注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

国際調査機関に先の調査の結果を利用するよう請求する

Q: 先の国内出願の優先権を主張して国際出願を提出しようとしているところです。国際調査報告を作成する際に、国際調査機関が先の出願に関する調査の結果を考慮するよう請求することは可能でしょうか?もし可能であればどのように請求すればよいのでしょうか?また当方は調査手数料の減額を受けられるでしょうか?

A: 以下に説明するように、PCT規則4.12及び12の2.1に基づく全ての要件に従うことを条件に、国際調査機関(ISA) に対し、国際調査を行うに当たり、同一若しくは他のISA又は国内官庁によって行われた先の国際調査、国際型調査又は国内調査("先の調査") の結果を考慮するよう請求することが可能です。しかしながら、ISAは、全ての場合において先の調査の結果を考慮することが義務付けられているわけではないことを認識する必要があります。PCT規則41.1に従い、当該先の調査が同一のISAによって行われたとき、又はISAとして行動する官庁と同一の官庁によって行われたときは、当該ISAは、国際調査を行うに当たり当該先の調査の結果をできる限り考慮します。ただし、当該先の調査が他のISAによって行われたとき又はISAとして行動する官庁以外の国内(広域) 官庁によって行われたときは、当該ISAは、国際調査を行うに当たり当該先の調査の結果を考慮するか否かを決定することができます。

貴殿が先の調査の結果をISAが考慮するよう請求したい場合には、以下の要件が求められます。

(1) 願書様式にISAが先の調査の結果を考慮するよう希望する旨を記載する。ePCT出願では、"国際調査" の項目中の適切なオプションを選択することでこれを簡単に行えます。PCT-SAFEや他のPCTオンライン出願のソフトウェアにも同等の機能があります。まだ紙形式で出願している場合には、願書様式の第VII欄("国際調査機関")、特に、第VII欄の続き(先の調査及び先の分類の結果の利用) にある特別なチェックボックスをご参照ください。先の調査が行われた先の出願の出願日、出願番号及び出願国(又は広域官庁) を記載することにより、当該先の出願を特定する必要があります。願書には、該当する場合には、国際出願が当該先の調査が行われた出願と同一若しくは実質的に同一である旨又は異なる言語で出願されたことを除き国際出願が先の調査が行われた出願と同一若しくは実質的に同一である旨の陳述を(PCT規則4.12(ii)に基づき) 記載することができます。

(2) ISAへの送付のため先の調査の結果の写しを受理官庁へ提出する。当該写しは国際出願とともに出願時に、当該機関または官庁によって作成された形式に応じて、例えば調査報告、列記された先行技術の一覧表又は審査報告の形式で提出(PCT規則12の2.1(a)) されるべきです。しかしながら、以下の場合には写しを提出する必要はありません。

  • 先の調査が願書様式の第VII欄に記載されるISAにより行われなかったが、受理官庁として行動する官庁と同一の官庁によって行われた場合。この場合、先の調査の結果の写しを自身で提出することに代えて、願書様式の第VII欄の続き(項目1) にある関連するチェックボックスをチェックすることで、受理官庁に対し、それを作成しISAに直接送付することを請求することができます(そのような請求は手数料の支払が生じる場合があることにご留意ください) (PCT規則12の2.1(b))。
  • 先の調査が同一のISA又はISAとして行動する官庁と同一の官庁によって行われた場合(PCT規則12の2.1(c)) 又は
  • 先の調査の結果の写しが受理官庁又はISAが認めた形式及び方法で、例えば、電子図書館により当該受理官庁又はISAが入手可能である場合において、願書様式の第VII欄の続き(項目1) にあるチェックボックスにその旨を記載した場合(PCT規則12の2.1(d))。

二以上の先の調査の結果を考慮してもらいたい場合には、それぞれの先の調査に関する情報が提出される必要があることにご留意ください。ePCT出願及び他のオンライン出願ソフトウェアでは、追加の先の調査に関する情報を含むことが可能です。紙形式で出願する場合には、それぞれの先の調査の情報は、別の用紙に記載される必要があります。追加の先の出願ごとに第VII欄の続きを含む用紙を複製し、各用紙に"第VII欄の続きの項目1の続葉" と記載する必要があります。

さらに、PCT規則12の2.2に従い、ISAが求める場合には、当該求めに記載された相当の期間内に、先の調査に関する他の書類を提出するよう要求される場合もあります。

  • 関係する先の出願の写し(PCT規則12の2.2(a)(i))。
  • 先の出願が当該ISAが認めていない言語でされた場合には、当該機関が認める言語による当該先の出願の翻訳文(PCT規則12の2.2(a)(ii))。
  • 先の調査の結果が当該ISAが認めていない言語で作成された場合には、当該機関が認める言語による当該先の調査の結果の翻訳文(PCT規則12の2.2(a)(iii))。及び、
  • 先の調査の結果に列記された文献の写し(PCT規則12の2.2(a)(iv))。

ただし、以下の状況においては、そのような翻訳文の写しは要求されない場合があります。

  • 先の調査が同一のISA、若しくはISAとして行動する官庁と同一の官庁によって行われた場合、又はPCT規則12の2.2(a)(i) 若しくは(ii) に規定する写し若しくは翻訳文が、当該ISAが認めた形式及び方法で、例えば電子図書館により若しくは優先権書類の形式で当該ISAが入手可能である場合(PCT規則12の2.2(b))。及び、
  • 願書に国際出願が先の調査が行われた出願と同一若しくは実質的に同一である旨又は異なる言語で出願されたことを除いて国際出願が先の調査が行われた出願と同一若しくは実質的に同一である旨の陳述がPCT規則4.12 (ii) の規定に基づいて記載された場合(PCT規則12の2.2(c))。

ISAが国際調査を行うに当たり先の調査の結果を考慮する場合、作業の重複が最小限に抑えられることにより、通常は調査の手続がより効率的になります。これを考慮して、通常、当該ISAは国際出願について支払われた調査手数料の払戻し、又は部分的な払戻しを行います。ただし、PCT第16条(3)(b) に基づき、ISA及び国際予備審査機関としての関連する官庁の機能に関し、当該官庁と国際事務局との間で適用される取決めで定める範囲において及び条件に従って払い戻します(PCT規則
16.3参照)1。そのため、最初に調査手数料の全額を支払う必要があり、ISAが先の調査の結果の利用可能な範囲を決定する時点まで、貴殿への払戻しを待つ必要があります。

そのような払戻しに関する条件の詳細は、上述の取決めに掲載されております。以下のリンク先からご覧ください。

www.wipo.int/pct/en/access/isa_ipea_agreements.html

またPCT出願人の手引の対応する附属書Dからもご覧いただけます。

www.wipo.int/pct/en/appguide/

本実務アドバイスでは、国際調査報告の作成時に、ISAが先の出願に関する調査の結果を考慮するよう出願人が請求する場合について説明しました。その状況に加え、特定の状況において、PCT規則23の2.2(a) に基づき先の調査の結果がISAへ送付され、出願人がPCT規則4.12に基づく請求を明示的にしていない場合でも、国際調査を行う際にISAが先の調査の結果を考慮する場合があることにご留意ください。このような事例についての詳細は、別の実務アドバイスで説明いたします。

  1. 執筆時点では、USPTO はISR が完全に又は部分的に先の調査の結果に基づいて作成された場合でも払戻しを行いません。