ルワンダとセネガルでアフリカ初のCOVID-19ワクチン生産工場を建設: 現在までに明らかになっていること

2021年12月

著者: David Richard Walwyn氏、プレトリア大学テクノロジー・マネジメント教授、南アフリカ*

*本稿は2021年10月27日に最初にThe Conversationで発表されました。

COVID-19のパンデミック発生後、アフリカ諸国のワクチン生産能力の不足に対する関心が高まり、非常に懸念されています。この話題が特に注目を集めているのは、先進国と途上国の間でCOVID-19ワクチンの接種機会に深刻な格差が生じているためです。

最近、ドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテック社がワクチン生産施設をまずルワンダに、続いてセネガルに建設すると発表しました。これはゲームチェンジャーになる(状況を一変させる)と見られています。 (写真: Kamionsky/iStock/Getty Images Plus)

アフリカのワクチン生産能力は限られています。ワクチンの生産能力とフィル/フィニッシュ (充填および最終製剤化) 能力があるのは、チュニジア、セネガル、エジプト、エチオピア、南アフリカのみで、その能力は国によって差があります。アフリカ最大の総合施設はケープタウンにあるバイオバック研究所です。

最近、ファイザー社はバイオバック研究所と年間1億回分のワクチンを生産する基本合意書を締結しました。この契約には、原薬の輸入、バイアル (ワクチンの入った小瓶) への充填、アフリカ内外でのワクチンの配布が含まれます。

アフリカにおける生産能力の不足は、インドやブラジルなどの途上国と好対照をなしており、インドには大規模な医薬品生産能力があります。

そのため、ドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテック社が、まずルワンダで、続いてセネガルで、ワクチン生産施設を建設するとの最近の発表は、ゲームチェンジャーになると考えられています。

ビオンテック社の計画では、コンテナ化された生産ユニットをドイツで建設し、それをルワンダに設置します。これにより、ワクチン生産施設の建設期間が1年以上短縮され、遅延リスクが低下する見込みです。当初はビオンテック社の社員がこの施設を管理・運営しますが、いずれ所有権と専門技術が移転され、現地で運営される予定です。現時点では、ルワンダにはそのような専門技術がなく、南アフリカのバイオバック研究所での経験からすると、専門技術の習得には10年を要する可能性があります。

ワクチンの生産には知的財産とノウハウが必要です。ビオンテック社と両国との取り決めには、技術移転 (契約の第2フェーズで行われる予定) と、ビオンテック社が引き続き所有する知的財産権を対象とするライセンス契約が含まれます。

いずれの施設についても、詳細は明らかにされていません。例えば、現地で生産されるワクチンの配布時期や、生産施設の資金調達方法は不明です。

それでも、ルワンダとのこの取り決めは他に類を見ないもので、その理由は、原薬つまりCOVID-19ワクチンの有効成分 (ここではメッセンジャーRNA) がアフリカ大陸で初めて生産されるためです。現在COVID-19ワクチンのメッセンジャーRNAが生産されているのは米国と欧州のみです。

途上国における最近のワクチン供給状況を見ると、現地生産によりワクチン接種率が高まることがはっきり示されています。この状況が当てはまるのはインドと中国で、いずれも国内に高い生産能力があります。

不足

アフリカにおけるCOVID-19ワクチンの接種率は低く、2021年9月末時点でワクチン接種を終えていたのは、全人口12億2,000万人の5%に相当する6,000万人に過ぎません。

市場では数千万回分のワクチンが不足しています。しかも、2022年半ばまでにこの不足が解消される見通しは立っていません。

メッセンジャーRNAワクチンが使用する有効成分はごくわずかです。アフリカ大陸の全市民にワクチンを接種するために必要なメッセンジャーRNAは50キログラム以下です。

しかし、ワクチンの現地生産で問題となるのは、生産技術だけではありません。生産施設を運営するには、医薬品承認のための規制制度と、各生産バッチを認証できる品質保証システムを確立する必要があります。

COVID-19ワクチンの接種をアフリカに拡大するよう製薬会社に圧力がかかっていることも、今回の発表を後押ししたと考えられます。しかし、ドイツあるいはその他の国のビオンテック社の施設から、もっと簡単に直接ワクチン供給を受けることができたはずです。今回の取り決めが行われた理由の1つに、アフリカ諸国向けの価格決定構造があることは間違いないでしょう。

製薬会社は、薬価が高く利益率が非常に魅力的な高付加価値市場を、「アクセス・プライシング」に基づいて販売される可能性がある製品から慎重に保護しています。アクセス・プライシングは、途上国が同等の製品を大幅に低い価格で購入できる仕組みです。

アフリカのワクチン生産能力は限られています。ワクチンの生産能力とフィル/フィニッシュ (充填および最終製剤化) 能力があるのは、チュニジア、セネガル、エジプト、エチオピア、南アフリカのみで、その能力は国によって差があります。 (写真: janiecbros / E+ / Getty Images)

しかし、並行輸入の結果、収益性の高い市場で製品が入手できるようになると、問題が生じます。

並行輸入は、生産拠点を地理的に分散させ、異なる規制制度の下で運営することで、回避できます。ルワンダで生産され、ルワンダの規制当局により承認される製品は、欧州やその我の先進国では受け入れられないでしょう。

このようにして、製薬会社は医療製品へのアクセスという点で国際社会から批判される一方、最も収益性の高いセグメントで利益率を維持することができます。

最終目標

この取り決めがアフリカ大陸のワクチン生産能力の向上に資することが期待されます。例えば、今回のビオンテック社の取り決めによって、南アフリカなどの国に生産計画を加速させるよう圧力がかかり、より短期間でワクチン供給が拡大する可能性があります。

これまで南アフリカはワクチン取引を支配してきました。南アフリカはファイザー社との契約以外に、メッセンジャーRNAワクチンのハブについても発表しています。このハブを利用して、大手製薬会社のメッセンジャーRNA技術の開発とライセンス供与が行われる予定です。

ワクチンの生産には知的財産とノウハウが必要です。

しかし、目指しているのは、完全な技術移転を伴うエンド・ツー・エンドの現地生産と、市場アクセスに関する制約の緩和です。必要不可欠な医療製品の提供体制に見られる世界的な格差を解消するために、この点は極めて重要です。

このほかに、医薬品製造状況の変化という要因も影響する可能性があります。ビオンテック社が締結した契約は、ファイザー社とのパートナーシップとは無関係に行われた初めてのものです。これは、ビオンテック社がファイザー社とのライセンス契約外で、自社の顧客基盤を構築する意図があることを市場に示しています。ファイザー社はCOVID-19ワクチンの有効成分の製造方法に関する中核的な専門知識の開示に関心がないことを明確にしているため、これは重要な意味があります。

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