提出する必要がある場合があります。)及び PCT 締約国の国民及び居住者であれば国際出願を RO/IB に出願できることから、RO/IB に出願することで出願人の自由度が増します。もし、国際出願が国内官庁に出願され、PCT 規則 19.4 に基づき RO/IB に送付されたならば、RO/IB に代わって当該国内官庁が当該出願を受理したとみなされます。そして、国内官庁によって国際出願が受理された日が国際出願日の目的で受理された日とみなされます(PCT 規則 19.4(b))。規則 19.1 及び 19.2 に基づき出願人の国籍及び住所を管轄していない PCT 受理官庁に出願された場合、若しくは、上記以外の理由であって、規則 19.4 の手続が適用されることを国内官庁と IB が同意し出願人が承認した場合に、同様な手続が適用されます。
もし、国際出願を国内受理官庁に出願し、当該官庁が PCT 規則 19.4 に基づき RO/IB に出願を送付した場合には、2 つの送付手数料と同等額を支払うことになるかもしれません。1 つは RO/IB に対して、そしてもう 1 つは国内受理官庁が出願人に PCT 規則 14 に基づき当該官庁によって請求される送付手数料と同額の支払を要求することがあります(PCT 規則 19.4(b)参照)。この記事を記載している時点においては、米国特許商標庁(USPTO)はこの手数料を請求します。もし、出願人が既に国際出願手数料及び国際調査手数料を当該国内官庁に支払っている場合には、これらの手数料は出願人に返却されます。そして、出願人は(二番目の)送付手数料と共に、それら手数料を RO/IB に支払わなくてはなりません。手数料の支払い期限の計算には国内官庁によって受理された日を用いるわけではなく、RO/IB が実際に国際出願を受理した日が国際出願を受理した日としてみなされます。国内受理官庁に出願した場合に、RO/IB に当該出願を送付する前に、当該国内受理官庁は国の安全に関する規定に適合しているかを確認することができます(国際出願が直接 RO/IB に出願された場合については以下を参照)。
もし、国際出願を国内受理官庁が受理しないことが分かっているのであれば(例えば、言語の理由から)、PCT 規則 19.4 に基づく手続に頼るよりも、RO/IB に直接出願することをお奨 めします。直接出願すれば、送付手数料は 1 回のみ支払うことになります。また、直接出願することで、国際出願の処理のための時間を節約できます。そして、実施する手続がより少なくなります。例えば、PCT 規則 19.4 に基づき出願を RO/IB に送付したことを出願人に知らせるための通知書(様式 PCT/RO/151)を発行したり、国内官庁に支払った手数料を払い戻したりする手続が少なくなります。国内受理官庁は国際出願を RO/IB に速やかに送付しなければなりませんが、そのような送付が遅れる危険性はあります。しかし、RO/IB に国際出願を出願する前に、国の安全に関する規定を満たすことは出願人の責任になります。RO/IBは満たしていることを確認できないからです。国際出願を出願する前に、出願人の国籍及び住所から考えて管轄することになる国内官庁に確認する必要があります。
加えて、一般的に RO/IB に出願する際に以下の点をご注意ください。
- RO/IB は出願人が代理人によって代理されることを要求することはありませんが、代理人が指名されるのであれば、代理人は、出願人(又は、二人以上の出願人がいる場合には、出願人の少なくとも一人)が居住者又は国民である締約国の国内官庁又はその締約国のために行動する国内官庁に対して業として手続をとる機能を有する者である必要があります(ご質問された方は出願人が住所を有する国の官庁(USPTO)に対して業として手続をとる機能を有しているので、この要件を満たしています。)。
- 国際出願を調査/審査する管轄国際調査機関又は国際予備審査機関は、出願人が居住者又は国民である締約国の国内官庁又はその締約国のために行動する国内官庁に当該国際出願が出願されたならば管轄したであろう機関となります。ご質問のケースでは、出願人は米国の居住者であって、メキシコの国民ですから、USPTO のための管轄 ISA 及びIPEA は、USPTO、欧州特許庁(条件によって)、大韓民国知的所有権庁となり、メキシコ工業所有権機関のための管轄機関は、欧州特許庁、スペイン特許商標庁、スウェーデン特許登録庁又は USPTO になります。スペイン語の出願を調査及び審査する ISA 及びIPEA は前述の ISA 及び IPEA の一つのみが該当し、スペイン特許商標庁となります。もし、他の ISA 及び/又は IPEA を選択した場合には、選択した機関が受理する他の言語へ国際出願を翻訳する必要があります。ISA 及び IPEA の管轄と当該機関が受理する言語に関する情報は PCT 出願人の手引きの附属書 C、D 及び E に記載があります。(www.wipo.int/pct/guide/en/)
メキシコの国民であることから、出願人はスペイン語の国際出願をメキシコ工業所有権機関に出願することが可能です。しかし、当該機関に対してはご質問者が代理人として手続を取る資格を有していません(当該機関は代理人がメキシコの居住者又は国民であることを求めています。)。むしろ、ご質問者は連絡先とみなされる可能性があります(このような状況の更なる情報は PCT Newsletter No. 06/2006 実務アドバイス「出願人が住所/国籍を有する締約国の官庁に手続を行う権利のない代理人」をご参照ください。)。
受理される出願の方法、支払うべき手数料、受理される通貨及び支払い方法、RO/IB に出願する際の特別の要件及び PCT 受理及び処理チームへの連絡先(PCT 出願の支払いの受理及び状況の確認などのため)を含むRO/IBに対する出願に関する情報はPATENTSCOPE®のPCT関連資料の「WIPO への直接出願」からご覧いただけます。
www.wipo.int/pct/en/filing/filing.htm