ダレン・タンWIPO事務局長、公式訪日の全日程を終了

2025年2月19日

WIPOのダレン・タン (Daren Tang) 事務局長は、2025年2月8日から15日にかけて日本を公式訪問し、政府高官、民間企業のリーダーをはじめ、学界やクリエイティブ業界代表者などと会談を行いました。

二者会談の開催

タン事務局長は、岩屋毅外務大臣と会談を行いました。日本のWIPO加盟50周年の節目を迎えるに当たり、タン事務局長から、世界のイノベーション・エコシステムの強化に対する日本の継続的な支援に深い謝意が表明されるとともに、50年にわたる緊密な協力関係を土台として関係を築いていく決意が述べられました。

ダレン・タンWIPO事務局長 (右) と岩屋毅外務大臣 (左) との会談 (2025年2月12日)

また、武藤容治経済産業大臣との会談では、グリーンテクノロジーの重要性や、気候変動問題への世界的な取り組みに果たすWIPO GREENの役割について話し合いが行われました。タン事務局長からは、日本が、FIT/ Funds-In-Trust Japan IP Globalファンドを通じて、100を超える開発途上国や後発開発途上国 (LDC) を支援してきたことに対する謝意も述べられました。

ダレン・タンWIPO事務局長 (右) と武藤容治経済産業大臣 (左) との会談 (2025年2月13日)

城内実内閣府特命担当大臣 (知的財産戦略) との会談では、タン事務局長から、日本の包括的な知的財産 (IP) 戦略と、イノベーションの促進におけるその役割について言及がありました。特に、「クールジャパン」はソフトパワーにとどまらず、大きな経済的機会ももたらすこと、また、イノベーションは、特許や商標、意匠を超えて、著作権、コンテンツ、データ、ソフトウェアにまで及ぶことを指摘しました。さらに、2024年版のWIPOグローバル・イノベーション・インデックス (GII) において、「東京-横浜」地域が世界の科学技術クラスターの首位に立ったことに対して、タン事務局長から祝意が表明されました。

野中厚文部科学副大臣、都倉俊一文化庁長官との会談も設けられました。会談においては、タン事務局長から、「世界知的財産の日2025」のテーマである「知的財産と音楽」を踏まえ、クリエイターが世界中に創造性や文化、芸術を広げていけるようにするには、国際協力がとりわけ重要であることに言及しました。また、人工知能 (AI) の時代において権利を取り巻く環境が進歩を遂げている状況と、これがもたらす変化についての議論も行われました。

小野洋太特許庁長官との会談で、タン事務局長は、FIT/Japan IP Globalを通じた途上国のスタートアップ・中小企業への支援を目的として特許庁とWIPOの間で昨年締結された協力協定が着実に進展していることを歓迎しました。また、WIPO GREENアンバサダープログラムや2025年大阪・関西万博において、WIPOと特許庁が共催するイベントでも協力することについて合意しました。

産業界のリーダーやイノベーターとの会合

タン事務局長と長澤健一副会長をトップとする日本知的財産協会 (JIPA) の代表団との会談が行われました。JIPA知財シンポジウムの基調講演で、タン事務局長は、知財エコシステムを強化すること、そして大企業と中小企業の協力を促進することの重要性を訴えました。それとともに、日本のイノベーターに対して、2025年大阪・関西万博を日本のイノベーションに対する認知度の向上を図る契機とするなど、世界のマーケットをより注視するよう促しました。

その後、タン事務局長とWIPO GREENの初代日本アンバサダーである山本雅史氏、小野長官との会談が行われました。会談では、今後のWIPO GREEN活動に関する協力について議論し、緊密かつ継続的な協力を維持することの重要性を再確認しました。

国連大学 (UNU) の対談シリーズ「変貌する世界におけるイノベーションと創造力の未来」では、タン事務局長がUNUのチリツィ・マルワラ (Tshilidzi Marwala) 学長とともに、イノベーションの本質を変えたAIなど最近の技術進歩や、知的財産が世界全体のイノベーションと創造性の促進に果たす役割について議論しました。

㈱資生堂チーフテクノロジーオフィサーの東條洋介氏との会談では、WIPO GREENを通じて、環境に配慮した技術移転をさらに推進する方法や、中小企業との協力を強化する方策について意見交換を行いました。

東北電子産業㈱代表取締役社長兼CEOの山田理恵氏との会談からは、日本の中小企業が直面している課題について、貴重な知見を得ることができました。両氏は、競争が激化するマーケットにおいて、事業を拡大していくこと、知的財産問題の方向づけを行うこと、そして大企業と競争していくことの難しさについて議論しました。

また、東北大学発のイノベーティブなスタートアップであるファイトケミカルプロダクツ㈱、㈱GENODAS、㈱ElevationSpaceの3社との意見交換も行われました。これらを通じ、企業が直面する課題を代表者から直接聴取することによって、このような障害を克服し事業を成功に導くために知的財産が果たすべき役割について、理解を深める貴重な機会となりました。

また、主要なベンチャーキャピタルである東北ベンチャーパートナーズ (THVP) とも意見交換の機会を設けました。会談では、スタートアップ支援を目的とするTHVPの革新的な資金援助システムや、スタートアップにとっての知的財産教育の重要性について、掘り下げた議論が行われました。

学界関係者との会合

タン事務局長は東北大学を訪問し、冨永悌二総長、青木孝文理事・副学長 (企画戦略総括担当)、小谷元子理事・副学長 (研究国際戦略・展開担当)、遠山毅理事 (産学連携担当) と会談しました。同会談においては、WIPO GREENを通じたパートナーシップの重要性が指摘されるとともに、学生や研究者に知的財産教育を施す意義について意見交換が行われました。

クリエイティブ業界関係者との会合

タン事務局長は、文化財保護・芸術研究助成財団の澤和樹理事長と面談し、芸術学生に対する知的財産教育の重要性や、デジタル化が進む現代社会におけるクリエイティブアートの保護の意義について、有意義な意見交換を行いました。

その後、タン事務局長は、㈱steAm代表取締役社長でありジャズピアニスト、数学研究者でもある中島さち子氏と面談し、steAm (science、technology、engineering、Arts、mathematics) 教育や、学際的な創造性を育む知的財産の役割について、また、2025年大阪・関西万博に向けた同氏の取り組みについて意見交換を行いました。

また、マルチメディア・アーティストでWeb3クリエイターの草野絵美氏との対談では、AIによる変革の可能性や芸術表現への影響、そして、すべてのクリエイターが知的財産を認識することの重要性について話し合いました。