注意: 以下の情報は PCT ニュースレターに当初掲載された時点では正しいものでしたが、一部の情報はすでに適用されない可能性があります。例えば、関係する PCT ニュースレターが発行されて以降、PCT 規則、実施細則、そしてPCT 様式に修正が行われた可能性があります。また、特定の手数料の変更や特定の出版物への参照は、すでに有効ではない場合があります。PCT 規則への言及がある場合は常に、実務アドバイスの掲載日に施行されている規則がその後修正されていないか慎重にご確認下さい。

PCT 規則 92 の 2 に基づく変更の記録要請を提出する際のベストプラクティス

Q: 3 ヶ月前に国際出願を提出した代理人です。当該出願の出願人は、最近引っ越しました。公開される PCT 出願の書誌情報に新しい住所を記載するための最善の方法を教えてください。

A: 住所変更は、PCT 規則 92 の 2 に基づく変更の記録要請(以降、規則 92 の 2 に基づく請求)により通知される必要があります。規則 92 の 2 に基づく請求を受理官庁へ送付することもできますが、受理官庁は記録のために国際事務局(IB)へ転送することしかしませんので、最善の方法とはいえません。当該方法は余分な手続きが加わるだけでなく、受理官庁が規則 92 の 2 に基づく請求を IB へ転送するのに数日、若しくは数週間かかるかもしれません。なお、当該請求は優先日から 30 ヶ月の期間の満了前に IB が受理する必要があります(PCT 規則 92の 2.1(b))。そのため当該請求は直接 IB へ提出することをお勧めいたします。

公開される国際出願に新しい住所を記載するためには、請求は遅くとも公開の技術的準備が完了(公開日の 15 日前)する前日の真夜中までに IB が受理する必要があります。当該請求に問題がある場合もあり、前記期限よりも十分余裕をもって提出することをお勧めします。IB は変更が行われた旨を出願人(又は代理人)に連絡し(様式 PCT/IB/306 を使用)、その写しを関連する受理官庁、国際調査機関、補充調査に指定された機関、国際予備審査機関及び指定(選択)官庁へ送付します。

なお、公開の技術的準備の完了の期限が過ぎてしまったとしても、規則 92 の 2 に基づく請求は IB により手続が行われれます(優先日から 30 ヶ月の期間の満了前に IB により受理された場合)。その場合、出願は再公開されませんが、PATENTSCOPE 上で関連する国際出願の"書誌情報"タブにて出願人の住所は更新され、第三者に閲覧可能となります。30 ヶ月の期限後に IBに届いた規則 92 の 2 に基づく請求は、IB によって記録されず、出願人が各指定(又は選択)官庁へ変更を通知しなければなりません。

以下は IB に対し規則 92 の 2 に基づく請求をするための様々な方法を紹介しており、ベストプラクティスから始まり、最後はあまりお勧めではない方法で終わります。

ePCT プライベートサービスにおける ePCT アクション機能

規則 92 の 2 に基づく請求の最善の方法は、ePCT プライベートサービスのアクション機能を利用することです。当該機能では、規則 92 の 2 に基づく請求のために作成された簡単なオンライン・ウェブフォームに記入することができ、文書作成の手間を省きます。当該機能の利用には、ePCT で特定の PCT 出願へアクセス可能である必要があります。

オンラインで規則 92 の 2 に基づく請求を提出する際には、以下の手順で行います。

  • 国際出願を開き、"アクション"タブを選択
  • アクションのリストから"規則 92 の 2 に基づく変更の記録要請"を選択し、"OK"をクリック
  • 変更する対象の当事者を選択し、"既存の当事者情報を編集/置き換え"をクリック
  • 出願人の住所を修正するためウェブフォームに記入
  • "確定"をクリック
  • 規則 92 の 2 に基づく請求に署名
  • 手続のため IB へ当該請求を送付するため"規則 92 の 2 に基づく変更の記録要請を送信"をクリック

