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若者たちが知的財産に目を向ける時

2022年3月

著者: Nadine Hakizimana氏およびEdward Kwakwa氏、WIPOグローバル・チャレンジ・パートナーシップ部門 (Global Challenges and Partnerships Sector)

考えてみると、知的財産 (IP) はあらゆるところに存在します。例えば、ラッパーのQuavo氏は「Do it for the culture, they gon’ bite like vultures (文化のためにやるんだ、彼らはハゲタカのように盗む) 」と作詞しています。これはMigosの「T-Shirt」という曲の一節です。MigosはQuavo氏、Offset氏、Takeoff氏の3人によるラップトリオで、この曲の中で「the culture (文化) 」つまりヒップホップ・カルチャーに敬意を表しています。ヒップホップ・カルチャーは、黒人の権利拡大運動の重要な原動力であり、この運動は世界的に広がり、ファッションや言語、グラフィティ、ブレイクダンス、口語詩などに影響を与えています。「for the culture (文化のために) 」音楽を作るということは、あらゆる場所で人々に喜んでもらうための新しい歌を作ることによって、創造性の限界を押し広げることを意味します。この考え方の中心にあるのが、コミュニティの大切さです。Migosはまた、他のアーティストの曲の一部を無断使用する「biting (盗用) 」を言外に蔑視しています。「biting」を軽蔑するのは、ヒップホップ・ミュージシャンたちが創作性と作品の向上・改良のために行っている努力を重んじているためです。知的財産とは創作性がすべてであり、俺たちは「bite」しない。ヒップホップ・ファンであれば「知的財産は最高!」と言うでしょう。

「Do it for the culture, they gon’ bite like vultures (文化のためにやるんだ、彼らはハゲタカのように盗む) 」という歌詞は、イノベーションと創造性を奨励しあらゆる人々に資するという調和の取れた知的財産制度の基本目的と同じことを言っており、若者に知的財産に関心を持ってもらうきっかけとなるでしょう。(写真: Gonzales Photo / Alamy Stock Photo)

Quavoの歌詞は、イノベーションと創造性を奨励しあらゆる人々に資するという調和の取れた知的財産制度の基本目的と同じことを言っています。創作者や発明者の作品を認識し、報い、彼らの成果物にアクセスできるようにすることで、グローバルな知的財産制度は、経済的、社会的、文化的な飛躍を促し、誰もが恩恵を受けることができます。Quavoの歌詞は、知的財産制度が若者の熱意をどのようにサポートするかについて、若者に関心を持ってもらうきっかけとなるでしょう。

若者にとっての知的財産

相互接続性が高まっている世界では、創造性を表現する魅力的な機会が広がっており、若者は知的財産の消費者にも創作者にも簡単になることができます。

知的財産に目を向けることで、若者は、自分の利益を守り他者の権利を侵害しないようにする方法を知ることができます。知的財産制度と同制度が付与する権利によって、若者は、自分のアイデアや才能を価値ある経済的資産に変えることができます(WIPO Youth Programに関する詳細はこちらをご覧ください) 。つまり、自分のアイデアから収入を生み出し、引き続き自分の才能を磨くことに時間とエネルギーを費やすことができます。また、自分の独創性を生かして起業し、雇用を創出し、地域社会を支援し、国の経済成長に貢献することもできます。

財務のスペシャリストであるOcean Tomo社によると、世界全体の企業価値の90%は無形資産から生まれています。途上国を中心とする多くの国々が、知識集約型の高付加価値産業の発展を促進することで経済成長を加速させようと取り組んでいるのは、このためです。知的財産権は、知識集約型経済を支える無形資産の価値を保護し、活用することを可能にするため、知的財産は若者の生活にこれまで以上に深く関わるようになるでしょう。

WIPOのYouth Program

2021年にWIPOのDaren Tang事務局長は、WIPOの中期戦略計画 (MTSP) 2022–2026を加盟国に示し、若者の役割について次のように強調しました。

「私たちは若者にも注目しています。若者は将来のイノベーター、創作者、起業家であり、多くの途上国で若者は人口の高い割合を占めています。知的財産が若者の生活とどのように結び付き、関係しているか、また、イノベーションや創造性を通じて生計を立てる、あるいはグローバルな課題に取り組むといった若者の熱意をどう支援しているか、若者に理解してもらう必要があります。」

2022年2月、WIPO Young Experts Program (若手エキスパート育成プログラム) は最初の若手専門家を受け入れました。彼らはジュネーブにあるWIPOの本部で2年間、知的財産に関する知識を学びます。彼らは知的財産分野の明日のリーダーになるでしょう。

WIPOではまた、WIPO ADR Young Program (WIPO ADRヤング) を通じて、知的財産分野の若い実務家を対象に、志を同じくする600名を超えるメンバーたちとネットワークを構築し、知的財産および裁判外紛争処理 (ADR) に関する研修を受ける機会を提供しています。

2022年2月、WIPO Young Experts Program (若手エキスパート育成プログラム) は初めて若手の専門家11人を受け入れました。(写真: WIPO / Berrod)

