ゲノム編集技術の知財戦略:PtBioはいかにPCTを活用して日本発のイノベーションを世界市場へ展開しているか

2026年8月13日

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Image: PtBio Inc.
Mr. Keisuke Okuhara, Representative Director and CEO of PtBio Inc.

プラチナバイオ株式会社の代表取締役CEOの奥原啓輔さんに、PCTの活用状況を伺いました。(インタビューは2026年6月広島大学イノベーションプラザ内の本社(東広島市)にて実施)

ポイント

  • プラチナバイオ株式会社は広島大学発スタートアップであり、ゲノム編集技術とバイオDXを基盤とし、多様な生物資源のゲノム情報を解析し、データ駆動型の品種改良や新たなバイオビジネスの創出に取り組んでいる。卵アレルギーの主要原因タンパク質であるオボムコイドをゲノム編集により除去したアレルギー低減卵が代表的な成果である。
  • ゲノム編集関連技術にはCRISPR-Cas9をはじめ数多くの特許があるが、広島大学が保有するPlatinum TALENやZF-ND1の独自技術はそれらの特許を侵害せずに使用でき、広島大学から独占的通常実施権を得て、医療、食品及び環境分野への応用を進めている。
  • PCTを活用して外国出願を行っているが、米国や中国だけでなく、東南アジアやインドなど事業展開先を考慮して国内移行することが重要である。

―御社の事業について教えてください。

プラチナバイオ株式会社は2019年に設立された広島大学発スタートアップです。CTOの山本卓(広島大学教授)が開発したゲノム編集技術と、CSOの坊農秀雅(広島大学教授)がリードするバイオDX技術を基盤として、社会課題の解決に取組んでいます。多様な生物資源のゲノム情報を解析し、データ駆動型の品種改良や新たなバイオビジネスの創出に取り組んでいます。

代表的な研究成果として、卵アレルギーの主要原因タンパク質であるオボムコイドをゲノム編集により除去したアレルギー低減卵を開発しており、オボムコイドを判別する検査技術、加熱加工技術、鶏の品種などについても知的財産として権利化を進めています。

マレーシアの大学とは水質異臭問題をゲノム解析により解決する共同研究を実施するなど、東南アジアやインドにおいてゲノム編集の社会実装を加速するための取組を行っています。

―知財の取得方針を教えてください

ゲノム編集関連技術には数多くの特許があり、それらを侵害しないよう調査を行ったうえで事業を実施しています。広島大学が特許を保有するPlatinum TALENは、特許紛争中のCRISPR-Cas9とは別世代のゲノム編集ツールであるため、特許紛争に巻き込まれるリスクが低いことを確認しています。

制限酵素のND1については、特許切れのZinc Fingerと組み合わせたZF-ND1の開発を進めて特許を取得し、創薬スタートアップとの共同研究を実施しています。

広島大学からこれらの特許の独占的通常実施権を得て、医療、食品及び環境分野への応用を進めています。

また、広島大学との共同出願や、最近では、自社開発技術である、ゲノム編集ツールによる変異の導入効率の推定方法の特許出願も行っています。

-PCTの活用状況を教えてください。

広島大学由来のPlatinum TALENやZF-ND1などの技術や、広島大学との共同出願であるオフターゲットリスクの解析方法については、PCTを活用して外国での特許の取得を進めています。

ただ、ZF-ND1(PCT/JP2019/033045)については欧米、中国など10か国以上に移行したものの、タイやインドには移行しませんでした。当時、PCTからの国内移行時点では両国の市場の重要性を十分想定できていませんでしたが、現在は東南アジア及びインドを重視した知財戦略へと見直しを図っています。

研究段階から事業化を見据えた外国出願を検討できる体制を構築しており、大学との共同研究成果についても積極的に海外権利化を進めています。

外国出願に必要な費用は、資金調達又は自社予算により確保することが基本ですが、大学発スタートアップにとって外国出願費用の確保は大きな課題であり、生成AIの活用による翻訳費用の削減なども検討しています。

大学とスタートアップが密接に連携し、研究段階から事業化を前提とした知財戦略を構築できることが当社の強みと考えています。