"ePCT アクション:規則 92 の 2 に基づく変更の記録要請"というタイトルの文書が手続のため IB へ転送されます。機密保持上の理由により、IB おける規則 92 の 2 に基づく変更請求の手続きが未処理の間は、国際出願の全てのコンテンツへのアクセスが停止されますが、国際公開のコンテンツの"ファイル一覧"から当該文書を確認することが可能です。

ePCT プライベートサービスの ePCT アクション機能は、その他の規則 92 の 2 に基づく変更の提出方法より、より迅速で正確で効率的に処理されます。IB へ直接オンラインで規則 92 の2 に基づく請求を送付するのにかかる時間の節約に加え、ePCT アクション機能を利用するメリットは、提供されるウェブフォームを使用することで、変更箇所を直接特定するため、IB による変更の読み間違いや、ミスタイプを排除できます。さらに、当該アクションは特定の国際出願のファイルに対して直接行われるため、当該情報が間違った出願ファイルに適用されることがありません。ePCT プライベートサービスの規則 92 の 2 に基づくアクション機能の利用方法に関する詳細は、下記のリンク先にて、"出願人及び第三者のための ePCT ユーザガイド"の 124 から 130 ページをご参照下さい。

https://pct.wipo.int/LoginForms/epct.jsp

ePCT パブリックサービスにおける ePCT アクション機能

ePCT パブリックサービスの ePCT アクション機能もありますが、パブリックサービスにおける規則 92 の 2 に基づく請求のアクション機能は国際出願が公開された後にのみ利用可能なサービスですので、国際公開前に規則 92 の 2 に基づく請求を提出する場合には利用できません。

ePCT パブリックサービスにおけるドキュメントアップロード

まだ国際出願が公開されておらず、また ePCT プライベートサービスの関連アクション機能を利用する立場にない場合(例えば、出願にアクセスできないが、早急に規則 92 の 2 に基づく請求を提出する必要がある場合)、ePCT パブリックサービスを介して書簡を提出することをお勧めします。ePCT パブリックサービスを利用するためには WIPO アカウントを作成(迅速で簡単な手続)する必要がありますが、電子証明書による認証は必要ありません。規則 92 の 2に基づく請求を含む書簡は PDF 形式へ変換し、関連する国際出願へアップロードする必要があります。

当該方法は郵便での送付より早いうえ、ファックスでの送付において問題となり得る文書が IBへ届かなかったり、全てのページが IB へ届かなかったりすることもありません。さらに、当該文書は国際出願のファイルに直接挿入されるため、手動での操作が不要なので確実です。なお、IB おける手続きが未処理の間は、機密保持上の理由により、ePCT プライベートサービスの規則 92 の 2 に基づく請求のアクション機能のようなオンラインアクセスは自動的に停止される旨、ご留意下さい。ドキュメントアップロードに関する詳細は、以下のリンク先にて、ePCTポータルの"サポート情報"から利用可能な ePCT ドキュメントアップロード(STEP-BY-STEPガイド)をご参照下さい。

https://pct.wipo.int/LoginForms/epct.jsp

FAX

規則 92 の 2 に基づく請求は IB へファックスで送付することも可能です。郵送より望ましい方法ですが、上述のように未送付や不完全な送付のリスクがあり、あまりお勧めできません。またファックスの不具合により、例えば出願人の住所などの情報に誤記が生じる場合があります。

郵送

規則 92 の 2 に基づく請求の郵送は、当該請求を早急に提出しなければならない場合、適用される期限に間に合わない、又は郵便での亡失のリスクがあるため、お勧めできません。なお、IB は E メールによる規則 92 の 2 に基づく請求は受理しない旨、ご留意下さい。規則 92 の 2 に基づく請求の提出に関する詳細は PCT 出願人の手引 国際段階の概要のパラグラフ 11.018 から 11.022 をご参照下さい。