若者の人口動態

アフリカは世界で最も若い大陸で、国民の70%が25歳未満です。アフリカにはより良い未来を築くための大きな機会があるものの、政策担当者にとって重要な課題もあります。若者の失業者は急増しており、国際労働機関 (ILO) によると、世界の30億人の若者のうち、約7,300万人が失業しています。さらに、経済移民とそれに伴う頭脳流出は、社会および経済に広範な影響を及ぼす重大な政策課題となっています。若者の独創性とエネルギーを生かして、地域の課題に取り組み、国の経済成長を促進することは、若者の雇用改善と可能性の拡大に貢献するでしょう。

今こそ、若者の可能性を解き放つ時です。

現代の若者は、まだ十分に活用されていない独創性と創造性にあふれています。彼らの斬新な視点、エネルギー、好奇心、「やればできる」という姿勢、そしてより良い未来への渇望は、これまでのアプローチをすでに再構築し始めており、イノベーションと変化のための行動を後押ししています。

デジタルネイティブ世代の今日の若者は、おそらく最も起業家精神に富んだ、革新的で創造的な世代でしょう。若者の多くは目先の利益よりも意義を大切にし、気候変動や医療アクセス、食料安全保障、教育、失業など、現代の大きな課題に挑戦しています。しかし、サステナブルな事業を構築するまでの道のりには多くの困難が待ち構えています。知的財産に関する豊富な知識があれば、若者は自分の知的財産資産 (イノベーションや創造物) を保護することで困難を乗り切り、その価値を利用し、インパクトを高めることができます。

WIPOはこうした課題を認識し、加盟国と協力して、発明者や創作者の成功を可能にする各国の知的財産およびイノベーションのエコシステムの構築に取り組んでいます。その方法として、知的財産を利用して可能性を最大限に引き出すことができるよう企業に力を与えることなどがあります。

国内の知財制度・サービスを手頃な価格で利用できるようにするために、多くの素晴らしい活動が行われています。しかし、知的財産がどのように若者を支援できるかについての認識を高めることは、相変わらず容易ではありません。そこで、今年の世界知的財産の日キャンペーンは、「IP and Youth: より良い未来のためのイノベーション」をテーマとしました。

このキャンペーンは、アイデアを実現させ、そのアイデアで生計を立て、雇用を創出し、より良い未来を築く上で知的財産権がどのように役立つかを世界の若者に理解してもらうための好機です。知的財産権があれば、若者たちは、自分たちの目標の実現に必要不可欠なツールの1つにアクセスすることができます。

WIPOは、若者が変革の主要な推進者であり、現代の課題を解決し、私たちの未来を形作るための効果的なグローバル・パートナーシップを構築できると考えています。このように、若者の参加はWIPOの取り組みにおいて重要な焦点となっています。若者の参加を促進するWIPOの新しい活動を通じて、知的財産に関する国際的な議論への若者の参加を促し、自分たちが住みたい世界に変えようとする若者の取り組みを、知的財産がどのように支えることができるかを若者に示します。

知的財産制度によるイノベーションと創造性の支援

発明、意匠、創作物など、知的財産の種類によって保護される権利は異なります。一般に、これらの権利の主な目的は、発明者や創作者が自分たちの作品に対して公正な報酬を受け取り、生計を立てられるようにすることで、イノベーションと創造性をさらに促進することです。

知的財産権者は、知的財産権によって、自分たちの知的財産の無許可での模倣や使用を防ぐことができます。つまり、権利者は経済的に価値のある知的財産の使用に対して、合理的な価格を請求することができます。経済的な見返りが期待できることで、便利なイノベーションや創作物の開発に向けた個人や企業の投資が促進されます。

ほとんどの知的財産権には期限があり、一定の条件を満たした場合のみ取得できます。また、一定の限られた状況において、さまざまな種類の知的財産を事前に権利者の許可を得ることなく使用することを認めるルールがあります。こうした取り決めによって、発明者や創作者の利益と一般市民の利益のバランスが保たれ、誰もが知的財産の恩恵を享受できるようになります。

若い創作者が変化をもたらす

南アフリカ、ルステンブルクのモグワセ地区出身のThato Khatlanye
さんは、プラスチックをアップサイクルした通学用バッグを開発し
ました。このバッグにはソーラー技術が組み込まれており、学校
に通う現地の子どもたちは日没後も勉強することができます。
(写真: Anzisha Prize提供)

世界各地で数多くの若者がイノベーションのエコシステムに目覚ましい貢献をしています。南アフリカ、ルステンブルクのモグワセ地区出身の18才のThato Khatlanyeさんがその1人です。Khatlanyeさんは、エネルギー不足と貧困に起因する不平等な教育機会というグローバルな課題に対して、地元で革新的な解決策を生み出しました。再利用プラスチックを使用して、Khatlanyeさんはソーラー技術を組み込んだ耐久性のある通学用バッグを考案しました。学校に通う子どもたちに、本を入れるためのより頑丈なバッグを提供するだけでなく、家庭ではソーラー発電を利用した照明装置として使用できるため、日没後も安全に勉強することができます。Khatlanyeさんはこのイノベーションで、アフリカで「イノベーティブな若手起業家に与えられる最大の賞」であるAnzisha Prizeを受賞しました。

香港在住の2人の生徒、Sun Ming WongさんとKin Pong Liさんが作ったのは手指消毒機能付きドアハンドルです。このハンドルは統合LEDライト付きのガラス管で、表面は酸化チタンでコーティングされています。このLEDライトは酸化チタン内の化合物を活性化させ、99.8%の殺菌効果があります。このドアハンドルはエネルギー効率が高く、ドアの動きから生じる運動の力を利用しています。2000年代のSARS流行に着想を得た彼らの発明は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで重要性が再認識され、2019年にJames Dyson Awardを受賞しました。

同じく、2020年初めに、ケニアの病院における救急治療能力の向上が急務となっていたことから、ナイロビにあるケニヤッタ大学の工学部と医学部の学生グループが同国初の人工呼吸器を開発しました。この人工呼吸器は手頃な価格で、国際基準を満たしています。現在、毎月約100台の人工呼吸器が製造されています。学生たちはケニア弁護士会の支援を得て、ケニア産業財産機関に特許を出願しました。

2020年にナイロビにあるケニヤッタ大学の工学部と医学部の学生グループが、ケニアの病院における救急治療能力を高めるため、同国初の人工呼吸器を開発しました。(写真: David Kinuthia氏、ケニヤッタ大学、ナイロビ、ケニア)

メキシコの才能あふれる8歳のXóchitl Guadalupe Cruz Lópezさんは、リサイクル素材を利用して太陽熱温水器を発明しました。1台約13米ドルのWarm Bathと呼ばれるこの温水器は、Lópezさんが住んでいるサン・クリストバル・デ・ラス・カサスという資源の限られた地方都市で、手頃な価格の熱源を提供しています。このWarm Bathは、薪に代わる環境に優しい方法を提供しています。薪を燃やすことは現地の住民に深刻な呼吸器疾患をもたらしていました。2018年に、Lópezさんはその優れた業績により、子どもとして初めて、メキシコ国立自治大学 (UNAM) 原子力科学研究所 (Institute of Nuclear Sciences) の名誉あるReconocimiento ICN a la Mujer賞を受賞しました。

以上は、コミュニティや世界が直面する大きな課題に取り組んでいる数多くの若者のごく一部です。私たちは、若者が独創性と創造性を生かしてより良い未来を築くことを奨励し、可能にする必要があります。そのため、各国の政策担当者は、若者の関心に耳を傾け、若者を育成・支援する政策やプログラムを立案する必要があります。

メキシコのXóchitl Guadalupe Cruz Lópezさんは、リサイクル素材を利用してWarm Bathと呼ばれる太陽熱温水器を発明しました。この温水器によって、Lópezさんのコミュニティでは手頃な価格で持続可能なエネルギー源により温水を利用できるようになりました。(写真: メキシコ国立自治大学提供)

今後の課題

より良い未来を築くために、世界の若者たちの大きな可能性の活用を進めるには、難しい問題に対応し、有効な政策を立案することが求められます。経済的に活動する市民となる機会を若者に提供できないのはなぜでしょうか。若者が自立し、経済や地域社会の発展を支える創造的な生活を送れるようにするには、どうすればよいでしょうか。明日の仕事に必要な知識やスキルを若者に提供するにはどうすればよいでしょうか。

今も昔も、若者には変化のための支援を集め、活性化する能力があります。若者は気候変動に関する活動や環境汚染、「Me too」や「Black Lives Matter」などの差し迫った社会問題について変化を起こしています。若者はより良い世界のために立ち上がり、多くの若者が自分の時間とエネルギーを私たちの将来を形作る最新の発明やイノベーションの開発に費やしています。

ここで再びQuavoの歌詞と知的財産制度との関係を例に取りましょう。知財制度は、発明者や創作者が自身の作品に対して公正な報酬を受け取り、生計を立てられるようにすることで、イノベーションと創造性を奨励するための制度です。


まとめ

世界の若者たちの革新的な可能性はまだ十分に活用されていませんが、より持続可能な社会の構築に必要な変化の原動力になる可能性があります。今こそ、若者が知的財産に目を向け、知的財産権でアイデアを実現する方法を見つける時です。今こそ、各国の政策担当者は、若手の発明者や創作者を支援し、若者が将来に関するビジョンの実現に必要な知的財産関連の知識やツールを身に付けられるようにする時です。これが私たちの未来を左右するでしょう。

今日の若者は、より良い明日のための私たちの最大の希望です。全米青年桂冠詩人であるAmanda Gorman氏は、2021年にバイデン大統領の就任式で朗読した「The hill we climb (わたしたちの登る丘) 」と題する詩の中で「There is always light, if only we are brave enough to see it, if only we are brave enough to be it. (私たちに光を見る勇気があるのなら、光になる勇気があるのなら、光は常にそこにある) 」と語っています。

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